嘘と秘密とドSな…2
全部正直に話します、とは言ったものの…。本当の事しゃべったら、中野君も怒るかなぁ…。柴田と女友達と中野君。一番怖いのだーれだ。…やっぱ中野君だよね。ええい!こうなったら!
「…実はね。あの日、マナと別れて家に帰ろうとしたら…。」
あたしは、少しうつむいて切なげに話し始めた…。
「し、柴田がね。家の近くで、知らない女とイチャついてたの!家の近くよ。ていうことは、柴田の家の近くでもあるのよ!」
「うっそ。柴田君、彼女いるの?じゃあ、ゆいの事…。えぇっ!」
「しかも、自分の家の近くでしょ?2人で家から出てきたの?それとも、これからだったの?やーだー柴田君。そんな人に委員長を渡せないわ。」
「ゆい。かわいそう!」
いや…かわいそうじゃないんだけどなぁ。ま、いっか。
「じゃあ、柴田君に委員長の事どうこう言う資格は無いわ。」
「そうよ!それにあたし達、騙されてたわ。不器用な、幼なじみの恋愛だと思ってたのにー!」
「…でも、委員長が相手じゃ…。柴田君も仕方なくかもよ。」
「えっ?」
仕方なくってなんですか?ウララさん…?えっ?マナまでう~んってうなずいてる?
「委員長は真面目というか…。柴田君も手が出し難かったんじゃない?遊びの女よ、きっと。」
「そうよ!大丈夫よ、ゆい。あんなに心配してるんだから、ゆいが本命よ。」
なんだか、話が変な方に行ってませんか?柴田とあたしは、ただの幼なじみですよ?
「ちょっと待ってよ、マナ。じゃあ、委員長の乗ってた車の男は?」
「ゆい!それを早く言いなさい!」
えーっと…。
「知らない…。知らない人!!」
2人がきょとんとした顔で、こっちを見ている…。
「知らない人について行っちゃダメでしょ!」
「しかも、車なんかに乗って。誘拐されたらどうするの!」
誘拐って…。急に2人に責められ始めた。あたしは小学生か…。
「だから…。家出少女に間違えられちゃって…。親切な人が送ってくれたの。」
「親切な人って…。そんなのわかんないでしょ?悪い人だったらどうするの?今時、男の子でも悪い人に連れて行かれちゃうのよ!」
「どうする?知らない人の車だなんて、言えないよ。言ったら柴田君、きっと委員長の送り迎えしちゃうんじゃないの?」
どうやら、上手くいったみたい?中野君の事はバレずに済んだけど。あたし、ダメージが大きいかも…。
「あのさぁ。あたし別に、柴田の事好きとかじゃないよ。いろいろと想像してびっくりしちゃっただけで…。」
「ゆい…。」
「委員長…。」
なんか、2人とも気の毒そうな顔してない?
「それが恋のはじまりよ。委員長がうらやましい。」
「だから、違うってばー!」
「はいはい。」
結局、あたしの嘘は上手く?いったみたいで中野君の事はバレずにすんだ。でも、その代わり2人には柴田との仲を疑われてしまった。あいつには彼女がいるって言ってるのに。
「じゃあ、コレ食べちゃお。」
「そうよ、ゆい。これ食べて元気だして。」
冷めかけたピザ。2人に進められるままに、頬張る。カロリーが気になるけど、そうも言ってられない。秘密も嘘も、守り通さなきゃ。
「じゃあ、車の話はウララの彼氏ってことにしとこうか?でも、大丈夫?バレない?ゆいって嘘つけないでしょ。」
ゴホッ。
急いで、アイスティーを飲む。ピザが、詰まるかと思ったよ…。
「そこは友情でカバーしましょ。大丈夫。あたしが上手くやるから。委員長は、相づちうってればいいよ。」
よ、よかったぁ…。
「ねぇ。柴田のメールは?見せてくれないの?」
騒動の発端。柴田のメール。一体何が書いてあったの?
「ん?あぁ。ゆいが男の車で帰ってきたけど、誰か知らないか?って。ゆいのお母さんが心配してるからって。期待するようなメールじゃないわよ!」
「お母さんって。嘘つき柴田め!でも、それに何て返信したの?」
「え…。」
「マナ?」
「あたしはまだ返信してないのよ。彼氏とデート中だったから。それに、いざという時委員長の見方してあげなきゃいけないと思ってね。」
ウララって怖い。たった1通のメールで、そこまで考えるなんて…。
「マナは?」
「え?」
「…怒らない?」
「怒るけど。」
「じゃあ、言わない。」
「…怒らないから。」
「ゆいに彼氏なんていないよって。好きな人がいるとしたら…リョウ君か柴田君じゃないの?って…。」
また、その話…。ていうか、そんなの柴田に言っちゃダメじゃん!マナが言ったら、本当みたいじゃない!!
「マナー!」
「…怒らないって言ったじゃん。」
「あたし、もう顔合わせられないよ!ちゃんと訂正してよ!」
あぁ。もう、どうしよう…。柴田のやつ勘違いしてなきゃいいけど…。
「いいじゃない。どっちかにしたら?委員長、他にいないでしょ?」
「あああ!もう嫌だぁ~。」
恥ずかしいよぉ~。
悶えるあたしの横で、2人はピザを食べている。この、白状ものー!
「ゆい、さっさと食べなさいよ。この後、みんなで集まるんだから。」
「はい?」
「柴田君がね。せっかくだから、年末年始に何かして遊ばないかって。周りはまだ受験でしょ?暇なのは、合格決まったあたし達だけだしね。」
「ヤダ。行かない。」
柴田になんかぜーったい会いたくない。
「なんで?委員長でしょ?」
「だって…マナが変なメールしちゃったし…。」
「柴田君。委員長の車の相手の事、気にしてるわよ。一緒に行って、誤解を解いてあげるから。」
そう言ったウララは笑顔だった。
「嘘をつくのは大変よ?」
「!!」
目が…怖い。もしかして…お見通しなんて事…ないよね…。
「一緒に嘘をついてあげるから。委員長には借りがあるしね。ねー委員長。行くでしょ?」
ウララはあたしの嘘に気付いているのか、いないのか?全く、ウララにはかなわない。
「行かせて頂きます…。」
「そう。いい子ねぇ。」
神様。どうしてあたしの周りにはこんな…いじわるな人ばかりなの?ドSだよ!ウララのドS!
この時、あたしはすっかり忘れていました。
神様。
あたしの周りにはドSしかいないのでしょうか…??




