表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/77

チャリンコ☆クリスマス3

ガタン、ゴトン。


今時…。貴重なんじゃないの??こんなに、ガタゴト揺れる電車なんて…。


「…ありえない。」


あたしは今、2両編成のオンボロ電車に乗っている。しかも、行き先はわからない。


「はぁ…。」


手にはイケメンの携帯。しっかりロックがかかっていて、電話どころかメールもできない。


「困ったなぁ。」


電車は夕方だというのにガラガラ。ラッシュという言葉は、ここにはないのだろう。窓の外は一面みどり色。この電車に乗って、2駅過ぎた辺りからずっとこうだ。今、あたしは車両の連結部分。1両目と2両目の境にいる。イケメンは1両目。早く声を掛けて、携帯を取り返したいところだけど…。


「まだ、話中かよ…。」


あたしはクリスマスパーティーの後、イケメンを追いかけて駅までやってきた。改札付近でイケメンを見つけて追いかけたけど、追いつけず…。ホームでキョロキョロしていたら、偶然この電車に乗り込むイケメンが見えた。


「やっと見つけたと思ったのに…。」


イケメンを見つけた瞬間、発車のベルが鳴った。あたしは、反射的に電車に乗り込んだ。ちょっと焦ったけど、携帯を交換したら次の駅で降りればいいやって思っていた。それなのに…。


「いい加減にしてくれないかなぁ…。」


電車に乗ったイケメンは、ずっと2人組みの女子と話し込んでいる。声を掛けようか迷っていたら、そのうちの1人が泣き出しちゃうし…。


「はぁ…。」


あたしは連結部分から、1両目を覗いてはため息をついている。


ガタン、ゴトン。


しょうがなく、窓の外を眺める。やっぱり、みどり色。イケメンは、一体どこに行くんだろう。クリスマスなのに、こんな田舎を走る電車に乗っていていいのかなぁ?デート、じゃないの??


クリスマスデート。


イケメンは、毎年そういう相手がいるのかなぁ…。羨ましいっていうか…。イケメンは本当に、顔だけはカッコイイから…。共学クラスがなかったら、きっと話をする機会なんてなかったんじゃないかなぁ??住む世界が違うって言うか…。


電車が次の駅に着いた。


「あぁ!!」


イケメンと話していた、女子2人組みが降りている!あたしは、急いで1両目を覗く…。


「!!」


そこには人影。しかも見覚えのある…。


「ヤバイ…。」


連結部分のドアが、ゆっくりと開けられる。


「お前は俺のストーカーか?」


イケメン登場。っていうか、いつから気付いていたの??


「さっきから、チョロチョロと俺の視界に入りやがって…。」


??ヤバイ。なんか、怒ってる??


「こんな所まで追いかけてきて、どうするつもりなんだよ!お前は!!」

「だ、だって…。」

「だってじゃない!話があるなら、電話もメールもあるだろ!」


いや…だから。その携帯を…。

あたしは黙って携帯を取り出し、イケメンに見せた。


「携帯。リョウのでしょ。これ、ロックかかってるから使えないんだもん。」


イケメンはあたしの手から携帯を奪い取り、自分のポケットからあたしの携帯を取り出した。どっちも同じ会社の同じ機種。色も同じホワイト、ストラップも無し。


「嘘だろ…。お前は女なんだから、少しは携帯に何かしろよー。デコるとかさぁ…。」

「いいじゃん。あたしはシンプルが好きなの。」

「シンプルって…。色気なさ過ぎ。」


電車は再び、みどり色の風景の中を走り出した。


「じゃあ、あたし次で降りて戻るから。」


携帯を取り返した今、ここにいる理由はない。


「次で、俺も降りる。」


何で?そう聞こうと思ったけど…やめた。人のデートの話なんて、聞いてもつまんないし!ふと、イケメンに目をやると…なんだか元気がない。さっきの2人組みの女子のせいかしら??


「お前。知らないのか?」


イケメンは椅子に座って、こっちを見ている。横に座るのは何か違う。あたしは向かいの椅子に座った。


「何を?」

「…。もう、戻れないぞ。」


真面目な顔のイケメン。なんてシリアスな台詞。


「何いってんの?冗談?」


明るくあたしが返すけど、イケメンはマジだ。


「もう、帰りの電車は無いぞ…。」

「はぁ?まだ6時過ぎだよ。そんなワケないじゃん。」


いくらこの辺りがみどり一色だからって、それは言い過ぎでしょ??


「はっきり言うぞ。俺が夕方までしか学校にいないのは、用事があるからじゃなくて電車がなくなるからだ!」

「…えっ?」

「俺の家はすっごく田舎なんだよ!少し前まで村だったんだから。」


む、むら?村??そ、そんなの…。


「昔話の世界じゃん!」


と、言う事は…。電車の話は…本当?


「えっ。えええ!!!あ、あたし…。」


どうやって帰ればいいの??ていうか、帰れないの??


「あ、あたしどうすればいいのー!!」


イケメンに、詰め寄り尋ねる。お願い。嘘だと言って…。


「俺の家に泊まるか?」


ニヤリと含んだ笑顔。あぁ。悪いイケメンだぁ…。そんなの冗談じゃない!お、親に殺される!今日はクリスマスなのよー!!泊まるだなんて…。


「エローい!!」


ヤダヤダ、嫌だ!不純!ありえない!誰かぁ、嘘だと言ってよー!!

ガラガラの電車の中。あたしは1人で大騒ぎ。


ガタン、ゴトン。


電車は相変わらず、マイペース。ゆっくりみどりの中を進んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ