第四百五十五話
「そう言えば、結局ごちゃっとしたまま終わったけど、バトルロイヤルとか、記者とか、そう言った部分ってどうなったんだ?」
宗一郎や聡子が記者を相手にしていたりしている中、秀星は損壊した建物の修復に奔走していた。
もちろん、秀星が持っている神器を考えれば、修復に必要な時間は本来なら一瞬なわけだが、特にビルが意味不明なことになっていた。
来夏が大剣でギコギコしたり、高志がもぎ取ったりとギャグ補正全開だったためか、空間そのものに負荷がかかっていて、単純に建て直しただけでは再利用不可能だったのだ。
OESという秀星が普段から身近に考えている概念とはほぼ別の方式で壊されているので、直すにしてもそれ相応に時間がかかったのである。
そのため、秀星はそもそも学校にあまりいなかったのだ。
ちなみにもぎ取られて積み上げられていたビルに関しては(この時点で頭がおかしいのだが、高志と来夏なので秀星は考えることを放棄している)、鑑定してもなんだかとてもマズいことになっているだけだったので、全て保存箱にぶち込んだ。
保存箱の中であればきちんと整理されるから、ということもあるが、まとめて魔力に分解するにしても、バラバラにしてどこかに捨てるにしても、はた目から見ていてインパクトが強すぎる。
……積み上げられたビルが収納されたという時点でインパクトは抜群なのだが、さすがにそこまで考えていると何もできないのでスルー。
そういうわけで、負荷がかかっていた空間を直してビルを再度組み立てて、積み上げられていた方に関しては保存箱の中に放り込んだ。というわけだ。
さすがにそんなことをしていたら、学校の方に戻る暇はあまりなかったので、元々行われていたものや、訪れていた人達がどうなったのかを聞くことにしたわけである。
「バトルロイヤルは引き分けだ。結果的に、衝撃で思いっきりぶっ壊れたんだから、要するにお互いに激突して生成装置が壊れたんだろう。引き分けに決まっている」
「なるほどな」
「というか、最終的にサイコロとかでどうにかならんのか?」
「……」
秀星は宗一郎にサイコロを渡した。
「……投げろと言うことか?」
「ああ。6が出るぞ」
「?」
意味が分かっていない様子の宗一郎。
近くのテーブルに投げる。
すると、6が出た。
「……は?」
「もともと、サイコロって立方体から削るように作ってるからさ、削られている部分が大きい6と、削られている部分が小さい1だと、1の方に重心が偏って6が出やすいんだ」
「……だが、それだけではないだろう」
「それだけじゃないが、それも重要だ。まああとは、頭の中にある心理学とか、物理法則とか、そういったものをいろいろ引っ張り出して、『こいつはこういう『気分』でこういう『力』で、こういう『投げ方』をするんだろうな』って言う推測まで出来る。それを可能とする頭脳と感覚神経をお互いに持ってるわけだから、投げる前にそもそも『乱数』にならないんだよ」
サイコロやコイントスが『乱数』であるとほぼ保障されている理由は、『投げようとする段階』では、普通の人間の力では結果まで推測することが不可能だからだ。
しかし、どういった投げ方をするのかは心理学で、投げた先がどうなるのかは物理学ですべてわかる。
特に、サイコロを投げた後。
こちらは本当に投げただけなのだから、魔法的な要素は一切かからない。純粋な物理学を適用出来るため外しようがないのだ。
「とまぁ、こんな感じで、お互いに保証しあえる『ランダム』をお互いに提案できなかった結果、ぶつかり合って装置がぶっ壊れた。というわけだ」
「……」
宗一郎は頭を抱えた。
「まあ、その話はおいておこう。記者の話だが、バトルロイヤルを見に来ていた奴はその映像を持って帰った。襲撃に関してなんだが、一応撮れている部分もあるんだが、そのほとんどが月下同盟のほうだった」
「あー……弱いやつのほうね」
「そうだ。特に苦労することなく捕らえたからな。やらせとしか思えないほどすんなり終わったから、その映像を使っても緊迫感はあまりないだろう」
「だよな」
「アーク・テーゼも頑張ったほうなんだが、あの二人とシャカシャカとお手玉で半壊してたから、しっかり準備してたのに大したことなく終わったし」
「……ダメだこりゃ」
「結論としてはそれに尽きる」
締まらない。
本当に締まらない。
犯罪組織の皆さん。もうちょっと頑張って!




