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優しい散歩道4

笑顔で帰る。

そう決めていたのに…。


「逃げられちゃった。」


公民館に帰ると、ウララが笑顔で待っていた。


「ちょっとお仕置きが過ぎたのかしら?」


その笑顔が逆に怖い…。

あ。怖いと言えば…?


「ねぇ。柴田は?」


部屋に姿が見えない。


「柴田君なら、リョウ君とどっか行っちゃったよ。」

「…そっか。」


顔合わせるの気まずかったから、ちょうど良かったかも。


「あれ?イッキは?」


イッキもいない。


「あっち。なんかね~。隠れちゃって。」


マナが、隣の部屋を指差す。

あっちは、あたし達女子の部屋。男子は立ち入り禁止。だから…ちょっと散らかっている。


「かわいかったんですけどね。」

「うわぁ。びっくりした。」


いつの間にか、中野君が後ろに立っていた。


「コレ。木村さんも、かわいいですよ。黄色。無駄に元気なイメージで。」


高い位置で1つに結んだ、あたしの髪。みんなで色違いのシュシュをつけている。

中野君は、後ろからあたしの肩に片手を置いた。反対の手でシュシュを触っている。


「ちょっと!中野君。あたしのゆいにセクハラしないで。ゆいとイッキは、超女子校生なんだから。男が近づくと固まるわよ。」


近づくと固まるって…何?その変な性質。


「マナさんだったら、どうなるんですか?」

「え~。どうしよっかなぁ~。」


そんな…ふたりとも悪ノリしてるよ…。


あたしはそんな2人を置いて、イッキのいる部屋に行った。


「いつきちゃ~ん。」


ドアを開けると、イッキが床に座っていた。ぺたんと、正座を崩したように。

どこかのアイドルみたいに、頭のてっぺんで髪を少し結んであのシュシュをつけている。


「お~。かわいいじゃん。」

「木村さん!からかわないでよ!」

「ていうか、そんなシュシュくらいで恥ずかしがってちゃ…。おもちゃにされちゃうよ。うちのメンバー、みんなドSだから。」


あたしもさっきから、遊ばれてばかりだし…。


「違うの。これくらい。恥ずかしいからって、部屋にこもらないわよ。」

「…じゃあ。何してるの?」

「別に…ちょっと、ひとりになりたかったの。他人とこんなにずっと一緒にいるなんて…今までなかったから。…男子も一緒だし。」


みんなといても、時々求めたくなる孤独。

わかるような気がする。

大勢の中で、長い事傍観者で居た事のある人なら…そう思う事があると思う。


楽しい時間に、ふと感じる違和感。


でも…。


「じゃあ。もう戻ろう。今は男子っていっても、山崎君と中野君だけだから。山崎君は平気でしょ?男をかんじないっていうか…。」

「木村さん。それはちょっと、かわいそう…。でも、そうかも。」

「ははっ。」


心の中で山崎君にあやまる。

でも、これでおあいこじゃないかな?


「ゆいー。おばさん呼んでるよ。早く来ないとシメるよって!」

「ええっ!行くよ、イッキ!」


イッキの手を引き、いそいで部屋を出る。

元ヤンはこれだから、怖い。


「はーやーくー。そこに座んなさい。これからの説明するから。」


イッキを連れて、急いで座る。やばい。中野君の横だ。

ぐるりと部屋を見渡すけど、リョウも柴田も戻ってきていない。

ふたりは何をしているんだろう…?




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