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11話 元カレと再会しました

 私がケルベロスのゾンビに噛まれるという刺激的な体験をした日からさらに数か月が経過した。私たちはダートフォード・シティを離れ、ブリアン王国南部のルバントン・タウンという町に拠点を移していた。


 前から私とクリスは1~2年毎に拠点を移しながら活動している。あまり1か所に長くとどまると変なしがらみが生じたり、町の権力者に目をつけられて揉め事に巻き込まれたりする可能性があるということがその理由。


 そして次の拠点としてルバントン・タウンを提案したのはダミアンだった。どうやらダミアンがもっとも尊敬する歴史上の人物が若い頃ルバントンで冒険者として活動していたらしく、前から一度訪れてみたかったらしい。


 来てみたら気候は暖かいし、町の人々も親切で優しいし、治安が良い割に町から少し離れれば強いモンスターがたくさんいて収入にも困らないという、冒険者が暮らすには理想的な町だった。


 素晴らしい選択だったよ、ダミアン。さすが!…でもダミアンが尊敬する歴史上の人物って誰だろう。今度聞いてみよう。


 住む場所は変わっただけで、私たちの日常には特に変化がなかった。相変わらずアーロンくんとクリスは毎日いちゃついているし、相変わらずダミアンは毎日のように私を口説いてきている。


 本当にめげないんだよね、彼。優しく諭しても、冷たく突き放してもダメ。何を言っても無駄だし、何回断られても諦めない。いつか私は自分のものになるってことを全く疑っていないことがひしひしと伝わってくる。


 彼のメンタルの強さと自分自身に対する絶対的な自信は本当にすごいと思うんだよね。私には到底真似できないよ。


 ……正直尊敬してるし、めちゃくちゃ素敵だなって思っている。


 ちなみに自分の体のことを彼にちゃんと伝えたうえで交際をお断りしているかというと…いいえ、伝えられていないです。

 

 やっぱ勇気が出ない。なかなか言えないし、できれば言いたくない。気が進まない。そして私は気が進まないことはできるだけ避けて、先延ばしにするタイプなんだ…。


 …このままではいけないとは思っているけどね。


 そんなある日、ルバントンから北に5時間程の場所に新しいダンジョンが出現したというニュースが飛び込んできた。かなり大規模のダンジョンらしく、すぐにギルドが大々的に冒険者を募集するようになった。


 もちろん参加しない手はない。新しいダンジョンは冒険者のロマン。どんなモンスターがいるか分からないから命に危険が及ぶ可能性は高いけど、その分報酬が良い。


 しかもまれにアーティファクトが眠っているケースもあって、運が良ければ一攫千金を狙えるんだ。


 ちなみにアーティファクトというのは、主に古代の技術で作られた特殊な能力付きの武器や道具で、現代の魔道技術では再現できないものをいう。その「特殊な能力」がどんなものかにもよるけど、基本的にものすごい高値で取引される。


 だからここで一発当てれば、1~2年は仕事せずにどこかのホテルでのんびり暮らせるかもしれない。このチャンスを逃すわけにはいかない…!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 結論からいうと、新しく出現したダンジョンは「ハズレ」だった。規模が大きいだけで強いモンスターもほとんどいなかったし、アーティファクトも眠っていなかった。


 たぶん成功報酬はとても悲しい金額になるんだろうな…。まあ、前払いの着手金が割と素敵な金額だったから別に良いけどさ。


 ダンジョンにはアーティファクトは眠っていなかったが、その代わりにダンジョン内で変なものというか…全く予想外の人物に遭遇してしまった。


 さすがに「変なもの」呼ばわりは失礼だね。


「さらに綺麗になったな、お前」

「……ありがとう」


 あなたも一段とカッコよくなったと思うよ。大人の男の渋い色気が滲み出るようになったね。きっとこれからますます良い男になっていくんだろうなぁ…。


 今、私の向かい側に座っている色男の名前はイアン・テイラー。スタイリッシュに決まっているブラウンの短い髪と髭に、野性的でありながらも整った顔立ち。肉食動物を連想させる鋭い目つきと全身から漂う絶対的な強者のオーラ。


 私やクリスと同格か、それ以上の実績や名声を誇る超一流の冒険者兼傭兵。


 若い頃はパーティーを組んで活動していたが、ここ数年は群れるのを嫌い単独での行動を貫く孤高の一匹狼。1対1の勝負では一度も負けたことがないという天下無双の戦士。


 ちなみにそんなことができちゃうのはもちろん本人の実力がすごいというのもあるけど、彼の武器や防具にたっぷりの魔力(と愛情)が込められていて、それらの道具が彼を完璧にサポートし、彼のポテンシャルを極限まで引き出しているからでもある。


 言うまでもなくそれらの道具はほぼすべて私が購入したり、製作したりして彼にプレゼントしたものである。まだ全部持っていてくれてるんだね…。


 …機能性に優れすぎているから、売ったり捨てたりできなかったんだろうな。


 そう。イアンは数年前まで私がお付き合いしていた相手…。私の元カレである。


 どうやら彼は新しくできたダンジョンの探索クエストを他の町で受注していたらしく、ダンジョンの最深部で偶然再会してしまった。


 その日は簡単な挨拶だけで別れたんだけど…。数日後、私たちが滞在しているルバントンのホテルに彼が現れた。昔の仲間と久しぶりに話がしたくて来たとかいいながら。


 正直、あまり気が進まない話ではあったけど…わざわざ隣の町から会いにきてくれたわけだし、彼にはとてもお世話になったから冷たく断ることもできず、ホテルから少し離れたカフェで彼と二人きりで話をしているというのが現在の状況だった。


 というか、昔の仲間と話がしたいならクリスも一緒の方がよくない?あなたたち、実の兄妹のように仲が良かったじゃん。


 どうして私だけを連れ出したのかな。そしてクリスもなんで「自分はいかないのが当たり前」みたいな態度だったのかな。


 ……クリスも一緒ならダミアンにあんな不安そうな顔をさせなくて済んだのに。


 しばらく懐かしい思い出話やこの数年間のお互いの仕事の話をしていた私たちだったが、やがて話題も尽き、私たちの間には少し気まずい沈黙が訪れた。


 そろそろ帰っていいかな?今ダミアンに申し訳ない気持ちでいっぱいだから、早く帰って彼を安心させてあげたいんだけど…。


「なあ、レイチェル」

「…うん?」

「…もう一回、俺と組まないか?」


 …は?

『本当にめげないんだよね、この作品の作者は。優しく諭しても、冷たく突き放してもダメ。何を言っても無駄だし、何回断られても諦めない。いつか読者様はブックマークや☆評価をしてくれるってことを全く疑っていないことがひしひしと伝わってくる』

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