1 はじまりの地
気が付くと荒野の真ん中にいた。
ぐるりを見渡すと荒涼とした原っぱが延々と続いている。
痩せた木々や大きな岩がてんでに見えるばかりで、あとは何にもない。
吹き付ける風に目を細めがら、ぼんやりと思い出す。
直前に迫るフロントライト。
けたたましく鳴り響くブレーキ音とクラクション。
そうだ。
俺は確か、トラックに轢かれたんだ。
それがどうして、こんなところに。
――あなたは転生したのです。
寄る辺なく佇立していると、どこからともなく声が聞こえた。
いっそ神聖なほどにとても美しく清廉とした声音だった。
「だ、誰?」
辺りをきょろきょろと見回した。
しかし、やはり誰もいない。
――私は女神です。
「め、女神……さま?」
――そう。私は女神。あなたを導くもの。
「導くって……俺、どうしてこんなところに」
――あなたは転生したのです。
「て、転生?」
――そう。1度死に、別の存在として生き返った。
「な、なんで俺が」
――あなたは選ばれたのです。この世界を救うものとして。
「救うものって……なんですか、それ」
俺は戸惑った。
なんかとんでもないことを言われてる。
――この世界を光へと誘うもの。勇者です。
「ゆ、勇者?」
耳を疑った。
脳みそも疑った。
ほっぺたを抓った。
痛い。
頬を張った。
痛い。
どうやら……
現実だ。
――さあ、旅立ちの刻です。
女神さまが言った。
「い、いや、いきなりそんなこと言われても」
俺は狼狽しながら言った。
「な、なんの準備もないし。俺、ただの学生だったし。俺なんかが、世界なんて救えるはずがないですよ」
――心配は要りません。あなたには秘められた力が宿っています。
「ひ、秘められた力?」
その時、胸の奥がじんわりと暖かくなった。
同時に、全身に何かが宿った気がした。
なにか……そう、なにか使命感のようなものが湧き上がって来たのだ。
――信じるのです。あなた自身の能力を。
「――能力」
俺はごくりと喉を鳴らした。
――そうです。信じるのです。そして、その心に従うのです。あなたは、あなたの心は、今何を感じていますか?
女神さまはそのように問うた。
俺は――
A 勇者です。 と、俺は真っ直ぐな心でそう言った。
B 魔王です。 と、俺は冗談を言った。
Aを選んだ方は 2へ。
Bを選んだ方は 3へ。




