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第四百五十九話

「フフフ……こうして全員がそろってどこかに行くってのも久しぶりだな!」


 衣替えの季節になって全員が夏服になってきた今日この頃。

 秀星たち『剣の精鋭』は、来夏の独断により決定した合宿のため、とあるビルの屋上にいた。


 集まったメンバーを一度振り返ろう。


 来夏 アレシア 羽計 優奈 美咲 の初期組

 秀星 風香 千春 雫 エイミー  の前期追加組

 基樹 美奈 天理         の後期追加組


 という内容となっており、十三人だ。

 あえてカウントしていないが、美咲が胸に抱いている虎であるポチとか、何故か来夏が肩車している沙耶がいたりするのだが、この一人と一匹に関しては、実際に『剣の精鋭』の公式名簿に記載されているわけではないので問題はないとする。

 ちなみに、全員が来夏の性格を何となく把握しているので、『常に一泊二日が問題なくできる程度の準備』を怠ることはないのだ。人間、『不の信用』からくる信頼と言うものは大きいものである。


「なんでビルの上?」


 沖野宮高校とジュピター・スクールの中間にありそうなビルの上。

 そもそもここに来ることを知ったのがついさっきと言うこともあり、何をするのかを大まかに把握しているのが秀星で、決めている様で何も決めていないのが来夏だ。


 要するに『枠はあるけどほぼノープラン』と言う状態である。

 正直なところ、正気の沙汰ではないが、これが諸星来夏というゴリラである。

 だが、ビルの上というのは意味不明だった。ヘリポートもないし。


「いやまあ、高志に聞いたらここにいてくれっていわれたからな」

「だろうな。大体、俺達は転移で来るから。必然的にそうなる」

「この人数なら、お母さんは一度に転送できますからね」


 基樹と美奈がいうにはそういうことらしい。

 とはいえ、秀星もそんなことだろうと思っていた。

 秀星は一度行っているのでわかるが、あまり位置を知られるとまずい事情がいくつかある。

 送り迎えをするのは高志ではなく、沙羅のほうだということは秀星も予想していた。


 ちなみに、そういう事情であれば移動は転送魔法になるわけだが、秀星は『転移・転送耐性』を普段から使っている。

 数ある耐性の一つなのだが、沙羅の転送魔法はこれを突破してくるので別に解除する必要はない。


「……なるほど、要するに合宿か」

「そうだ!オレたちはたしかに強いが、個人での強さであって、集団としての連携は疎いからな。それを鍛えるために、こうしてレベルの高い環境に行くことで、その大切さを……」


 セリフの途中ではあるが、転移が開始した。

 合宿開始である。


 ★


「やあやあ諸君。遠路はるばるご苦労さま!あれ、来夏、なんで沈んでるんだ?」


 転移した先は山の上。

 そしてそこにはいつもどおりのバキバキの白装束を身に纏った高志が立っていた。

 それはそれとして、来夏が地面にのの字を書いている。

 沙耶が頭をポンポンと叩いているが、慰めているのか、それとも他に意味があるのかは分からない。


「単純にセリフ半ばで転移させられたからだ」

「あ、そりゃサーセン。でまあ、これから俺たちのアジトに案内するぜ!地下にあるからこっからは見えねえけどな!」

「……高志さんは方向音痴だと聞いたことがあるんですけど」

「よく知ってるじゃないか」


 千春に言われて即答する高志だが、せめて否定してくれ。フォローしたほうがいいかと一瞬考えた自分が恨めしくなる。


「まあ、このあたりはいろいろ間引きしてるし、問題ねえって」

「たどり着けなかったら本末転倒なのでは?」


 アレシアの言い分は最もだが、この男に任せると本気で迷いかねない。

 そしておそらく、来夏のスキルでも見えない位置にあるはずだ。


「はぁ、道は覚えてるから、俺が先導する。それでいいだろ?」


 基樹がそういった。


「あ。場所変えたから多分違うぞ」

「アンタは俺がかっこつけてるのを潰しに来てんの?」

「そんなことはないさ。まあ、ちょっと移動させただけだからな」

「え、あれって地下三百メートルまであったよな。移動なんてできんの?」

「何を言ってるんだ。母さんならそれくらいは楽勝だ。ちょっと転送先の穴を掘るのが地獄だっただけで」


 そりゃそうだろうね。サンドボックス型ゲームの露天掘りじゃないんだし。

 サンドボックス型のゲームだと、多分地下三百メートルまで掘れるものがないと思うのだが。


「それって、その転移先の土の範囲を設定して、転送を使ってくり抜けばいいと思うんですけど……」


 風香がそういった。

 その発想を即座にできるのはいいことである。


「フッフッフ……俺、穴ほったあと頼みに行ったんだよ。母さんに同じこと言われた」


 ざまぁ!

 秀星は盛大に無駄なことをした父親に対して内心歓喜する。

 しかも不幸を喜ぶ形で。


「まあとにかく、こういうのはこれで決めるぞ!」


 高志は八面サイコロを取り出した。


「……なんで八面?」

「東西南北を決めるんだから、八方向を設定できるサイコロを持ってくるのが基本だろ?」

「……6と8の最小公倍数は24なので、六面サイコロを4回振って出た数字を合計して3で割って、小数点以下を四捨五入すればいいと思うです」

「……なあ秀星。この虎を抱えた嬢ちゃんは何を言ってるんだ?」

「説明するだけ無駄だからしません」


 小六の美咲よりも馬鹿だった。


 とはいえ、ここには八面ダイスがあることは事実。

 秀星は高志がサイコロを振っている間に、母親に電話することにした。

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