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第四百九十六話

 一般人とスケールが違う人間と言うのはいつも、冗談なのか本当にするのかが分からない場合が多い。

 決断し、それを有言実行する。

 素晴らしいことだ。尊いことだ。


 ただ、朝森沙羅。

 本当に、そこに売られていたものを全て買うというのはどういうこっちゃ……。

 しかも、『在庫が残っている』となれば、その在庫に残っている物もすべて購入するという暴挙である。


 さらに驚くのは、そんな暴力的な買い物をしているというのに、そばで椿が喜んでいると言う点だ。

 未来の秀星たちの資産はそりゃ多いだろうが、素直な性格なので意外と常識人かと思ったらそう言うわけではないらしい。

 不思議な基準である。


 ちなみに高志は意に介していない。

 ついでに言うと、ほとんどの店員が気にしていなかった。


「……母さんの丸ごと購入って、よくあることなのか?」

「そうねぇ、気分がいい時は大体やってるわ。秀ちゃんはこう言うのに抵抗があるのかしら?商品なんだから買っても問題ないのよ。それに、金持ちは金を使うに限る。これは鉄則よ」

「……さいですか」

「で、その時の荷物持ちは大体俺になるわけだ」


 高志がグッドサインを見せてくる。

 『すべて運べるのか?』と言う疑問は、その商品を束ねた入れ物がビルより断然重い場合だけである。

 ビルシャカシャカとかビルお手玉とか、常識的、物理的に意味不明な遊びをするような奴である。持ち運べないものは大体存在しない。


 そこまで考えたとき、沙羅のポケットから着信音が鳴り響く。

 沙羅はそれを見て、耳に当てた。


「はい。どうしたの?……うんうん。わかった。伝えておくわね」


 短い通話である。


「何だったんだ?」

「アステル君から、『発信機から漏れている魔力が、一番近い海に向かって流れ始めている』そうよ」

「海に?……あの発信機。遠くから場所を把握するためじゃなくて、地球にあるものを起動するためのものだったのか?」

「可能性は高いだろうぜ。発信機には高い鑑定能力が備わってんだろ?だったら、その起動させたいものが特殊な鑑定でのみ把握可能なら、その隕石にとっても見つけやすいだろうしな」


 高志の補足で全員が理解した。


「あの隕石、粉微塵にしておくべきだったか?」

「いや、多分結果は変わんねえと思うけどな」


 絶対に壊れないように作っている自覚があるのならともかく、そうでなければ、送りつけた先で壊される、もしくは、送りつけた時点で破損している可能性を考慮するべきだ。

 確かに粉微塵にしておいたとしても結果は変わらないだろう。


「!?」


 どうするか、と考えたときだった。

 突如、ユニハーズの拠点よりももっと奥の海の方で、水しぶきが上がった。

 密林の奥から、何かが見える。


「鯨?」


 そう、紫色の鯨だった。

 秀星たちがいる位置からでも十分その姿を判断できるほど大きい。

 凄まじいスケールだ。


「秀星。何言ってんだ。あれがクジラなわけねえだろ。鯨だってあんなに大きくはねえぞ」

「……じゃあなんだ?」

「それはな……『ジャイアントホエール』だ!」


 秀星はとりあえず高志をそのへんのゴミ箱に放り込んだ。


「しっかし、またなんていうか……倒すのに人数が必要そうな奴が出てきたな」


 クジラを見ながらそんなことをいう秀星。

 ただ、人数が必要と言っておきながら実の父親をゴミ箱に放り込むあたり、秀星の鬼畜さと朝森家の躾が気になるところだが、それを議論する時間はない。


「え、秀星君だけじゃ倒せないの?」

「いやまあ、そういうわけじゃないんだが……」


 人数が必要だからといって秀星は悲観しない。

 セフィアがいるし、魔法で召喚獣を出したり、マシニクルの付属装備の魔導甲冑を使ったりすれば、人数を用意することは難しくないのだ。


「あっ!あの鯨さん。イルカみたいに跳ねてますよ!」


 椿が指さした。

 たしかにそこでは、紫色の巨大クジラが跳ねていた。

 ……が、自分ではねているような動きには見えなかった。


「いや、多分あれは……来夏が遊んでるんだろ」


 秀星のその言葉を聞いて、風香と椿は納得した。

 沙羅は微笑んでいるだけである。


「来夏。意外と余裕あるな。まあ、だいたい予想はしてたけど」

「でも、すごい色してるよ。あの鯨。皮膚に毒とかないのかな」

「あっても来夏には効かないだろ」

「あ、それもそうだね」

「効かないんですか!?」

「……最近は不思議な子が多いわねぇ」


 沙羅はあらあらうふふと微笑んでいただけだが、なんともあんまりな情報に若干唖然としている。


「そういえば、鯨って地上では自分の体重を支えられないから、浮力がある海にいるときいたことがありますけど……」

「宇宙から送られた発信機に反応するようなやつにそんな常識が通用するとは言えないだろ。まあとりあえず、行ってみるか」

「あ、私も行きます!お父さんの戦闘シーンがみたいです」

「なら、私もついていったほうがいいかな」

「それなら、みんなで一緒に行きましょう。私の転移で一瞬ですよ」


 というわけで……。


「ふっかあああああああつ!……あれ?あいつらどこに行った?」


 高志は取り残されることになった。

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