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第四百六十話

 結果的に、母親から聞いて場所を特定した秀星。

 ただ、最近は沙羅も方向音痴が入るので、一発目の情報は大して信用はせず、後で訂正してくる情報を信用することにして、秀星たちは森の中を進んだ。


「……なんだか、モンスターはいないけど、植物の中にもすごく気になるものがあるわね」


 千春は拾った草などを見ながらそんなことを言った。


「頑張って植えました」

「……」


 歩いている一行の中に『え、人力?』という空気が流れた。

 のだが、まあ、この男の場合、言っていることは事実だろう。そう考えるのが身のためである。


「まあそもそも、使えない理由もあるんだよ。モンスターの中には『文明』を嫌う奴もいるからな」


 基樹がそういった。


「文明が嫌いって……どういうこと?」


 雫が首をかしげるが、これに関しては他にもわからない人はいるだろう。


「まあ簡単に言えば、文明が発展すると都合の悪いモンスターがいるんだろ。文明となると、必ずと行っていいほど『火』と『刃物』がついてくる」


 科学は基本的に、その二つが最初だ。

 特に刃物は必須だろう。ありとあらゆるサバイバル本には、ナイフの存在があるくらいだ。

 ただ、魔法があるとなれば、『単なる燃焼中の気体』である火は、魔法にとっては基礎の基礎である。

 ファンタジーを軸にしている異世界、グリモアでは、『科学の根本が刃物』『魔法の根本は火』とすら言われるほどだ。


「種族の特性上、火炎耐性や斬撃耐性を取得できないモンスターにとって、文明の発展は容認できないことだ。モンスターの中にも火や刃物を使う奴はいるが、人間を始めとした『文明種』は、科学と魔法を使って活動範囲を広げている場合が多いから嫌になる。モンスターは基本的に、遠く離れたエリアまで行くような大移動はしないものだからな」


 基樹が補足した。

 その異世界で魔王だった彼が言うと説得力がある。


「まあとにかく、そういった文明を見ると、それを集中的に破壊しようとするモンスターは多いってことだ」

「がっちり固めた拠点ならともかく、地上での活動で文明が適さない場所はある。ここもその一つってわけだ」

「へぇ〜そうだったんですね」


 反応したのは美奈だった。

 基樹が呆れたような表情になっている。

 ……美奈もこのあたりで活動していたことがあったはずだが、どうやらその理由は全くわかっていなかったようだ。


「ふむふむ、なるほどね……じゃあ、その文明を集中的に狙ってくるモンスターがいる中に、大型の拠点まで作って調査している理由は何なの?あと、頑張って植えたって言ってたけど、それって、森を人工的に作る必要があったってことだよね。その理由もわかんないかな」


 雫が珍しく勘のいいことを言った。

 高志が答える。


「遺跡があるんだよ。このあたりにな。まあ、今では普通にダンジョンなんだが、内部がほとんど破壊されていなかったんだ。この島にはそうした遺跡がいくつかある。その調査に来てるってわけだ。まあ、誰かに頼まれたわけでもなく、単にしりたいっていう自己満足だけどな」


 高志はそう言うが、あくびをしているので、ぶっちゃけ遺跡そのものに興味があるわけではないようだ。


「そうだったんですか?私は、奥にいるボスモンスターを倒すことくらいしか考えていないと思ってたんですけど」

「まあ、俺個人で言えばそうなんだけどな」

「結構血迷ったこともしてますよね。『耐久度チェーーーック!』っていいながら壁を粉砕したりしていましたし」

「なんで遺跡調査にそんなの連れて行くんだ……」


 遺跡調査なのに、遺跡で壁を粉砕する。

 意味不明である。


「安心しろ。だいたい隠し通路に通じてるから……確率は二割を切るけど」

「……」


 とりあえず、全員が思った。

 『かなり使いにくい人材だなコイツ』と。


「で、森はなんで作ったんだ?」

「そっちはただのガーデニングだ。俺は興味ないんだけどな」


 まとまりがなさそうな空気が尋常ではない。

 が、ここまで来たら行くしかないのである。

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