表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

439/1408

第四百三十九話

 一応補足するが、今回のバトルロイヤルは『急に決まったこと』である。

 それに加えて、基本的に魔戦士はモンスターを相手にするのが生業である。


 予備的なアイテムがモンスターとの戦闘に特化している生徒達もいるわけで、あらかじめバトルロイヤルを行おうとしていた聡子も、連れてくるメンバーを対人特化にしているわけではない。

 結果的に、芋っておいて最終的にカウントされることを選択する生徒は多い。

 彼らは自分の現在位置を知るためのアイテムも、残り人数を確認するアイテムも持っていないのだ。


 全員で六十人のため、思ったより広くはない。

 芋ることが出来る地点もそう多くはないので、隠れようとして遭遇戦になることはある。

 もちろん、隠れる気が無いものもいる訳だ。


 そして、その隠れる気が無い者の筆頭が秀星である。


「かなり、戦闘が収まってきたな。というか、戦闘力で言うと上位に食い込みそうな『剣の精鋭』のメンバーでも、隠れている奴がかなり多いっていうのがな……」

「そうですね。ただ、戦闘音というのはなかなかバカにできない情報ですから、それも仕方のないことなのでは?」

「それはそうだが……ていうか、そう考えると俺に向かってくる生徒がそれなりに多いよな」

「そうですね」


 セフィアは無表情で答えるが、秀星が知らない特殊ルールがあるのだ。

 簡単に言えば、『秀星が退場した場合、ジュピター・スクール側の生存カウントが三十増える』と言うものである。

 それぞれの高校から選出されている生徒は三十人しかいないのだから、秀星が負けた場合、沖野宮高校の強制敗北である。


 このルールはバトルロイヤル開始前、秀星以外のすべての生徒に通達されている。

 そもそも提案したのは宗一郎の方からだ。

 ジュピター・スクールにも初等部や中等部もあるので、下の学年であっても秀星を知るものは多いが、魔法社会が表に出てきたことで、メイガスフロントにも元々魔法社会に関わっていなかった『才能や素質だけで入学させたもの』が何人か存在する。

 しかも編入までいろいろやってねじ込んだので、秀星よりも年上だが秀星のことをほとんど知らない場合が多い。

 そう言った下級生の鼻っ柱をわかりやすく折るために、このルールは採用された。


 もうひとつ言えば、このルール、実は秀星以外の生徒全員がそろっている場所で宗一郎が言ったことだ。

 それに対する沖野宮高校の生徒の反応は、『まあいいんじゃね?』といった超余裕の雰囲気だった。

 これに対して、秀星のことを知らない生徒は憤慨する。

 そういったこともあって、ジュピター・スクールの生徒の中には秀星を狙うものもいる訳だ。


「……ていうかさ。何か全員が、『一発限り』とか、そういう弾数制限がありそうな切り札ばっかり使って来るんだよな。まあ、『それを改良してより使いやすくした技術で攻撃をする』っていう遊びをしてるから別にいいんだけど」


 言っていることがめちゃくちゃだが、神器を十個持ち、さらにこの世にいるなかで『真理』に近い知識を持っている秀星からすれば、魔法技術において『誰かにできることは自分にもできる』というのが普通である。

 ジュピター・スクール側の生徒で秀星を知らなかったとしても、だからと言って弱いわけではない。

 もちろん、彼らは『理不尽』と言うものを知らないわけだから、驕るだろうし、自らを主人公だと思いこむ。

 だが、秀星はもっと強い。

 それだけのことである。


「あ、誰か来た」


 現在、ビルの屋上を使っている秀星。

 もちろん、ジュピター・スクールの生徒の攻撃のたびに破損するわけだが、その都度秀星が直している。

 そのため、誰も来ていないのではないかと思えるほどピカピカである。

 それはいいとして、ジュピター・スクールの生徒が来たようだ。


(鑑定……ふーん。中学一年の男子生徒で、相手が考えていることが分かるスキルか)


 強い能力だ。

 が、彼は混乱しているだろう。

 秀星が何を考えているのか、横にいるセフィアが何を考えているのか、さっぱりわからないのだから。


「思考看破対策くらい普通だぞ新入生」


 ちなみに、その生徒が実際に秀星の視界にいる訳ではない。

 一回だけチラ見してきたが、そこからは屋上の床の端、柵もついていない危険な場所で何かをたくらんでいる。

 屋上に出入りするための階段がある部屋を影にしているので、秀星の方からは見えていない。


「あと、思考が読めるっていうのは別に、メリットじゃないぞ」


 次の瞬間だった。

 その屋上に出入りするための部屋の向こうから悲鳴が聞こえてきた。

 動揺したような足音や『ガタッ』という音も聞こえてきたので、おそらく転落しているのだろう。


「……秀星様、一体何を考えたのですか?」

「あの部屋の向こう見てきな」


 セフィアが見にいった。

 そしてすぐに帰って来る。


「血が流れていました」

「まあそりゃそうだろうな。すごくエロいことを考えただけだもん」

「中学一年生に対してなんて教育の悪いことを……ちなみにジャンルは?」

「輪姦で大人のオモチャ有り」

「かわいそうに……」

「向こうが初心だっただけです」


 とまぁ、時々こんなことをして遊んでいるわけだ。

 性格の悪い世界一位である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ