16
俺はペンダントを取り出して掲げた。
しかし、その刹那、ポケットの出口にソケットが引っ掛かり、上手く出せずに床に転がった。
やべえ、と俺は咄嗟に屈んだ。
「グワウッ!」
悪霊は骨張った右腕を薙ぎ払った。
それはしゃがみ込んだ俺の頭上で空を切った。
俺はペンダントを拾い上げると、つんのめるように前に走った。
やべえ。
危なかった。
そう思いながら振りかえったとき、俺は目を見開いた。
悪霊は眼前にまで迫っていた。
ペンダントを出す間もなく、俺はそのまま壁に磔にされた。
「グッググググゥゥゥ……」
悪霊の腕に押さえつけられながら、俺はくぐもった呻き声をあげた。
強い衝撃と同時に、禍々しいオーラで全身が悪心を包み込んだ。
こ、このままじゃあやべえ。
どうにかしないと。
身体を捻って藻掻くが悪霊の力が凄まじく身動きがとれない。
「お父様! やめて!」
リーゼが叫び声をあげた。
その瞬間、刹那、力が緩んだ。
俺は上手く右手をすり抜けさせ、ポケットに手を突っ込んでペンダントを取り出した。
すると、ソケット部分から光が溢れ出始めた。
「ゥゥウウウゥグググ……」
光に包まれた悪霊は俺から身体を離して悶え始めた。
苦しんでいる、というよりは、苦悩しているような姿だった。
今しか無い。
俺はテーブルの下に置いていた銅剣を持ち、悪霊に挑んだ。
「駄目です! そんなもので、お父様には敵わない!」
リーゼがぶつかるように俺を制した。
「け、けど、チャンスは今しか無い」
俺は言った。
「あのような姿になったお父様は、あなたの力では止められない」
「じゃ、じゃあ、どうすれば」
「逃げましょう」
「逃げるっつったって――」
俺は眉根を寄せた。
それが出来るなら、リーゼはここに閉じ込められていないのではないか。
この屋敷にいる限り、奴から逃れることなんて出来ないのではないのか。
そのように考えた。
「私の部屋に行きましょう」
リーゼは叫ぶように言った。
「お父様は、私の部屋には入って来られない」
そ、そうなのか。
安置があるなら、とりあえずそこに逃げ込むべきか。
だが――と、悪霊に目をやった。
悪霊は苦しそうに藻掻いていて、まるで無防備に見えた。
今なら、会心の一撃を奴に叩きこめる。
そんな風に感じた。
そして俺は――
A 分かった。一緒に逃げよう。そう言って、リーゼの手を取った。
B 少し離れていてくれ。そう言うと、無防備な悪霊の背中に向かって剣を振り下ろした。
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