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第四百三十一話

「……一時はどうなるかと思いました」

「あれには正直驚いたな……」


 ホッとした様子で椅子に座る聡子と、奏の様子を思い出して苦笑する基樹。

 沖野宮高校の開けている教室の一つで作戦会議だ。

 結果的に作戦が『サーチ・アンド・デストロイ』になるような気がしなくもないメンバーだが、追求したところで結果は変わらないだろう。

 そのため、作戦会議と言っているが雑談タイムになっている。


「あんなに泣き出すなんて初めてだったもんな……」

「そうですね」


 人間というのは羞恥心がある。

 人前で泣くというのは中々できないことなのだ。

 そのため、涙腺がゆるんでいようと、まずはそれを耐えようとする。

 だが、奏にはそれがなかった。

 結果的に、人前であんなに泣くことになったのである。


「秀星が記者のカメラを止めてなかったらヤバかったわね……」

「そうですね。まあ、聡子さんは母性が強いので、話をしっかりすればいいのですが、あそこまでとなると……」


 優奈とアレシアにとっても、奏は印象的である。

 剣の精鋭メンバーは基本的に図太いので、こういった場面があまりなかった。


「とりあえず、これ以上これに触れるのは良くないと思うです。バトルロイヤルということですが、どういった作戦にするですか?」

「ふにゃ〜」


 美咲が手を上げて発言。

 その胸に抱かれているポチが反応するが、まあ深い意味はないだろう。


「基本的には遭遇次第ですね。お兄ちゃんの配置によりますよ」

「どんなにこっちが本気を出してもあまり意味がないからね……向こうの生徒会長もすごそうだけど」


 美奈としては、とりあえず秀星の位置が気になる。

 倒すのがほぼ不可能とすれば、周りからの情報を遮断しやすい妨害系と、攻撃を受け流せる回避型を軸にして、とにかく時間を稼ぐことが重要だ。

 千春としては、秀星がどの程度の出力を出してくるのかが気になるようだが。


 今回のバトルロイヤルは制限時間が設けられており、最後に立っている人数で勝敗を決めることになっている。

 殲滅戦にしてしまうと秀星を倒せないので必然的にそうなる。


「ふむ、向こうの生徒会長は宗一郎という名だったか。確か『戦術的最強』という話を聞いたことがある」

「一つの戦闘の勝敗を左右できる。という認識です。秀星さんがどれくらい遊んでくれるのか。ここが肝だと思うです」

「フニャ〜」


 総合的に言ってしまうと、『秀星まじでどうすりゃええねん』となるのだ。


「そういえば、生徒会長の神器は効かないのか?」

「効くかどうかとなれば効くと思いますが、大体、実力が百分の一になるくらいなのですよ。もともと戦闘系ではないですからね。百分の一だったとしても、私では秀星さんには勝てませんよ」

「あ、百分の一でもそうなっちゃうんだ……」


 強すぎである。


「となると、秀星君を抑えるのは……」


 全員の視線が基樹の元に集まった。


「……いや、まあ、わかってなかったわけじゃないんだが……あーチクショウ……わかったよ。俺がなんとか抑える。というより、俺が出ればそれ相応に秀星も遊びだすだろうからな」

「ふむ、それでは私は宗一郎さんを抑えましょうか。彼ならまだなんとかなりそうですし」


 ひどい評価の差である。


「まあでも結局は『臨機応変』になるのよね」

「千春さん。それは前提ですよ」


 ジュピター・スクール側では、『もうこれどうしよっかなぁ……』という空気が終始溢れていた。

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