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友美の静岡遠征編です
若干の百合要素含みます
キーンコーンカーンコーン……。
「ホームルームは、これにて閉会」
「起立!礼!」
ガヤガヤ……。
先生と日直の号令で、教室は放課後の喧噪に包まれる。
部活へ行く者、帰宅する者等、様々である。
「友美ー」
仲の良いクラスメイトが、声をかけてきた。
「なに?」
「さっちんとみぃーがね、一緒に帰らない?って」
「ちょっと待ってね……」
手帳を開いて、予定を確認……っと。
「あ……」
今日は、あの日かぁ……。
「……もしかして、例の日?」
彼女、芝本亜弥は小学校時代からの幼なじみ。あたしがRCをやっている事に対して、唯一理解をしてくれている親友。他の友達からは、
「付き合い悪いよー?」
と文句を言われているけど、友達付き合いはそれなりに円満……のはず。その辺りをフォローしてくれるのが、彼女なの。かなーり助かってます。
「タイミング悪いなー」
ちなみに『例の日』とは、母さんと「RCショップ・ミナガワ」で待ち合わせをする日。月に一回、母さんとお店で待ち合わせをして外食する日なの。
「困ったわねー」
「ちょっと、母さんに都合を聞いてみる」
言うが早いか、携帯を取り出してメールを打ち始める。言っておくけど、携帯の所持に関しては、学校の許可を取ってあるからね?
「あやっちは、返事が来るまで向こうのフォローお願い」
「はいよー」
とてとてと、彼女は先述の二人組の方へ移動していった。
五分後……。
「♪~~~」
メールの着信音。相手は……母さんだ。
『多少遅くなるかも。研究所出たらメールするわ』
ということは、若干時間が出来た……事になるのかな?
「ごめーん、おまたせ」
「どうだった?」
あやっちが結果を聞いてきた。
「母さんが少し遅れる、って。付き合うよ」
「よぉっし、そうと決まればシノ、行くわよ!」
さっちんと呼ばれていた佐倉郁奈美が、音頭を取る。
「どこへ行くの?」
「例のアイス屋で新作が出たらしいの」
もう一人のみぃーこと、久世美優が情報を教えてくれる。
「女子としては、行かなければいけないよね、ゆーちゃん?」
「たまには、男の趣味から離れて私達に付き合いなさいよね」
「ははは……」
口は悪いさっちんだけど、みぃーと一緒になって、女友達があまりいないあたしを心配してくれてるのがわかる。これも、あやっちのフォローのおかげかな?
◇
「結構さっぱりした味だね」
新作アイスを順番に食べて、あたしは感想を漏らした。
「ちょっと物足りないかなぁ」
「私的には良いと思うけど?」
「インパクトが足りない……かな」
それぞれ、さっちん・みぃー・あやっちの感想。
「でも、おいしかったよ」
「ゆーちゃんはここ、久しぶりでしょう?」
「そうだねぇ」
「ほんと、付き合い悪いんだから、シノは……」
返す言葉もございません……とほほ。
「なに、その……RCって言うの?そんなに楽しい?」
いきなり、ストレートに聞きますか。
「楽しくなかったら、やってないよ」
趣味とは、そういうもんでしょう?
「私にはわからないなぁ」
まぁ、普通はそうだよね。あたしたちの年代では、恋愛に興味を持ったり、アイドルにはまったり……あたしはその対象がRCだっただけ。
「でも友美は凄いよ?大の大人達に混じってRCして、なおかつ速いんだから」
「「へぇーーっ」」
あやっちの力強い台詞で、二人に感心されちゃった。
「でも、この前は優勝できなくて残念だったね」
「うん……って、何であやっち知ってるの!?」
「こっそり見に行っちゃった♪」
行っちゃったって…….。
「場所、知ってたの?」
「友美が教えてくれたじゃない、たまたまお店の前を通ったときに」
そーだったっけ?記憶にございません。
「友美ったら、もの凄い真剣な目だったよ。二人にも見せてあげたかったなぁ」
「そ、そんなに?普段真剣な表情みせないからなぁ、シノは……」
「ちょっと、見てみたいかも」
見せ物じゃありませんって、さっちんにみぃー?
「見に来てたなら、声をかけてくれても……」
「んー、そうしようと思ったんだけど、ちょうど飯合君?と話をしてたから」
「め、メッシー?アイツもRCやってるの?」
「へぇー、意外ー」
ソウデスカ?男の子なら、普通なのでわ?
「そうらしいよ。敵情視察に来てたみたい」
「仲良さそうだったね」
「ちょ、まて!彼とは、口論になってたのよ?どこをどう見れば仲良いのよ……」
「そうなの?」
「彼と話せる女子って、アンタぐらいしかいないわよ?」
マジっすか?
「飯合君って、ちょっと怖い感じあるよね」
「男子もあまり近づかないしね」
へぇー、やっぱ転校生&関西弁ゆえに?
「あたしはそんな感じしなかったなぁ。怖いだけなら、店の常連メンバーの方が怖い人いるし。横峰さんとか?」
「まぁ、横峰さんという人がどんな人か知らないけど……」
「大人と付き合っているシノは、やっぱ違うねー」
何か、他人が聞いたら誤解を招くような発言デスヨ?
そこへ……。
「♪~~~~~」
メール着信を携帯が知らせてきた。
「あ……母さんだ」
「ということは、お開きね」
ごめんね、みぃー。
「もうちょっと居たかったなぁ」
「無理を言っちゃあいけないよ、かなちゃん?」
時間があったらまた付き合うからね、あやっち、さっちん。
「居たかったなぁー!」
うあ、さっちんがメンドクサイキャラになりかけてるー。
「こっちは納めておくから」
「ゆーちゃん、また明日ね」
「またね。あやっち、みぃー、さっちん」
さて、お店へゴー!
◇
「行ったわね」
「行ったね」
亜弥と美優はお互いに視線を合わせる。そのまま、視点をテーブルに落とすと、ふてくされてる郁奈美がまだ座っていた。
「折角、久しぶりにシノとお茶できたのに……」
相当ご立腹のようだ。
「なんだかんだ言いながら……」
「友美のことが好きなんだねぇ……」
それを聞いた郁奈美が、突然立ち上がった。
「い、い、い、いい加減なことを言うんじゃあないわよ!わわわ私はただ、シノの交友関係が心配だから……」
「はいはい」
「そういうことにしておいてあげるよ」
「あんた達ーっ!」
郁奈美のボルテージが、最高潮に達しようとしている。
「これは…」
「立派なツンデレだね」
「だ、誰がツンデレかーっ!」
「ちょっと違くない?」
「ツンが強すぎて、まだ覚醒してないか……」
「いい加減、そこから離れなさーいッ!!」
補足:友美の親友紹介
芝本亜弥:友美の幼馴染 あやっち、友美と呼び合う 同年代での友美の理解者
佐倉郁奈美:クラスメイトその1 さっちん、シノと呼び合う 4人のリーダー的存在 お嬢様
久世美優:クラスメイトその2 みぃー、ゆーちゃんと呼び合う 割と常識人
郁奈美→友美の一方通行(片想い)な感じ もちろん、友美は気づいていません
他2人にはバレバレ それをネタに郁奈美はよくイジられますw




