第四百七十一話
「フフフ。皆さん、いつも通りですねえ」
沙羅は呟いた。
彼女がいるのはロビーである。
基本的にそれぞれにやることがあるのがユニハーズだが、そもそも沙羅はユニハーズ所属ではない。
では、普段は拠点の中で何をしているのかと言うと、基本的にはゆったりまったりしている。
本を読んだり動画をみたり、時々高志に制裁を行ったり、そんな日常である。
「うー!」
「まー!」
沙耶と晶の声が耳に入ってきたので見ていると、二人が格闘ゲームをやっていた。
コントローラーをガチャガチャしながらキャラを精いっぱい動かしている。
ほほえましいというよりはなかなか不思議な光景である。
まあ、とり上げても別の遊びをやりだすだろうし、考えても無駄だが。
「……まだ生まれて間もない赤ん坊のはずなのですが……なぜこうなったのでしょうね」
こうして普通にコントローラーをガチャガチャしながら格ゲーをしていることに対して、別に不安もなければ追求しようと思うこともない。
だが、疑問がないかと言われればそう言うわけではない。
というか、まだ晶は生後間もない。
そして沙耶の方だって、一歳は超えていても二歳は超えていない。
そのような年齢で、ここまで自由にやっていて不思議に思うなと言うのが無茶である。
「……まあ、細かいことはいいとしましょうか。どのみち答えは出ませんし」
この『答えが出なさそうなことは大体後回し』という判断方法だが、ユニハーズに取っても剣の精鋭に取ってもめずらしいことではない。
考えるべきだと思った時は大体、勘のいい来夏や高志が思いつくので、結果的に問題ではなくなると言う部分がある。
「さてと、私もそろそろ彼女たちをどうするか決めた方がいいですね」
沙羅としても、これからどうするかを決める必要がある。
そもそも、今回ユニハーズと剣の精鋭が集まったのは偶然に近い。
高志と来夏の計画性はほぼ感覚に近い。
そのため、沙羅としても見極める必要がある。
実際に剣の精鋭のメンバーを見る限り、悪くはなかった。
「鑑定に関するスキルを持っているものがトップに立っていると、こうして考える方も面倒ですね」
その人物にしか見えない、分からないものを持っていて、それに惹かれて仲間にするというのが普通の流れだろう。
別にそれは構わないし、仲間を募るのならそれがきっと一番分かりやすいとも思うのだが、他の知識枠の仲間が思ったより困るのだ。
そう言う部分もあって、『基本は勘に頼る鑑定スキル持ち』というものが集めた仲間と言うのは測るのも面倒だ。
しかも、全員でそれが十三人。というか自分のお腹から生まれた子供が二人いる。
「諸星来夏……思っていたより厄介ですね。これからは、もう少し評価を上げる必要があるかもしれませんね」
沙羅はそんなことを呟いた後、赤ん坊の格ゲーを見守るのだった。
ちなみに、勝っているのは晶の方だが、戦績はほぼ五分である。




