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第四百九十四話

「アステル。ちょっと巨大隕石を確保してきたから見てくれないか?」

「……なんだろうな。巨大隕石を確保して秘密を解明するという、通常なら二時間くらいの映画が作れそうな壮大な話題であったとしても、秀星がやるとなんのドラマもないんだろうなって一度考えると納得している自分がいる」


 すでに確保する方法は明かした。

 ので、その過程をわざわざ行動としてたどり、説明する必要はない。

 というわけで隕石を持ってきたわけだ。


「で、その隕石ってどんなもので、どれくらいの速度で飛んできたんだ?」

「明らかに魔法的な概念が絡んでいそうな特殊な鉄分だな。大きさは十メートルくらい」

「思ったより大きくないな。まあ、鉄でできているのであれば、後は速度が出ていると脅威だが」


 隕石の脅威は何よりその速度である。

 鉄でできていれば当然重いのは当たり前で、極端な話、それが都心部に直撃すれば、その被害総額が計り知れないことに疑う余地はないだろう。


「それで、高志たちに見せる前に私のところに来たということは、何か、気になるところがあるということか?」

「そういうことだ。来夏も『悪魔の瞳(ラプラス・アイズ)』があるけど、あれってどこに何があるのかを判断するスキルであって、アステルみたいにそこにあるものを理解できるわけじゃないからな」

「なるほど」

「まあとりあえず見に行くか」

「ああ」


 秀星とアステルはその隕石を見に行くことに。

 ユニハーズの拠点から離れたところに安置したそれは、確かに直径が十メートルほどの物体だった。

 ただ、その色は紫色でかなり毒々しい。


「……見たこともない色の鉄だな」

「だろ?」

「それに加えて、何故外においているんだ?」

「あー……これな、たぶん発信機なんだよ」

「発信機?」

「ああ。すごく特殊な波長の魔力が漏れ出てるんだ。きっと、遠くからその魔力を感知するときにやりやすくするためだと思うんだが……」

「ふむ……確かに、あまり見たことが無い質だな。しかも、よく見ると自然界によく見られるパターンだが……」

「そこが問題なんだよな。さらに大きなものを宇宙から呼び寄せるためにあるのかもしれないし」


 ここで、アステルがとあることに気が付いた。


「……そもそも秀星は私の疑問を無視していないか?なぜ発信機なら外においておく?」

「点在することが普通の物体もある。これもその一つだ。こういった隕石とかは、なかったら逆に不審に思うものもいるってわけ」

「なるほど、あるところを探しに来るのではなく、あらかじめばらまいておいて、見つけられなくなったら探しに来る。ということか」

「そういう理由で外に出してる」


 敵の目的に沿った対応が必要である。


「それに加えて、この隕石そのものに自走機能があるな。それに、かなり雑だが、範囲に特化した感知・鑑定の機能も持っている」

「この隕石型発振器を動かし、そして止まった場所で何かをする存在がいる。ということか。しかし、宇宙からか……こうなると、想定することが無駄だな」

「ああ、ただ、科学的な要素が一切ないから、文明種ではないな。あと、宇宙で動くゆえに圧倒的な速度、または転移能力がある。あと、『理由は不明だが地球が選ばれた』ということだな」

「冷静に見ればそれくらいの情報があるわけか」

「まあ、この辺りは慣れだ」

「レベルの高い慣れだな」

「いつものことだ」

「そういうことにしておこう」


 で。この隕石をどうするのか。ということに関しては、ひとまず放置でいいだろう。


「まあ、とりあえず父さんに報告だな。どう扱えばいいのかなんてわからんし」


 宇宙、または別の次元というと、世界樹を狙って神獣をいくつも解き放ってきたオリディアも該当するが、こちらに関しては、秀星の方に神獣たちに関する知識があったからである。

 神が使う魔力、プライオリウムが検出されないので神獣ではなさそうだ。

 ただそうなると、誰が相手なのかわからない。


「まあ、仕方ないか。わからんことにとらわれてても仕方ないし」

「そうだな」


 単純に情報不足である。


「まあ、この発信機に何かあったらわかるようにはしておくか」

「まあ向こうも、隕石の衝突を勘で察知するような化物が控えているとは思わないだろうし」

「いや、化物でももう少し常識があると思うけど」

「自覚あるのか?」

「こう見えて客観的な判断は意外とできる。やらないだけで」


 そもそも秀星は、『常識を鑑定し、知識として認識できる』のだ。

 時々見かける『やっちゃいました?系』にはならないのだ。

 どっちかというと『やっちまったぜ!テヘペロ♪(確信犯)系』である。

 ウザさはともかく迷惑さにあまり差はないだろう。

 結果的に周りが疲れることに変わりはない。


「親が親なら子も子か」

「そう思うだけで納得してるアステルって結構疲れてるんだな」

「当たり前だろ。リーダーがあのポンコツだぞ。どれだけ苦労してると思ってるんだ」


 影でポンコツ呼ばわりされる高志。

 不憫ではなく自業自得である。


「さて、とりあえずそろそろ母さんの交渉も終わった頃だろうし、戻るよ」

「ああ。いってらっしゃい」


 というわけで、秀星は高志たちのところに転移していった。


「さて、私もノルマをこなしておくか」


 高志たちが市場に行っている間も、ユニハーズにはノルマは当然ある。

 特に戦闘メンバーはそのノルマも多いのだ。

 ユニハーズの中でも実力で言えば上から数えるくらい強いアステルだが、あまり時間無駄にできないのである。

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