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 分かった、一緒に逃げよう。


 俺はリーゼの手を取り、そう言ってしばらく彼女を見つめた。

 場違いにも、俺の心臓はドキリと跳ねた。

 そんな場合では無い、ということは百も承知であったが、彼女の美しすぎる顔が、俺を一瞬、(ほう)けさせた。

 それほどまでに、眼前にあるリーゼは美しかった。

 

 ――ぞくり


 激しい悪寒がした。

 まるで氷柱を背骨に突っ込まれたような、強烈な寒気。

 凄まじい悪感。

 この世の全ての邪気を集めたかのような、悍ましい予感。

 全身の汗腺から汗が噴き出した。

 筋肉が硬直し、息が激しく乱れた。

 

 俺は恐る恐る振り返った。

 すると――そこには、先ほどまでとは比べ物にならないほどのオーラを纏った悪霊の姿があった。


 奴は明らかに怒っていた。

 怒り狂っていた。

 怒気が全身から迸り、それはハッキリと視認出来るほどだった。

 表情も一変し、身体も変形し、さながら憎悪そのものを形に表現したような造形へとトランスフォームしていた。


「ミ、ミスったかも――」


 俺は呟いた。

 強烈な死の予感が脳裡に焼き付いた。


「り、リーゼ。俺から離れて」


 俺は振り絞るように言った。

 悪霊は我を失っている。

 彼女だけでも、生かすべきだと考えた。


「で、でも」

「いいから!」


 俺はリーゼを突き飛ばした。

 

 その様子を見て、悪霊はいよいよ激昂した。

 俺は、死ぬ。

 それは最早、確信だった。

 

「……せめて一撃で殺してくれ」


 俺は目を瞑った。

 

 悪霊は怒り狂っていた。

 幸いだったのは、奴が発狂していたおかげで、俺の最後の望みが叶ったことだった。


 悪霊は全身の(オーラ)を両手に集めた。

 そして、暴走する怒りのままに、全ての力を持って俺を叩き潰した。


 ぐしゃ。


 夥しい血液と共に、俺の身体は一瞬でぺしゃんこにプレスされた。



the end

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― 新着の感想 ―
 うん、やっぱり死ぬよね。  取り敢えずこれでコンプリート。
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