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16.パーティー

「ミレル様、ご入場です」

「あら、可愛らしい」

「ミレル様、だんだん大きくなってきましたわね」

「また何かやらかしたかと思えば、ミレル箱だなんて」

「あれ、すごいのですのよ。大きさが揃ってるってだけなのに、すごく便利なのです」

「まさに天才よね」


 僕の苦手なパーティーだ。

 笑顔を張り付けて、方々に挨拶をする。


「ミレルですわ」

「まぁ、ミレル様。ご機嫌麗しゅう」

「はい、ミッケンハイム侯爵様も、健康そうで、なによりです」

「うちの娘はどうかね?」

「よく働いてくれてますよ」

「そうかいそうかい」


 この人はミッケンハイム侯爵。つまりラーナの父親だ。

 国王派に所属している。

 この国では国王派と宰相派があって、ちょっと競い合っている。

 もちろん最終決定権は国王である、ドーザン・アレサンドロ・マーシナル国王の専権なんだけど、王がいつまでも元気だという保証はない。

 次の王のミカエルはまだ小さいので、その間に宰相たちは権利を拡大しようと狙っているのだ。

 王様はまだまだ元気そうだけど、年齢を重ねれば年を取るのは人間の定めだ。

 僕たちはエルフ国のようにはいかないのだ。


 王宮のパーティーでも荷物入れにミレル箱を使ってるくらいだ。

 これは僕が指示したわけじゃないのだけど、便利だとメイドたちが主張して、こうやってパーティーでも宣伝するつもりなのだ。

 今、国内では箱の需要がひっきりなしで、そのための木材の運搬もラッシュの勢いだった。

 地方発送分に前は違うサイズで送っていたのも、ミレル箱で送ってくれって言われるくらいになってきた。

 複数業者間で違うサイズだったものもミレル箱に統一された結果、同じサイズで売買されるようになり自由競争が活性化していた。


「ハキーナですわ」

「あら、ハキーナちゃん。珍しいね」

「話、聞きましたわよ。ミレル箱のこと」

「あ、うん」

「うちの国でも導入したいの。そのまま『ミレル箱』として」

「え、いいの?」

「うちの国だけ『ハキーナ箱』なんて名前にしたら、後世の人に笑われてしまいますわ」

「さすがハキーナちゃん。周りをよく見ている」

「えへへ、それでミレル箱、国際流通に載せましょうよ」

「いいですけど、そちらは主権がうちの国に取られたように感じませんか?」

「度量衡は国の政策ですものね。でもそんなこと言ってる暇に帝国に真似されて違う規格にされたら溜まったものではありませんし」

「なるほど」


 うちのマーシナル王国と隣国のエバーランド王国は友好国だ。

 それでちょっとあまり友好的でわないのが西側にあるデバルタン帝国なのだ。

 大国なのを見せつけて、色々な利益を貪っている。

 私たちの両国は力を合わせて帝国の力を押さえる立場にあるのだ。

 もっと北にあるエルフ国は人間同士のイザコザに我関せずを貫いている。


 魔族の侵攻とかには人間もエルフも協力するんだけどね。

 まあ、形の上では連合軍を作ったりもする。

 今は東の向こうにある魔族領とは距離もあるし、力もそれほど強くない。


 とにかく寸胴お子様ボディーにヒラヒラのピンクのドレス。

 ラーナのお手製の刺繍まで入っている。

 この格好であちこち挨拶しなければならない。

 それから立食パーティーなので満足に食事もできないのだ。とほほ。


 今日は向こうのテーブルにマイマイの甘酢あんかけとオオダンゴムシのエビチリが置いてある。

 また貴族の令嬢がお皿にとって持っていく。

 僕が取ってきた獲物なのに。

 僕も本当なら一目散に駆けつけて食べたいんだけど、挨拶が終わらない。


 王女だからね。みんな挨拶したがるんだ。

 騎士団で英雄視されてる声も、貴族の一部の人は知っている。

 騎士団にも貴族籍の人が多いからね。

 王立騎士団の主力部隊は民間上がりの元冒険者が多い。

 王立騎士団の指揮をしている人と近衛騎士団は貴族の人が多いんだ。


「はぁ……」

「ご機嫌麗しゅう」

「どうも……」


 ふう、喉渇いた。

 ぶどうジュースをごくごく飲む。

 今日のために特別に僕が氷を出して冷やした特製だった。

 ワインを飲まない若い子たちが、冷えているのを見て、おっかなびっくり飲みにくる。

 評判は良くて、またお代わりに来た子とかもいるのだ。


「僕が氷を出してるのは秘密だけどね」


 氷魔法は貴重だからね。

 王宮だから専門の人を雇っててもおかしくないんだけど、実は働いてるのは僕というね。

 影で活躍するのも悪くはない。にししし。


 ちょろっと裏へ回って、氷の補充を置いてまたしれっとパーティーに戻ってくる。

 あ、ナーシーがこっち見てる。さては見てたな。


「ナーシー、ちゅっ」


 投げキスでもしておこう。

 人目を避けてウィンクを返してくれる。ふふ、こういうところも好きだ。



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