同好の士を求めて挫折
「よいか、吸血鬼達の眠りとは……」
「「「「「………」」」」」
「そして、人の眠りとは……」
「「「「「………」」」」」
「故に、生物の眠りと我ら不死者の眠りの違いは……」
「「「「「………」」」」」
「あの陛下」
「なんじゃ」
「既についていけなくなって全員脱落しております」
駄目じゃったか。
余の研究に関して、他にも研究者をと思ったのだがなかなか上手くいかぬ。
「当然でしょう、陛下の研究は何百年という英知の結晶が至る所に混じっております故」
「……これにか?」
完全に趣味の研究だぞ?
おまけにまだ初歩の初歩の部分しか説明しておらぬ。
「あの、陛下。陛下の基準で考えないでくだされ」
「……どういう事じゃ?」
……ふむ、この基準でもまだ難しいか。
しかし、仕事ではここまでなる者はおらんかったと思うのじゃが。
「それは当然で御座います。仕事ならばそもそも陛下のお側で仕事をする段階でそれなり以上の経験を積んでおりますし、基本書類仕事です。中身を読むにしても世界最先端をぶっちぎりでいくような内容を読んで理解する必要はありませぬ。大体は規模が大きくなってもそれまでやってきた事の延長です」
ふむ。
「翻って……此度の話となりますれば……陛下もこの研究がいわゆる二ッチな研究という事はご存じですな?」
「無論だ」
そんな事は分かっている。
こんな研究をしようと考える者自体が限られていようし、研究対象として協力者となる吸血鬼を確保する事さえ難しかろう。
……実験体として拘束された者なら世界のいずこかにはおるやもしれんが、そんな者が進んで実験に協力するとも思えんしな。大体そんな実験で求められるものなぞ吸血鬼の吸血衝動を何とかするというよりは、いかにして効率的に吸血鬼を滅ぼすかの実験であろうよ。
……吸血鬼が人の世であまり好かれておらぬ事もあるしな。
「その通りでございます。……まあ、吸血鬼に限らず、不死者自体が人の国では余り、というか嫌われておりますからな。見つかれば大人しく誰も襲わす暮らしていても武器を持って襲われるぐらいには」
まったくだな。
不死者の国であるここ以外では魔物の国であってもあまり良い顔をされぬのが、我ら不死者故な。
「さようでございます。故に、世界でも陛下以上にこの研究に詳しい者などおりませぬ。いわば、世界の最先端。……学んだ事さえないのですから全てが一からとなります」
「ふむ……」
「1+1=2、すらやった事がないものに、いきなり高等数学をやらせるようなものです」
ふむ……そんなものか。
だとすれば、さすがに無理があるというものだな。しかし……。
「そうなると……全て一から勉強させて、育てるしかないという事か」
「さすがでございます、陛下」
……無理だな。
まともに研究を任せられるまで果たして何年かかるか分かったものではない。
いや、これが教育機関であり、余が専任の教師として教えるのならばもっと短くて済むのだろうが……何せ、余も国を治める者としての責務があるからな。しかも、余自身の研究もある。となれば、教える時間などほとんど確保出来まい。かといって、教科書など存在せぬからなあ……。
教科書を書くにはきちんと内容を理解せねばならぬから、余が書く以外にない。
しかし、そんなものを書く時間など……。
「将来を見越して少しずつ書いていかねばなるまいが、完成にはとんでもなく長い時間がかかりそうじゃな」
宰相は黙って頭を下げた。
その姿を見ながら、深い溜息をつかざるをえなかった。
やれやれ。
こちらもあっぷ




