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第四百二十八話

「……秀星」

「どしたの?」

「高志と来夏がつまみ出されたようだ」

「そうか」

「ただ、あの二人が暴れて一々素材を回収していたのは間違いないからな。全部換金したところ……私が同じ時間潜った時の百倍以上の金額になったそうだ」

「宗一郎ってダンジョンの中では常に神器使ってるよな」

「使っているぞ。誰かさんが暴れるせいで命を狙われるようになったからな。特に鉱物資源を売って成り立ってた多様な国から暗殺者が送られてきたりすることもある」

「撃退してるわけか」

「たまにハニートラップとかしかけてくるところもいるな」

「大変だな」

「ああ、大変だ」


 話を戻そう。


「で、あの二人がつまみ出されたわけか」

「わけなんだが、経済効果的な部分で考えるとすさまじいからな。このままどうにか交渉して働いてもらった方が輸出を増加して他国に勝てるんじゃないかって言う奴まで出始めてる」

「……ネット情報か?」

「それもそうだが、実際に政治家が来た」

「宗一郎って政治家に対応できたのか」

「まあこれくらいはな。記者も一緒に来てたからボロを出さないようにごまかして追っ払ったが」

「大変だな」

「全くだ。世界樹の商品を販売してるお前がいるから、既に『売り上げトップ10』の中に秀星はランクインしてるのに……」

「あれ、そんなランキングあったのか」

「だって秀星、超高額商品である世界樹の商品しか使ってなくて、しかもその売買データ隠さないだろ」

「だな。ぶっちゃけセフィア達に完全に任せてるから俺関係ないし。もともとセフィアがいれば大体の高額サービスは受けられるようなものだから、課税されて引っこ抜かれても関係ないし」


 言いかえるなら『今の人類に期待してない』ともいえるが。


「そうか、お前、買おうと思ったものはほぼただで自分でできるのか」

「最強だろ」

「無敵だな」


 さて、閑話休題。


「というわけで、つまみ出されたわけだが、その時に発生した金額が圧倒的過ぎて、迷惑かけたけど、明確な邪魔はしてないし、才能がある人がしっかり挑める環境にした方がいい。みたいな話が出てきてるってことだ」


 秀星としても別に悪いことだとは思っていない。

 そもそも、沖野宮高校周辺のダンジョンで暴れたからこうして他の生徒に迷惑がかかったというだけの話であり、過疎ダンジョンなら誰も来ないので当然迷惑などかからない。


「……アイツら遊んでただけだろ」

「そうだ。君の母親が二人をつまみ出した時、彼らの弁明は『地上だと狭いからダンジョンの中で思いっきり体を動かせる遊びをしていただけだ!』だからな。彼らは、モンスターを倒すためにダンジョンを使ったわけではなく、ただ遊び場を確保するためだけに入っただけで、モンスターが死んだのは遊びの余波に耐えきれなかっただけだからな」

「いろんな体力が有り余ってるな……」


 モンスターが、遊びの余波に耐えきれず死亡する。

 一体何をしていたのだろうか。


「まあいずれにせよ、彼らがこの数十分で稼いだそれらが叩きだした金額、そこにはいろいろな価値があると判断されたというわけだ。正直……私関係ないだろ」

「ないな」


 秀星本人に手を出せないと考えているところは一定数いるようだが、他はそうでもない。

 同じ学校、同じチームに属するものを交渉することでどうにかしようとしているわけだ。


「……ところで、秀星は公私を分ける方か?」

「公私か?都合よく分ける方だ」

「なるほど」


 悪い言い方をすれば『自分勝手』であり、良い言い方をすれば『融通が効く』である。


「近いうちに、ジュピター・スクールとの合同演習があってな。取材もめちゃくちゃ集まるらしい」

「ジュピター・スクール……基樹たちが通ってる学校か。あそこってセキュリティ硬いからな……こっち側に引っ張りだしてそのうちに取材するって魂胆か」

「だろうな。で、神出鬼没な来夏を含めれば、剣の精鋭が全員そろうだろ?」

「そうだったっけ?」


 秀星は『元勇者の天理ってジュピター・スクール在籍ではなかったような?』と思ったが、基樹たちのことを宗一郎はしっているはず。

 天理の方が転校したと言う可能性もあるので、その時分かるか、と思った。


「合同演習ねぇ……またイメージアップの神輿にでも使いたいわけか」

「おそらくそのようなものだろう。最も、想定外のことが起こるだろうから大幅な編集を必要とするロケになると思うがな」


 宗一郎が黒い笑みを浮かべている。


(疲れてるんだろうなぁ。しーらね)


 秀星も内心黒い笑みを浮かべているのだが、それは隠したうえで棚に上げた。

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