表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/77

疑惑の新学期4

「どうしたの?木村さん。」


イッキが驚くのも無理はない。あたしは、思ったことをそのまま口に出して叫んでいた。


「考えなきゃいけないことって、何?」

「うん……と、ね」


どうしよう。言っていいのか悪いのか。……迷う。


「委員長、悩み事ですか?恋愛なら、僕が……」


山崎君は恋愛相談に自信があるらしい。ゲームやアニメの知識らしいけど……。


「いや、いい。そっち系の悩みじゃないから。」

「そうですか……」


沈黙。


今、教室にいるのは元からおしゃべりではないメンバーばかりだ。偶然にも、地味で真面目なメンバーが集まっている。自由登校なのに、いつもと同じように学校にきてしまうくらい。あたしも込みで、目立たないメンツ。会話が途切れてしまうと、急にみんな静かになる。自分から新しい話題を振る勇気を、あまり持ち合わせてはいないんだ。


テーブルを4人で囲む。


「ねぇ」


一連の今日の出来事を話そうと思った。ひとりで考えても、わからないだろうし。探偵ゴッコ。結城先生は、言うなとは言わなかった。今までは口止めしていたけど、今回は違う。


「このクラス。存在自体が、おかしくない?」


ずっと感じてた疑問。それを裏付けるような、小原先生の言葉。千葉ちゃんと結城先生。


「小原先生は、空き教室の作業って言ったのよ。まるで、片付けでもやってるみたいに。」


3人は、静かに聞き入っている。


「それ、本当?実験的に共学生活を送る為に、私達集められたんじゃないの?」


不安そうに尋ねるけど、ここにその答えを知っている人はいない。


「あの……、俺たち。共学生活って事は、ここに来てから聞いたんですけど。」

「そうです!そういえば男子部の先生は、女子部でお手伝いしてこいって。共学とは一言も言われてません。」


4人で、顔を見合わせる。やっぱり、何かがおかしい……。


「じゃあ。男子部は、お手伝いで生徒を集めたって事?」

「いいえ。集めたと言うか、僕は先生から直接言われました。こういう雑用を頼まれる事はよくあるので……。」


山崎君の発言に、リーゼントも頷いている。


「ちょっと待って下さい。私、紙に書きますから。みんなで推理しましょう。」


イッキは、かばんからペンを取り出した。あたしは、例のノートを取り出して渡した。


「女子部は、共学生活って集められたでしょ?男子はお手伝い。小原先生も、あたし達はお手伝いだと思っている……か。実際お手伝いじゃないって事は……。」


嘘つきは、女子部にいる。イッキはノートにそう書いた。なるほど。


「ちょっと待って。男子部は先生から直接言われたのよね。他の男子メンバーは?雑用引き受けそうに無い人がいるじゃん。」


リョウと中野君。リョウは雑用なんか絶対サボるタイプだし、中野君は頼まれても平気で行かないような気がする。柴田だってギリだ。


「佐伯君はですね……先生に借りがありますから。噂ですけどね。」

「噂?」

「僕が聞いたのは、教師を殴ったとか……。」

「噂で、人の事を悪く言ってはダメっス。そういうは、良くない」

「……すみません。」


リーゼントの一言で、山崎君は申し訳なさそうに下を向いた。

噂がダメなら、推理できないんじゃ……。


「じゃあ、話を戻そうか。」


あたし達は、ノートを囲んで考えていた。誰かの言葉や、それから考えられる可能性を。一つ一つ、地味に検証していく。


きっとマナやウララがいたら、すぐに飽きちゃっただろうなぁ。


地味な作業をやるには、きっと今日のメンバーがベストだろうな。

なんて、考えながら窓の外を見ていた。


外には、冷たい風がふいているのかな。

カタカタと、窓ガラスが揺れていた。


あたし達は、ずっとノートとにらめっこ。


「やっぱり、結城先生が黒幕だよ。」


もう何度も行き着いた答え。でも、そこから進めない。


「でも、動機がないよ。」


イッキはノートに書かれた、結城先生の文字を何度も鉛筆でぐるぐる囲っている。


「動機、かぁ。」


山崎君は、もうずっと前から頭を抱えている。


動機。それは、きっと中野君に関係があるはず。じゃないと、先生が中野君の事をよろしくなんていうわけが無い。


どうしよう。


結局あたしは、保健室で見聞きした事を全部は話さなかった。中野君のところだけ、あえて言わなかった。みんなには、また明日考えようと言って今日は解散した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ