第四百九十八話
「うわー……めちゃくちゃいるじゃん」
海中にあるものを認識しようとする場合、手段は様々だ。
秀星、高志、沙羅、椿、風香、来夏の六人の場合、スキルや能力的な部分で言えば、秀星と来夏はほぼ普通に見える。
高志は純粋に視力がいいので、海の中まで視える。
沙羅は多分、分かっている。転移関係のスキルを持っているものは、応用技術で周りにあるものの状況を把握しやすいのだ。
椿と風香だが、風香に関しては地上なら風を使って何とか理解できるはずだが、海の中は無理。
椿はまだそういう段階ですらないはずだ。
よって、『海の上でつぶやいた秀星の『めちゃくちゃいる』というセリフ』に対して、頷きだったり、同意を示したのは三人だけと言うことである。
小舟を魔法で創造して、そのまま壺があるところまで来た。
秀星のセリフに対して、風香は首をかしげる。
「え、秀星君、海の中、どうなってるの?」
「鯨がめちゃくちゃいるぜ。正直、オレからみても引くレベルだ」
「あ、圧倒的過ぎませんか?」
「そう言う場合は結構多いぜ。で、どうするんだ?」
「未来のお父さんは、水中で大量のモンスターを相手にするとき、水を全部抜いていました!」
椿の言い分に秀星は苦笑する。
「秀星君。敵を土俵に上げない性格になったんだね。大体正面から倒しに行くのに……」
オマケに未来の嫁からもそんなことを言われる始末。
「……で、秀星、どうするんだ?オレは全部海の上に引き上げてお手玉をすると楽しいと思うぜ」
「おお!いいなそれ」
ギャグ補正を持っている二人がバカなことを言っているが、秀星は無視。
「まあその案は放置するとして、どうしますか?私はあまり、時間がないと思いますよ?」
沙羅がそういった。
「そうだな……まあこうなったら、できることは多くないし……いっそのこと感電死させるか?」
「電撃耐性あったらどうするんだ?」
「なかったらもうそれで勝負終了だからいいんだよ」
というわけで。
秀星はオールマジック・タブレットを右手の上に出現させる。
そして、そのまま黄色に光らせた。
「『ストレス発散放電』!」
ネーミングセンスはかなりどうしようもないことになっているが、神器から放たれる電撃の威力は本物。
空から雷が降ってきて、海に向かって直撃する。
「……なあ秀星、それ、隠れて『電撃耐性貫通』つけてないか?」
「よくわかったな」
で。
「なあ秀星、全然減ってねえぞ」
「……?」
秀星は首をかしげた。
「あの、秀星君。私、海の中ってそこまで感電範囲が広くないって聞いたことがるんだけど……」
風香がそういったので空気が凍った。
「……え、海の中で雷そんなに流れないの?」
「今のところ、クジラがいる範囲は深さが百メートル超えてるな」
「あ、多分、ほとんど意味ないね」
「アッハッハ!秀星だっさ!」
秀星はとりあえず、高志を近くの島までぶっ飛ばした。
「さーて、ちょっと潜ってくる」
「いってらっしゃい!」
娘にいってらっしゃいの挨拶をもらって、海中に飛び込む秀星。
その時、沙羅のスマホから着信音が鳴った。
「あら、アステル君からね。はいもしもし……え、今度は島の地下に向かって魔力が流れ始めてる?」




