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第四百四十七話

 さて、バトルロイヤルは『暫定引き分け』ということにしておくとした。

 秀星も基樹も、あの生成された空間では決着がつかないことは理解しているし、そもそも、バトルロイヤルを行うこと、そしてそれを生成された空間の中で行うことを決めたのは聡子なのだ。

 どこか、このような襲撃が来るようなことを予測していた可能性は非常に高い。


「さーて、どこから行けばいいんだか……なんで父さんたちは酒盛りを始めてるんだ?」


 基樹と一緒に生成空間から出てきた秀星。

 あたりを見渡してどこから行こうかと考えていたとき、こんな襲撃時でも営業しているたくましい居酒屋で酒盛りを始めている父親を発見。

 とはいえ、どうでもいいと思うことにした。

 理解というのは尊い言葉なので、あのバカたちに使ってやれるほど安くはない。


「まあおいておくか。基樹。俺はどのあたりに行けばいいと思う?」

「全部」

「雑な回答をどうも。提案どおりにできるけどやったほうがいいか?」

「好きにしろよ。俺はお前相手にバトって疲れてるんだ」


 沖野宮高校の校舎の上でダラッとし始める基樹。

 どうやらおやすみモードに入るようだ。


「まあそういうことなら、とりあえず手薄になっているところから行きますかね。ただ、特別強いのがいるなぁ。大体アトムくらいか?最終的にはあのフードを着た二人組のところに行くか」


 そういうと、秀星は転移魔法を使ってその場から移動した。

 沖野宮高校の屋上に残された基樹は夢の中である。


 ★


「ほーい、お邪魔しまーす」


 襲撃犯を蹴り飛ばして檻の中にブチ込む秀星。

 かなり問答無用である。


「あ、朝森先輩!?もう来たんですか!?」


 で、その襲撃犯を相手していた沖野宮高校の女子生徒が驚く。

 一年生のようだが、新入生でも戦場に出されているところを見ると、なんだかかなり闇を感じる。


「……その言い方だと、俺が出てくるのが遅い予定だったみたいな言い方だな」

「あ、はい。ジュピター・スクールの生徒会長がそう言ってました」

「……なるほど」


 まだなにか隠しているようだ。

 とはいえ、それを聞き出そうとは思わない。

 別に苦労する相手じゃないからだ。


「で、それなりに戦ったみたいだな」


 秀星は回復魔法を使って、女子生徒の傷を完全に直した。

 ついでに制服の破れていた部分も修復する。


「うわっ!えっ!?す、すごい……」

「まあこのくらいはな。んじゃ、俺は次のところに行くから」

「え?」

「ちょっとね。君みたいにやばいことになってるのはここだけじゃないからな」


 秀星は思いっきり跳躍して、近くの建物の上に行った。

 ボーっとしている女子生徒はそのまま放置である。

 ちなみに襲撃犯を入れた檻はセフィアが管理しているところである。


「なーんか。向こうのほうで爆発が……あそこは後回しだな。宗一郎が暴れてるだけだし」


 もっとも、優勢かどうかはまた別だが。


「……父さんが黙ってんだし、まだ何とかなるってことだろうな。というか、本当にあいつら、どこから来たんだか……」


 秀星はそう思った。

 常日頃からいろいろなところに行っているが、襲撃してきている二つの組織は、秀星が全く知らない組織だった。

 もちろん、秀星だってすべてを知っているわけではないのだが、だからと言って気にならないわけではない。

 目的はわかっている。

 図書館や空間生成装置といった、まあそれらしいものだ。

 ……ちなみに、空間生成装置は結局壊したわけだが。


「ただの神器使いじゃなさそうだ」


 秀星はそうつぶやいた後、その爆発音が響いている戦場に向かって、マシニクルの弾丸を発砲。

 自動追尾なのか、まっすぐは飛ばずに曲がっている。


「……さて、とりあえず他からやるか、あと少し時間を稼ぐくらいはするだろ?俺と同じで、遊びたがるような奴が多そうだし」


 秀星はそういうと、次の手薄になっている部分に向かって転移していった。

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