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不死の王は眠りたい  作者: 雷帝
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宰相日記1

 本日、不死の国の宰相に任じられた。

 折角なので、本日を境とし、記録を兼ねた日記をつけてみる事にした。


 儂はリッチと呼ばれるアンデッドの中でも高位の強大なアンデッド……らしい。陛下の傍だと実感出来んがな。

 陛下の力は強大じゃ。

 その力の前では儂なんぞ石ころみたいなもんじゃ。

 そもそも、アンデッドと呼ばれておるが、空と海と大地、そのいずれかに結び付けられて、空の彼方の極天に昇る事も出来ず、地の底の冥極に堕ちる事も出来んだけだ。その結び付けられ方も、自分で結んだ者もおれば、呪いで結び付けられてしまった者、恨みその他で気づいたらなってしまってた者など様々じゃ。

 一つだけ言えるのは陛下とは違う、という事じゃな。


 陛下は大地の化身とでもいうべき方じゃ。

 この世界には空と海と大地、それぞれに化身とでも呼ぶべき存在がおる。

 ……知らん奴の方が圧倒的に多いんじゃけどな。

 というか、儂が知ったのだとて、陛下に教えてもらっただけの話じゃし。

 空の化身たる竜王。

 海の化身たる大海獣。

 そして、大地の化身たる陛下。

 あり方はそれぞれ好きにしておる。

 竜王は特に支配する事をせず、世界の空を飛び回っておる。陛下曰く。


 『一応、空に属する者達の王のはずなんだけど、あいつはもう何千年もああだから』


 だ、そうな。

 大海獣は竜王とは正反対に海洋全てを支配する大帝国を築いている。


 『あいつは根がまじめだからねー。竜王とはケンカ別れしたから、正反対の方向に突っ走った結果よ』

 

 ……竜王と大海獣のケンカ別れ。

 書いているだけで震えがきそうじゃ。

 なんで話を戻すが、お二方を両方の極端とするなら、陛下はその中間というべきか。

 大地には他の種族の国も多数あるが、その内の一つが儂らの国、不死の国じゃ。


 不死の国はある意味、自然と成立した国じゃと言ってもいい。

 先に書いた通り、陛下は大地の化身であるが、世間一般には不死の王として知られておる。まあ、原因はおおまかに書けば二つじゃろうな。

 竜王や大海獣は分かりやすい。姿が異なる故、長く生きておっても「そういう存在だから」で考えてしまう。元より竜や巨大な魔獣の寿命が長いのだから王となれば更に長いのだろう、と思われるのもあるのじゃろうて。

 じゃが、陛下は外見は人の姿をしておる。

 なまじ人の姿をしておるからこそ、老いる事もなく、あり続ける事に違和感を感じるのじゃろうな。

 そして、大地の化身たる方だからこそ、気づけば儂含めた地に結びつけられたアンデッドが自然と集っておった。

 そうして、陛下は我々、地に結び付けられた者達を保護してくださった。陛下御自身は自分に結ばれたためにどこにも行けないのだから、保護ぐらいはしてあげようというおつもりだったのじゃろうが、他の種族からすればどう見えるか。

 老いる事もなくあり続け、その周囲にはアンデッドたる儂らが集まる。

 いつしか陛下は「不死の王」と呼ばれるようになっておった。

 そして、そうなると、今度は空に結び付けられた者、海に結び付けられた者といったアンデッド達もまた集まってきた。不死の国には海に面した部分もあるし、そこには港もある。海に結び付けられた者達も普通にやってくる事が出来た訳じゃな。

 そして、大海獣殿とは陛下が話をつけられた。

 大海獣殿ご自身は儂らアンデッドに対して別段特に何も嫌悪感などは持たれておらぬ、らしい。どういう存在かも理解されておるし、海の帝国の法に従うのならばその存在を認める腹であったそうじゃが……やはり、海の民達にはアンデッドという事で隔意を持たれておったらしい。大海獣殿の目を気にして、迫害などはしておらんかったそうじゃが。

 その事には気づかれておったから、良い機会だと思われたのは確かみたいじゃな。

 そして、竜王殿はこんな事は気にせぬ。一応、陛下が伝えられたが、陛下曰く「あ、そう?なら任せた」だったとか……。

 ……なんか複雑な気分じゃな。

 

 まあ、気付ば儂らは国を得て、周辺国からは監視対象となっておる。

 基本、連中は国境を越えて攻め込んでくる事はせぬ。 

 過去に陛下に散々痛い目にあっとるからなあ。陛下、敵対した相手には容赦せんし……。

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