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嘘と秘密とドSな…5

合宿というか、お祭りのボランティア。

あたし達が参加するのは、30日の掃除から1日の餅つき大会までだ。

リョウの住む田舎は、ド田舎だからなのかテキヤが来てくれないらしい。だから毎年、地元の人達が集まって神社でお店を出すのだ。

ボランティアの募集は今年が始めてらしい。リョウの言葉を借りると、おっさん連中がやっとパソコンを使えるようになったかららしい…。


今日は29日。明日からの合宿に備えて、女子でお買い物だ。


「ボランティアって、やっぱり大変なのかしら?」

「大変な事は男子がするからいいんじゃない?あ、これカワイイ。」

「ひゃぁあ~かわいい。ペコはピンクがいいなぁ?」

「そう?あたしブルー系の方がいいかも。」

「マナもピンク~。ゆいはイエローじゃない?」


真面目にイッキがボランティアの仕事の心配をしているというのに、あたし達は…。


「寝る時は、やっぱりザコ寝みたいなかんじかしら?寒くないのかしら?」

「大丈夫じゃない?マナは、いざとなったらリョウ君の部屋に行こうかなぁ?あ、こっちに濃いピンクがあるよ~。」

「ねぇ。これみんなでお揃いにしようよ。」

「じゃあペコぉこっちのピンク。」

「あたし、イエローでいいよ。」


たまたま立ち寄った雑貨屋で、カワイイシュシュを見つけて物色中。

ピンクはピンク系のマルチカラーのふわふわシュシュ。

ブルーはブルー系の…。


「私は…こういうの…かわいいけど、つけれないよ…。」


イッキの発言にみんなの手が止まった。


「何言ってるのよー!」

「全然、カワイイよぉ。」

「みんなでつければ恥ずかしくないって!」


「私。ほら、髪も長くないから…。」


イッキは肩までの黒髪ストレート。いわゆるおかっぱ。


「それを言うならあたしなんて、イッキより短いからね。」


ウララは最近、髪を切って少し長めのショートカットになった。よく似合うその髪形に、あたしはため息がでる。

あたしは、いつも肩より長いロングヘアだ。長い髪は、顔を隠すのに都合が良いから。ショートカットなんて、顔がむき出しになるから絶対無理。顔だって大きいから…。


「だいじょぶですよぉ~。てっぺんで結んだらかわいい。」


ペコは商品をひとつ取って、イッキの髪に結ぼうとした。


「あ、そんな位置で結ぶなんて。私には無理って!」


そんな位置って言っても、頭のてっぺんで別におかしくないのに…。


「大丈夫だよ!ピンクじゃなかったら、そんなに派手じゃないよ。」


あたしはそう言って、ブルー系をイッキに手渡した。

順番にお会計を済ませ、喉の渇いたあたし達。

またいつものファストフード店でジュースを飲みながら、買った品物を見せ合いまったりとしていた。


「木村さんが言うから買っちゃったけど、やっぱり私には似合わない気がする…。」


結局、イッキはブルー。ペコは濃いピンク、マナは薄いピンク、ウララはパステルグリーン、あたしは、イエローにした。


「ウララ、グリーンにしたの?ブルーかと思ってた。」


マナがそう言うと、ウララは笑いながら答えた。


「みんなバラバラの方がいいかな?って思って。」

「それだけ?」

「ふふっ。」


ペコが急に手をあげた。


「わかったぁー!!」

「何?なんなの?」

「委員長。黄レンジャー。」

「はぁ?」


ペコは順番に、青レンジャー、桃レンジャー、緑レンジャーって指をさし自分の事を…。


「ペコ、赤レンジャー。」


って言った。どうやら子供の定番、レンジャーものの事を言っているらしい。


「なんだか、偶然なのに…ピッタリしてませんか?」

「そういえば…。」


「ちょっと!あたし黄色?うっそー。桃レンジャーだって、マナでもいいけどペコじゃない?」

「ペコは赤です。」


そこは譲らないらしい…。


「じゃあ、これ男子だったら?マナは、リョウ君が赤だと思う。」

「男子に桃色は無理があるんじゃ…。」

「柴田は青か緑っぽい。」

「黄色は困るわよ。昔はおもしろキャラだけど、今は女の子だし。」


結局…。


赤はイケメン、青と緑の違いがいまいち女子にはわからなかったから、柴田とリーゼントが青か緑。山崎君は黄色、中野君は…桃色。これには納得いかなかったんだけど、理由が言えないから黙認っと。


あたし達は久しぶりに、女子校みたいに下らない事で盛り上がった。


明日から合宿という事で、今日は早めに解散して店を出た。

イッキはあたし達と反対方向に帰るし、ウララはやっぱり彼氏のお迎えがあるらしく3人で駅まで歩いた。


「明日は楽しみだねぇ。ゆい、荷物があるから柴田君と一緒に来たら?」

「ひょうなんですか~?いいんちょう、柴田君とぉ…。」

「また、ペコなんか食べてるし。柴田とあたしは幼なじみだって!」

「ペコは?」

「秘密です。けど、こにょなかには好きなタイプの人はいましぇん。」

「ズルイ!」


あたし達は騒ぎながら、駅まで歩いていた。


「ねぇ。そこのかわいい子!3人なの?これから遊ばない?」


急に声をかけられ、肩をつかまれた。


「高校生?ねぇ、行こうよ。」


やばい。チャラいけど、この人達ちょっと怖め…。


「いや…。もう、帰るから…。いいです。」

「いいんでしょ?行こうよねっ!」


どうしよう…。マナも固まっちゃってるし…。

掴まれてる肩が、痛い。


「や、やめて下さい。」

「えっ?なになに?きこえなーい。」

「だ…から…。」


どうしよう!通行人は、見て見ぬフリだし…。


「走るよ。」


ペコの声が耳元で聞こえた。


瞬間。


「いってぇー!!」


男の手が離れた。


「ゆい!」


あたしは一気に駆け出した。ぺ、ペコは??


ペコがあたしの後から走ってくる。

一体、今何が起きたの??


あたし達は駅に向かって走った。


********


「もう…。マナ苦しい…。」


駅に着いたあたし達は、男達が追ってこないのを確認して女子トイレに逃げ込んだ。

電車の時間ぎりぎりまで、ここで時間をつぶすつもりだ。


「さっき、何があったの?」

「ゆい、見てなかったの?」


あたしとマナは胸を抑えたまま。息が切れて、苦しい。


「ぺ、ペコが…。」


マナが話しかけると、ペコが遮った。


「今日の事、誰かにしゃべったら…。」


いつもと違う低音ではっきりとした口調。なんか、キャラじゃないよねぇ…。


「どうしたの?ペコ。ちょっと怖いんだけど…。」

「マナも委員長も、今日の事は内緒にしてもらうからね。」


腕組みをして堂々と立っているペコ。完全にキャラ違うって!!


「ペコってもしかして…。」

「んぁ?」


眉間に皺が寄ってて…怖い。


「…内緒にします。」

「マ、マナも誰にも言わない…よ。」


あたし達がそう言うと、ペコはゆっくり笑っていつものペコに戻った。


「ぜぇったい内緒よ。ペコはこう見えても昔は…。」

「むかしは?」

「バリバリの…」


ま、まさか元ヤンとか?


「やんちゃな女の子だったの。背中に刺繍の入った、紫の洋服なんてきちゃってったし。」


マナと顔を合わせ、お互いうなずく。


「絶対、言いません。」

「あたし達、何も見てません。」


ペコは首をかしげて、あの愛らしい笑顔を見せた。


「よろしい。」


あたしとマナはペコとバイバイした後、電車の中で話し込んだ。

人って見た目じゃわかんない。

マナが言うには、ペコはあの男の腕をねじりあげたらしい…。

結構、筋肉あったと思うんだけど。

やっぱりペコは、赤レンジャーだ。誰よりも強い。ていうか敵ボス?


人には、それぞれ過去があるんだなぁ。


ていうか、うちのクラスキャラ濃い!!

中野君もペコの怖すぎ!


あたし、こんなクラスの委員長でいいのかしら?

あたし、パシリの方が似合いそう…。


明日からの合宿。


平穏無事には、いかないだろうなぁ…。

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