嘘と秘密とドSな…1
翌日。
昨日の疲れがまだ残っているあたしに、またしても来客が来た。朝っぱらから何のよう?って言いたいところだけど、時計はもうすぐ正午をさしていた。
「ゆい。お母さん出かけなくちゃいけないから。お昼ごはん、悪いんだけどピザで我慢してくれない?お友達の分もあるから。飲み物とかちゃんとするのよ!」
くれぐれもきちんともてなすように!ってお母さんは何度も念を押して出かけていった。お客さんはリビングで待っているからと。
「はいはい。」
頭を掻きながら、階段を下りる。ドアの閉まる音、お母さんは出かけたらしい。
リビングに入ると、来客…ウララとマナのコンビがいた。
「おかまいなく~。」
なんて、よそ行きの笑顔でソファに座っていた。あたしはダイニングからデリピザの箱と、アイスティーのボトルとグラスをリビングに持って行った。
「どうぞ。召し上がれ。」
アイスティーをグラスに注ぎ、2人に配る。朝からピザ。う~ん。気が進まない。あたしはとりあえずアイスティーを流し込んだ。
「ゆい、浮気したんだって?」
ブッ。
思わず、アイスティーをふき出しそうになった。彼氏のいないあたしが、なぜに浮気?そんなのできるかー!
「マナさん。あたしにいつ彼氏ができたんですか?マジ教えてくださいよ!」
「だあってー。ねぇ。」
コンビが声を合わせて言う。なんなの。このからかわれてる感じ。
「柴田君が心配してるんだも~ん。」
マナが携帯のディスプレイを見せながら言う。ウララも、携帯をチラつかせている。何の事かわからない、あたしが覗こうとしたら…。
「ダーメ!」
ウララに阻止された。
「マナ~。簡単に教えちゃ面白くないよ。ちゃんと委員長に聞かなきゃ。昨日のワケを。」
「そっかー。そうだよね!だってあたし達にまで秘密にするなんて…。」
昨日のワケ。もしかして、柴田のやつ…。あたしに聞けなかったからって、マナ達に探りをいれたな…。
「じゃあ、ゆい。覚悟してしゃべってしまいなさい!年上の彼氏なんて、いつの間に作ったの!車でデートなんてうらやまし過ぎるんだから。」
あぁ。車で帰った話がここまで広がってしまうなんて…悪夢だ。いつの間にか。あたしの家のリビングが取調室に。マナとウララの追求が…始まるよぉ…。
「いやぁ。あれは彼氏じゃなくって…。だからデートもしてないし…。」
どうしよう…。中野君の話、しちゃうとまずいよねぇ…。なんか、上手い言い訳を考えなきゃ…って簡単に思いつかないよー!!
「だから…つまり…。」
どうしよう。マナもウララも、あたしの顔をじっと見ている…。こんなことなら昨日のうちに、中野君に連絡とって言い訳考えておけばよかった…。
「柴田の見間違いじゃないのかなぁ?あいつ…ホラ、ぼーっとしてるし…。なんかこう…そう、暗かったし。あたしじゃない人と間違えたんじゃないのかなぁ??」
必死にごまかすも、2人の目があやしいって言ってる…。
「ゆい。ごまかそうったって無駄なんだからね!ゆいが部屋から降りてくるまでの間、お母さんに話を聞いたんだからね!」
「うっそー!!」
そうだ…。ピザ。これ、2人が来てから注文してるよねぇ。あたしが降りてきた時、もう届いていたっていうことは…。柴田の話の裏を…とったな!
「刑事かよ!」
恐ろしい…。あたし、この2人の追及に耐えれるかしら…。
「さぁ。吐け!吐くんだ~、ゆい!」
ヤバイ、マナが刑事になりきっている…。
「だから、お母さんも見間違ったんじゃないの?ほら、もう老眼だし…。」
「…暗かったって言ったわよね?」
「!!」
「こらー!嘘ついたってすぐバレるんだからね!吐け~!」
刑事ドラマの見すぎだよ…マナ。ウララはさっきから、ひとりピザを食べている。もしかして、興味ないとか?そうよ!ウララだって、年上の車持ちの彼氏がいるんだから。大人だよね!こんな話に興味ないよね。…助けてくれないかなぁ…。
「ウララ~。」
ピザを置き、アイスティーを飲む。笑顔のウララ。
「委員長。助けてあげましょうか?」
「うん!お願い、ウララ様!」
「じゃあ、取り引きしましょ。」
「げっ。」
取り引きって。こんな時、ウララの笑顔が、余計に怖い…。
「あたし達に本当の事を話してくれたら、助けてあげる。委員長、忘れてない?一番疑っているのは、柴田君よ。あたし達に話してくれたら、柴田君に嘘をついてごまかしてあげる。…そうね。あたしの彼氏が送ってあげた事にでもする?委員長とあたしが遊んでいた事にして。迎えにきた彼氏についでに委員長が送ってもらった事にしたら、柴田君も納得するんじゃないの?」
「それじゃあ…。」
「要するに本当の事をしゃべらない限り、ゆいは3人から追求されちゃうって事か。」
「そ、そんなぁ…。」
「どうするの、委員長。あたし達は、柴田君の見方になっても構わないのよ。」
さぁ、どうする??ウララもマナも、不敵な笑いを浮かべているし…。あたし、勝ち目ないじゃん。でも…。中野君の話も言えるわけないじゃん!
「全部…正直に…話します…。」
ふと、眼鏡の中野君の顔が過ぎった。妖しい中野君の顔。あたし、どうすればいいのぉ!?




