お悩み相談室
こんにちは!私はソフィー!十六歳の女の子!
気づいたら乙女ゲームの世界に転生しちゃってたんだ!
でもね、転生したのが何と!デブスで悪役だったの!
それは嫌だなぁーって思って何とかダイエットに成功してモブ顔に昇格?したからか、
この前攻略対象のアレク王子に
「僕を本気にさせたんですから」
って言われちゃったの!!
もしかして、自分では気づかないうちに微少女になってた?!
睫毛がヒジキになってるのかもしれないわ!
これは、これはもうこれしかないわよね!!
………………………………。
ダメだ、アレクのあの言葉に振り回されて脳内少女漫画化現象が止まらない。
何とかしなければ。
このままでは頭の中がお花畑になってしまう。
……いや、ここは、乙女ゲームの世界である。
ということはほぼ、少女漫画の世界と一緒では?
少女漫画をゲームにしたのが乙女ゲームでは?
(※あくまでもソフィー個人の見解です。)
そうだ、なら私は頭お花畑になってもいいのでは?
その方が色々と面倒な事を考えずに済んで楽なのでは?
「よし、私の頭は今日からお花畑にしよう!」
「今でも十分お花畑なのにそれ以上お花畑になられるのでしたら、
食事を全てゴーヤにして頭の中をゴーヤ畑にして差し上げますね。お嬢様」
「お花畑は無いわね。うん。無いわぁ」
ソフィーは頭に咲いた幻のお花をサッと手で払うと、いつもの日課であるジョギングに向かったのだった。
ジョギングをして汗をかいたソフィーはシャワーを浴びた後、髪が濡れたままなのもかまわず、ベッドに腰掛けた。
アレク様のあの言葉をどう捉えていいのか。
意味によっては接し方を変えなければいけない。
これからヒロインが登場してくるのにその前に、そんな事ってあり得るのだろうか。
言葉にすると、なんかすんごい、自惚れている気がするからあえて言わないが。
そんなことは、ない、はずだ。
そんなこと……。
一瞬浮かんだお花畑な妄想をぶんぶんと頭を振って振り払い、熱くなった顔を両手で抑えた。
違う。
そう言う意味じゃなくて、私の思っているのと違う意味だったら?
例えば、ほら、本気でお友達になろうと思いましたとか。
本気で王位継承権を勝ち取るために協力しろよ、とか。
あり得る。あのアレクなら
「友達ですよね。なら、僕に協力してくれますね?」
とか笑顔で言ってきそう。
他にもいろいろなパターンを想像してみると、私の思っていた方のが確立が低い気がしてきた。
それにもしも、万が一、私のお花畑の方だとして。
本気になった後に、やっぱりヒロインが良いと言われてしまったら?
いや、ヒロインへ行く方が自然なのだ。だって、この世界は乙女ゲームの世界なのだから。
ならその時に私は笑顔でバイバイできる?
結婚式を眺めながらお幸せにって心の底からそう言える?
甘い考えはやめた方が良い。
……私はもう、傷つきたくない。
考えすぎたせいで頭が痛い。
「はぁ。何を考えてるのかしら」
ソフィーがぽつりと言葉を漏らした。
シンと静まり返った部屋の中では答えを返してくれる人もいない。
いつも鋭いツッコミをしてくれるアビーも今は朝食を食べている頃だろう。
「自分の中で解決させるしかないかしら」
「何をです?」
「何をって、そりゃ一昨日の言葉の意味……」
………。
顔を声の聞こえた方に向けると、至近距離にクレアの顔が。
クレアは体をソフィーにぴったりとくっつけて座っていた。
「うわぁっ!!クレア!いつからそこにいたの!!」
「んー。お姉さまがバスタオル片手にベッドに腰掛けたあたりからですわ」
つまり最初からだ。
恥ずかしくて叫びたい。
さっきとは別の意味で顔が熱い。
少し落ち着いたところでクレアに視線を移すと可愛く小首をかしげこちらを見つめてくる。
小首を傾げた際にサラリと青い髪が落ちる。
その小動物の様な可愛いしぐさに思わず、頭を撫でるとクレアは嬉しそうに笑った。
「でもどうして部屋に?」
「何度もノックしたんですけど、お返事が無かったので失礼ですが入らせていただきました」
「そうだったのね、ごめんなさい」
「いえ……、ところでお姉さま」
「何?」
何故か昔から綺麗な髪の人を見ると三つ編みしたくなってしまうソフィーは、
クレアのサラサラの髪を三つ編みしながら返事をする。
「お姉さまをそんなに困らせているのは何ですか?」
ソフィーは三つ編みの手を止め、視線を上げると、クレアは黒い笑顔を浮かべていた。
「……。そんなに困っているように見えたかしら?」
「はい。お姉さまの表情筋がいつもよりも固い動きをしているのと、いつもよりお肌の手入れが雑になっておりましたし、いつものジョギング後よりも心拍数が早いので」
「こっわ。え?いつもって?クレアの住む所遠いから私たちそんなに会ってないわよね?」
「そこは、愛の力ですわ」
ポッと顔を赤らめて右手を頬に当てるクレアは先ほどの言葉さえなければ可憐な乙女だ。
少し怖いがクレアが自分の事をよく見ているだけだろうと、無理やり納得したソフィーはこれ以上この話題に触れないように別の話を振ろうと、クレアに視線を向けた。
ソフィーに視線を向けられたクレアはニコッと笑った。
「お姉さま、私はどんな時でもお姉さまの味方ですわ。なので無理にとは言いませんが私にお姉さまのお悩みを聞かせてくれませんか?」
クレアの優しい言葉に嬉しくなったソフィーは相談してみることにした。
所々ぼかしながらクレアに先日城であったことを相談すると、クレアは真剣な顔で話を聞いてくれた。
「うーん。確かにどちらとも取れますね」
「そうなの、だから私どう接したらいいのか分からなくて」
「………。そんなに難しく考えなくても普段通りに接していればいいんじゃないでしょうか?」
「どうして?」
「王位継承のために協力をして欲しいということなら、放っておいてもそのうちあちらから協力して欲しいと言ってくると思うんです。告白だった場合、アレク様の性格上お姉さまから何もアクションが無かった場合、もっと分かりやすくしてくると思うんです。欲しいものはちゃんと手にされている方の様なので」
確かに、王位継承争いに敗れればあのセドリック事だ、家臣に言われるがままアレクに反逆罪か何かの罪を着せて追放されるか、処刑される可能性が高いことはアレクも分かっているだろう。
命がかかってくるわけだ。
現状アレクの方が優位と言っても危なくなれば協力は要請してくるだろう。
こっ、お花畑の場合は……。
考えるのをやめよう。
この件は考えるとずっと考えてしまう。
クレアの言う通り難しく考えず、いつも通りに接していこう。
そう、友達として。
友達として今まで通りに接していればなんとかなる。
そう思うとソフィーの気持ちは少し落ち着きを取り戻した。
「そうね、そうするわ。ありがとう、クレア」
「いいえ!いつでも私を頼ってくださいね、お姉さま!」
ソフィーはその言葉に笑顔で返した。
相談に乗ってくれたお礼にクレアにとっておきのお茶とお菓子を振る舞い、クレアがソフィーとお揃いの物が欲しいというので次回遊びに来てくれる時までに探しておくことにした。
ところで、何でクレアはアレク様の性格を知っていたのかしら?
と、疑問に思ったソフィーだったが、睡魔に負けてそのまま眠りについてしまい、翌日にはすっかりとそのことを忘れてしまったのだった。
★クレア★
ふふふ、お姉さまの周りの人を念入りに調べ上げておいて正解だった。
事前に情報を仕入れておくことでお姉さまの悩みを予測し、最善の回答をいくつかあらかじめ用意することが出来た。
始めはお姉さまに失礼な事を言ったエリック王子も、お姉さまを困らせるアレク王子も締め上げようかとも思ったが、今日のお姉さまの様子を見るにエリック王子の事は気にしてなさそうだし、アレク王子の事を締め上げては不評を買いそうだ。
ならば、相談相手になり信頼を勝ち取ってお姉さまとの絆を深める方が得策♡
今日の件で私はお姉さまの中での重要度が上がったはず。
このまま、私はお姉さまとは切っても切れない夫婦よりも強い絆で結ばれるように精進するのみ!
待っててくださいね!お姉さま!
このクレア、日々お姉さまのために精進いたします!!




