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第四百二十五話

 終始、高志の邪魔が入った。

 のだが、別に高志の言い分が間違っているわけではないし、秀星が余計な脱線をしそうになった時にそっと割り込んで止めてくれる時もあるので、確かにいろいろ考えてはいると思う。

 ただし、わざわざ人をイライラさせるやり方で割りこんでくるので非常にイライラする。


 『空気を読めるが、その読んだ空気を理解できない』という意味不明な思考回路なのだろう。あまり使わないような言葉ではあるが、実際のところこの父親は勘がいいのも事実である。

 授業は終了。若干滞っていた気がすごくするのだが、それはいいとしよう。秀星は疲れた。


「秀星!お前の親父が来たって本当か!」


 授業終了とともに、来夏が教室に入ってきた。

 ……バールで空間を割って。


「……まためんどくさいのが来た」

「リーダーに向かってひどくねえか?」


 そんなことはない。適正評価である。


「秀星の父親は俺だ!」


 高志が来夏の前に出た。

 そして高志は見上げた。


「あ、俺より背が高いんだな」


 秀星 百七十四センチ

 高志 百七十八センチ

 来夏 百八十五センチ


 である。

 来夏は高身長なのだ。


「ハハハ!よく言われるぜ」

「しかし、こりゃまたすげえな」


 『剣の精鋭』の制服であるロングコート姿でかなり大柄に見える来夏。

 ちなみに胸もでかい。

 ただ大柄といっても、水着姿だったりバスタオル姿だったりするとスタイル抜群に見えるそうだ。不思議である。


「しかし、頬の十字傷以外は秀星そっくりだな」

「だろ?秀星は俺に似たのさ!」


 死んでもいやだと思った秀星は薄情だろうか。


「とりあえず来夏」

「なんだ?」

「腕相撲しようぜ」

「おう!」


 秀星は気にせず教材を片付け始めた。

 が、完全に放置状態であるクラスメイト達は、来夏と高志の腕相撲がきになるようだ。

 ちなみにそれは同じく完全放置状態である保護者も同じである。


「というわけで秀星、教卓借りるぞ」

「ああ」


 とりあえず教卓においていたものを全部引っこ抜いた。

 そして、その机に肘をついて、腕を組む。

 秀星がちらっと視線を外すと、そこではセフィアがビデオカメラを構えており、オリディアがわくわくした表情で見ていた。


「あ、秀星。合図してくれ」

「始め」

「「うおおおおおおおおおりゃあああああああ」」


 即答する秀星に対して同時に腕が『ビキッ!』となってとんでもない力になっている。

 秀星はチョンチョンと腕をつかれたので振り向くと、風香だった。


「秀星君。どうなると思う?」

「机全壊で引き分け」

「あ、確かにあり得るね」


 そしてちらっと見ると……。


「「ふんぬうううううう!」」


 机がビキビキなっているが、二人は構わず続けている。


(……あ、机、ビキビキなってるだけでまったく傷が入ってない)


 いったいどういうことなのだろうか。

 と、考えた瞬間だった。


「どりゃ!」


 高志が一方的に押し勝って叩きつける。

 ……のはいいのだが、どうやらたたきつけるという行為には謎現象が働いていないようで、机がバラバラになった。

 当然のように飛び散る破片。

 秀星は指をパチンと鳴らして障壁を使って破片を止めた。


「よっしゃー!勝ったぞー!」

「チキショオオオオオオ!腕相撲で初めて負けたあああ!」


 来夏、今まで腕相撲で負けたことなかったのか。


「父さん。来夏。教卓は弁償な」

「「……はい」」


 教卓は文字通りばらばらであった。

 腕相撲でこうなるものなのだろうか。と思わなくもないが、そうなってしまったのだから仕方がない。弁償である。


「よし、じゃあ今度は鬼ごっこだ!」


 立ち直りの早いクソ親父である。


「「最初はグー。じゃんけんポン!」」


 来夏 グッドサイン

 高志 手で銃のようなものを作った。


「「あいこでしょ!」」


 先ほどのあれがあいこなのかはともかく。

 来夏 手刀

 高志 指切りげんまん


「よし、オレの勝ちだ!」


 どうやら来夏の勝ちのようだ。

 高志が鬼。


「最初は俺が鬼だな」


 というと、来夏はバールを空間にたたきつけて次元をぶち割ると、その中に入っていった。


「あ、待てえええええ!」


 高志もその中に飛び込んでいった。

 結果的に二人ともいなくなったので、教室の中が急に静かになった。

 とりあえず、左手にマシニクルを出現させて引き金を引く。

 ぶち割られた空間が修復した。


「さて、俺も帰るか」

「あ……嵐のような人だったね」

「来夏と合わせるとマジでろくなことにならないな。父さん」


 すごく暗い表情で教室を出ていく秀星。

 なんだか、声をかけることができないクラスメイトとその保護者たちであった。

 解決できるような答えを彼らは持っていないのだから当然である。

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