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第四百六十八話

「フッフッフ!さあ、私の強さを思い知るがいいのじゃ!」


 ワンピースを着た外見が十歳程度の幼女が、魔力の塊をモンスターにぶつけて圧殺する。

 なんともあれな絵面だが、ユニハーズではあまり珍しいことではない。


「おお!すごいです~!」


 そしてそれを見て喜ぶ美咲。

 喜ぶ、と言うことは即ち『普段から見ているわけではない』ということでもある。

 言いかえるなら、『剣の精鋭としてもそこまで見るようなものではない』ということだ。

 ただ美咲の場合、秀星や基樹のような高出力の攻撃手段を持っている奴が行くような戦場にはそもそもいかないということもあるのだが。

 小学六年生。十二歳の少女である美咲にとっても、『乱暴な物量』で敵を倒すのは爽快感溢れるもの……多分。

 そもそも、虎の上で槍を振り回す美咲は、『圧倒的な物量』と言うものが出せないのである。


「フニャァ……」


 まだ出番のないポチ。

 その視線は圧殺されたドラゴンに向けられている。

 人間と同レベルの知恵を有するモンスターは思ったより多い。

 そして、そんなモンスターであるポチは思うのだ。


(自分に、人間の味方をする知恵があってよかった)


 もちろん、モンスターが人間を殺したケースがないわけではない。

 そもそも、きちんと訓練を受けてない人間は、猿に勝てるだろうか。

 訓練を受けてない人間が、武器と知恵を持ったゴブリンを倒せるだろうか。

 まあ無理な話である。

 倒せないことが死に直結するわけではないので、逃げることくらいはできるだろう。

 偶然、そのゴブリンたちが遠距離武器を持っていなければ。と言う条件付きだが。


 説明しておいてなんだが、そう言う生々しい部分はどうでもいい。

 剣の精鋭のメンバーは強く、そしてユニハーズのメンバーも強い。

 人間が持っている実力が大きすぎるのだ。

 そう言う環境だと、モンスターは単なる資源である。

 モンスター側でいると、『いずれ狩られる側』となってしまう。

 だからこそ、人間側につくことで、『普段は狩る側』に立てる。

 そう、思ってしまうのだ。


「そういえば、標さんはどうやって大量の魔力を集めてるですか?」


 美咲はそう聞いた。

 魔力というのは基本的に体内で生成されたものを使う。

 しかし、中には外部の魔力を直接使ったり、外部の魔力を体内に取り込んで使うものもいる。

 美咲は標を見ていて、外部から取り込んで使っていると判断した。

 ただ、空気中からえているようには見えなかったのだ。


「フフフ。外部から取り込んでおるとよく気がついたのう。答えを言うとな。『ゴミ』じゃよ」

「ゴミ?」

「種類は問わず、ゴミを魔力に分解して使うことができる。外部から魔力を取り込むときはそうしておるんじゃ。ゴミの処理も一緒にできて一石二鳥じゃよ」


 幼女がゴミを魔力にして体内に取り込む。

 これもまたすごい絵面である。


「おおっ!凄いです!」

「若い頃は『ゴミ魔法使い』と蔑称じゃったが、ポテンシャルはすごいぞ。世界中のゴミ問題を解決できるレベルの話じゃからな。しかも、燃やすこともなく完全に魔力に変換できる故に、他の魔法具を使うための魔力として使い回すことができるんじゃぞ!」

「すごいです〜!」


 小六の割に賢いのでなんとなく理解している様子の美咲。

 しかし、やはりなんとなくだろう。

 『世界中のゴミを環境に影響なくしないように完全に分解し、魔法具のために魔力として再利用する』

 これがどれほど文明社会にとって革新的なことなのか、美咲も標も分かっていないのだ。


「さて、ドントコ進むぞ!」

「はいです!(……どんとこってなんです?)」


 とはいえ、やはりというか、自称九十二歳と実年齢十二歳では、伝わりにくい部分があるのだった。

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