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35 事件解決

あれ? あれれ?

1年くらいたってるよw


ごめん、アレです。すっげースランプだったんですー!!

第34話






 次の日。

 リギドさんのスパリオ魔術道場の周りを見物しながら歩いている美少女ふたり組。

 ひとりはクリーム色の長い髪を風に揺らしながら腕を組んで歩く白いジャケットに白いロングスカートの小柄な女の子。

 もうひとりは黒髪ロングでキリリとした顔立ちで刀の柄に手を掛けている、白地に赤い牡丹の振袖を着こなす女の子。

 どこから見てもミコと美衣のふたり組です。両者ともに薄い笑みを浮かべているけど目は全然笑っていない。


「ミコ、行く場所は判っているでしょうね」


「当然です。絶対に許しませんから」


 オレの様な美少女を冤罪で牢屋に放り込むなんて許されない事ですから!

 しかも聞くところによればオレ達が牢屋に入っている五日の間にセキューのところを吸収合併したみたいで、リギドさんのスパリオ魔術道場は大繁盛なんだそうです。

 だからちょっと前まで閑古鳥が鳴いていた道場なのに、今じゃ表に立っているだけで中から練習する掛け声やら呪文やらが聞こえてきます。


「へぇー。たった数日でここまで繁盛してるとは。たいした出世ですねー。……さて、色々と中の様子も観察しましたし、そろそろリギドさんに説明でも聞きに行きましょうか」


 そうオレが言うと美衣さんはこちらを見ながら無言で頷いた。





 


「御免ください。御免ください」


 道場の正面へと戻ってきたオレ達は玄関で何度か来訪を告げると中からひとりの門弟が出て来て何事かと応答してきた。


「ここはスパリオ魔術道場です。何か御用ですか?」


「はい」


「どんなご用件でしょうか」


「はい。ちょっと通りかかったので道場破りに来ました」


「はい? 今なんと申し──」


「我ら両名! この度、道場破りにまかり越した! いざ、主のリギドに用向きやあらん!」


 通りかかったから道場破りをする等とオレが突拍子もない事を言う。すると対応している相手は聞き違いかと尋ね返そうとして、変わりに美衣さんが朗々と名乗りをあげた。美衣さん怒ってるねー。怒ると時代劇入るからなーこの人は。




「こ、これはミコさん、美衣さん……。よ、よくぞご無事で。さ、さあ、こちらでお祝いに酒宴でも開きましょう。あ、あははは……」


 少しすると奥の方からリギドさんが手を揉みながら早歩きでこちらへと来た。

 すごい困惑した笑顔ですね。オレ達が何故無事に娑婆へ出られたのかを図りかねているみたい。


「リギドさん、よくも私達を騙して自分だけ都合のいい様に事を運びましたね。おかげで私達はもうすぐ貴女のやった殺人の罪で色々と女としての人生が終わるところでしたよ」


「えー、あははは、な、何の事でしょうか? 私には何を言っているのかさっぱりですよ。み、美衣さんもミコさんもさあ奥へ。さあさ、奥へ……」


「何が祝いの酒宴だ! 恥を知れ恥を!」


 丁度、広い道場にきたところで美衣さんがえらい剣幕で怒りを顕わにした。今にも斬りかからんばかりです。

 ちょっ、美衣さん! 熱くなりすぎないで!


「!! はわわわっ」


 そしてリギドさんはその美衣さんの怒りに当てられてパニック状態。オレもリギドさんには言いたい事は山ほどあるけど今は冷静にいきますよー。


「えっと、リギドさん誤魔化してももうダメですよ。ぜーんぶお上にはばれていますから。大人しく貴女は罪に服しなさい」


 美衣さんの怒りで泡を食ってる状態の彼女へ、更にオレがもうお上に話は全て通っているとオレがばらすと、リギドさんは見る見るうちに顔色が赤くなったり青くなったりと変化したと思ったら一拍を置いてヤケクソ気味に言い放った。


「う、五月蝿いです! 私が人を殺したなんてそんなデタラメ誰が信じますか? 信じるわけがないですよ! みなさーん! 出てきて下さーい!」


 リギドさんのその声が道場中に響き渡ると『ドタドタ』と足音がして何十人にものぼる門弟が入ってきて、オレと美衣さんの周りを囲こんだ。




「も、門弟のみなさん、このふたりは狼藉者です! ギタギタに叩きのめして警備兵に突き出してください!」


「はっ、お任せください」


「この様な細腕の娘ふたりなど、すぐにも片付けてご覧に入れますぞ」


「娘っ! 我らが道場へ来た事を後悔させてくれる」


 美衣さんと背中合わせにリギドさんの門弟達を見ると粋のいい奴等が粋のいい事を言っている。

 あーあ、周りを取り囲んだところでこんなセキューにも及ばない様な連中が何十人集まっても指先一つでダウンなんだけどなー。でも相手の実力とかが判らないリギドさんにはちょっとその辺を察するってのは無理な話ですよね。


「どうです美衣さんミコさん? これだけの魔法使いに囲まれてしまえばいかに貴女達でも怪我ではすみませんよ。かと言って謝ってももう許しはしませんけどね!」


 門弟達の後ろで実力差が判らないリギドさんが優越そうな顔でタワケた事を言っているけど無視。

 って言うか、このまま警備兵のところに突き出したとして、そしたらリギドさん貴女の方が都合が悪くなるんじゃないの?


 まあ、それでもオレ達ふたり無実の罪で牢屋に入れられたわけですし、意趣返しにほんの少しだけ相手してやるのも気が晴れるってもんですよ。

 と、そんな事を考えながら美衣さんを見ると、美衣さんもこちらの視線に気がつき『ニヤリ』と笑みを浮かべる。

 



 そんな事をしてたらなにやら右手で印を結んで呪文をとなえる門弟が見えた。


「こっちの女は魔術を扱う者ではないぞ! ただの剣使いだ!」


「おお! まずは魔術の徒にケンカを売って来たことを後悔させてやろうぞ! のう皆の衆」


「心得た! 女! 覚悟せよ、我が炎の魔術で焼き払ってやる!」


 へえ、美衣さんにまずいっちゃうんですか? ではこちらも動きますかー。光の精霊様、風邪の精霊様、か弱き我らに魔を防ぐ御加護を……。


「ん、ミコさん……? あっ、この女ぶつぶつと何か唱えていますよ! 阻害してください! 急いで! 早く! 早くー!」


 リギドさんが気づいて急いで門弟達に命じるけどもう遅い、その時にはもうオレと美衣さんには明るく輝く魔術が張られていた。

 おしい! ホントにおしい! って言うかオレの精霊魔術を甘く見ないで下さいね。大きな術だって一秒二秒で完成ですよ!

 って事で魔術効果打ち消しの魔術の完成です。防御型の魔術効果打消しを使って相手の魔術を封じなかったのはリギドさん達に絶望ってヤツを味わって頂きたいからですねー。うへへへー。

 

「こ、この!」


「こいつでどうだ!」


「だめだっ、全然効かないぞ!」


 色々な魔術がオレや美衣さんに飛んでくる。攻撃の魔術だけじゃない。眠りだったり盲目だったりと色々な魔術が飛んできた。

 でも全部無効化。キャンセル。効いてない。

 魔術効果打消しのこの精霊魔術。光と風の精霊様の御加護でオレの魔力値以下の効果を全てゼロにしてしまうんですよ。だから無敵ってわけじゃないですけど大抵の効果は無効にしてしまえます。

 だって自慢じゃないけどオレって魔王やっつけてるんですよ? ひとりではありませんが魔王をやっつけてるんですよ。だからこんな町の魔術道場の三下連中に良い様にやられるわけないんですよー。


「あははははー。どうしたんですかみなさん。もっと魔法をこちらへと撃ってきてくださいよー。」


 自分達の魔術がまったく効いていないのを見てどうですか? 絶望しました? 上には上がいるって事を理解してくれました? 

 



「じゃあ、美衣さんがすっきりしたら私が最後に大きな精霊魔術でこの道場ごとふっ飛ばしますのでやっちゃってください」


「うむ。私も少々体を動かしたいと思っていたところ! お主達も怪我をしたくなければこの道場から出て失せろ。それでも私に立ち向かってくるのならそれ相応の技をくれてやろう!」


 そう美衣さんは言うと腰を少し低くして刀を鞘から抜き放った。

 この程度の相手に武器の効果を上げる魔術は必要ないから今回は高みの見物です。美衣さんの事ですからいい感じにぶっ飛ばしてくれるでしょう。







「……かぶ赤き炎よぉぉ、うわああ、目の前の敵を、待て待ってくれーー! うぎゃっ」


 ゴキリっ。

 ボキっ。

 恐怖に泣き叫びながら杖を前に出して渾身の魔術を放とうとする門弟達の腕の骨がいい音を出す。もちろん美衣さんの剣技だ。

 腕や足、それに脇腹などを峰打ちで叩き折っていく。

 

「俺はも、もう嫌だ……!」


「待て! 俺も!」


「うわあぁぁ」


 あまりにも無慈悲に門弟達の骨を叩き折っていく美衣さんにさすがの門弟達もひとりまたひとりと道場から逃げ出していく。


「待ちなさい! 私の道場の門弟でしょ! 道場主を置いていくなんて許されないわよ!」


 逃げ出す門弟達を必死に止めるリギドさん。しかしその手を振り払われる哀れな彼女を待つ者は誰もいない。


「道場主。俺達ゃあの女達には適わねえですよ。すまねえがこの辺りでずらかりますぜ」


「ああ、待って、置いていかないでー! ここを守ってー! 守ってよー! 代々続いてきたこの魔術道場を守って……よ……」


 最後は絶叫から一転、その場で力無くくずれる様に座り込んだ。 







「さて、リギドさん。新しく入ってきた門弟さん達も建物から逃げていったみたいですし、私が貴女に本気の精霊魔術による稲妻をちょっとだけ見せてあげますよ。そうですねー、狙いはこのスパリオ魔術道場にしましょうか」


 道場内から服を掴んで玄関前の大通りに連れてきたリギドさんにこれからの事を説明します。


「あ……あぅ、やめ……やめて……こ、壊さないで……。お願いします。壊さないで……お、お願いします。ここは私の大事な大事な夢と希望なんです。壊すのだけは……壊すのだけは許して……!」


「はあ、リギドさん貴女ね、人をふたりも鉱山送りにしようと画策したくせに自分の番になると泣き落としで済まそうとしてもさすがに世間様は納得してくれないと思いますよ。ですから!!」


 そうリギドさんに言うとそのまま道場だけを狙った凄まじい稲妻が放たれた。何丈にも渡る稲妻の衝撃は屋根を落とし壁を崩してただの廃材置場にしてしまった。


「ああああぁぁ! 私の私の道場が! 私の夢がー! ああぁぁ!」


 全壊したスパリオ魔術道場を放心状態で見つめるリギドさん。

 凄く哀れだけど自分の仕出かした事の報いってヤツですからね。恨むなら恨めばいい。でもそれは逆恨みですからね。そこのところ良く考えてください。オレ達なんて貴女のおかげで鉱山労働者にさせられるところだったのですから。


「よぐも! よぐもやってくれたわね! お前達を私は絶対許さない」


 そう言いながらリギドさんは、涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔で美衣さんに殴りかかった。

 でも彼女の打撃は全て美衣さんにあしらわれ何一つ有効打とはならない。


「ううぅ、当たりなさいよ! なんで避けるのよ!」


 まあ、そんな事を言われてもねぇ。

 と、そうこうしているうちに今度はオレに顔を向ける。そしてこっちに来ようとして足がもつれたリギドさんはその場でビターンと顔面から道場の床に転んだ。


「このっ! このっ!」


 半分以上瓦礫と化している道場の床に座り込んだリギドさんは近くに転がっている屋根の木片やら何やらを掴んでは投げはじめた。


 黄色の髪に合わせた黄色の服を着込んだ可愛らしい頃のリギドさんはもうどこにもいません。

 これは自暴自棄ですね。


「このっ! このっ!」


 相変わらずその辺の破片をオレ達に投げ続けるリギドさん。


「貴女いい加減にしなさい!私達に人殺しの罪を着せておいて何様のつもりですか!」


 暴れまわって怒りが幾分か収まって説教モードに入ったのか美衣さんの時代劇口調が元に戻っている。

 そりゃ、あれだけ大立回りをやればいくらかは落ち着くでしょ。


「う、うるさい。お前達になんか……」


「ミコ?」


 恨み事をリギドさんが言ってるのを遮った美衣さんがオレに話しかけてきた。

 なんだろう。


「はい?」


「道理の通らない事をいつまでも聞いてるのも疲れました。この辺りでもう一度ミコの稲妻を見せてくれませんか? 丁度そこにいい標的がありますし。死なない程度にね」


「え? ああ。そうですね。じゃあもう一発落としておきましょうか」


「やっ、待っ、ひっ、ひいぃぃ!」







「この女がコスモス魔術道場のセキュー殺しの真犯人です」


 警備隊の庁舎の中で、プスプス音を立てながら美衣さんの肩に担がれたドリフみたいな黒焦げになった女魔法使い。

 彼女の表情を見れば全て観念したかの様。


「は……い。全部私がやりました……。この人達は何もしていません。私が罪を擦り付けただけなのです」







 この後この街の警備隊長もリギドさんと連座して捕まりました。

 なんでもリギドさんはこの警備隊長と体の関係にあり、ズブズブの関係だったらしい。そりゃあ、オレや美衣さんが何を言っても取り合ってくれないわけだ。最初から色々と仕組まれていたんだろうね。


「行こうよミコお姉ちゃん。ずっと街を見てても気は晴れないよ」


「うん。そうだねコロンちゃん」


 ずっと街を眺めてるのを心配してくれたのか幼女賢者で軍師のコロンちゃんが肥を掛けてきてくれた。


「ほらリュウくんもミコお姉ちゃんの事を心配してるよ」


「あはは。リュウくん、そんなに心配しないで。私は全然だいじょうぶだよ」


 コロンちゃんの使い魔ミニ飛龍のリュウくんもコロンちゃんの肩からのそのそと出てきてオレの指をべろべろと舐めてくれる。

 慰めてくれているんだけど手がベトベトになるんだよね……。 


 事件も解決したので街を出たオレ達勇者パーティーは目的地のヒノモト国へと向かい始めた。

 行った制裁は納得のものだったけど、やっぱ後味が悪すぎて気が晴れない。でもオレ達は進まないとならないんだよねー。復活したって言う魔王もそうだけど、薬を使って不老になる為に!!




 この後彼女達がどんな罪になるのか判らないけれど人様に迷惑をかける様な生き方だけはしないでくれよとオレなんか思うのでした。まる。


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