第四百二十一話
「……うわあ。こりゃやばいな」
秀星は高志とともに、モンスターがいる現場に到着。
だがそこでは、蟻型のモンスターが『ゴチャッ』としていた。
「なあ、これ、全部倒すの?千とかじゃすまない数なんだけど」
「そうだぜ。こいつらの名前は『アドホックアント』っていうんだ」
「そうか」
「てなわけで行くぞおおおお!」
そう言いながら突撃する高志。
「……元気だなぁ。あともうちょっと説明してほしい」
秀星はプレシャスとマシニクルを構える。
さすがに、高志のように殴りかかるようなことはしない。
そして高志の方を見ると、足を噛みつかれながらも他の蟻を一撃で粉砕していた。
「……元魔王や竜王をワンパンで黙らせるだけのことはあるな」
見た感じで鑑定すると、こいつらは神獣だ。
もちろん、オリディアとは全く関係ないのだが、地球にも『神器』があるのだから当然『神獣』はもともといる。
そして神獣と言うことは、通常の魔力は通用しないということだ。
「圧倒的な繁殖力を有するアリの神獣か。場所や時期によっては大混乱だったか……いや、『神力』ともいえる『プライオリウム』は『下位の魔力』に対して絶対的な耐性を持つだけだから、別枠である『OES』で対抗可能か」
過去にも神獣はいたはずだ。
そして、魔戦士の中にも、『魔法』だと思いながら『OES』を使っているものはいる。
そう考えれば、神器の形跡がないのに神獣が倒された過去があっても不思議なことはないだろう。
「ていうか……父さんのあれは『OES』か」
単発攻撃力においては圧倒的だ。
しかし、神器持ちではないゆえに基本ステータスはそうでもなく、あまり動きが速いとは言えない。
全然本気を出していないということもあるが。
「俺が『戦略的最強』で、宗一郎が『戦術的最強』なら、父さんは『動作的最強』といったところか」
もちろん、動作が最強ならば一つの戦闘を終わらせる程度はたやすいので、ある意味戦略とも言えるが、同レベルのものが入り混じった戦場では戦略的に意味が無いということでもある。
「おーい秀星!お前も戦えよ!」
「わかった」
「アリだからな。心臓を潰せば終わりだぜ!」
(蟻って……というか昆虫って心臓がなかったような……代わりに別のものがあったような気がするんだが?)
教えるのが面倒だ。
そもそも高志の場合は一撃でバラバラにするので関係なかったのだろう。
(ま、俺も暴れるか)
秀星も参加しないと終わらない。
マシニクルを蟻の軍団に向けて発砲。
すると、レーザーがいくつも出現して、彼らの背脈管を貫通。
そのまま付与を流し込んで停止させる。
「おお、すげえな秀星」
「一撃で蟻を殴って砂にするような奴に言われたくないわ」
そしてその砂をみて、『本当にあの砂鉄はスマホだったんだな』と思いなおす。
とりあえず撃って斬ってを繰り返す秀星。
高志からは『火器厳禁な』と言われているのでオールマジック・タブレットはお留守番だ。
「……なあ秀星。思ったんだ」
「何だ?」
「アリなら女王を倒せば全て終わるんじゃないか?」
「……別に女王アリを倒してもアリの活動が止まるわけじゃないぞ」
「え、自害するんじゃねえの?」
「逆にそんなわけの分からん常識をどこから持ってきたんだ!」
秀星は思わず叫んだ。
(あまりにも非常識すぎる。そしてめんどくさがり屋すぎるな。余裕そうな表情で大体の戦闘はワンパンだし……あ、俺のことじゃん)
盛大にブーメランだった。
親が親なら子も子である。
「そう言えば、これってどれくらいいるんだ?」
「さあ?東京ドーム百個くらいじゃね?」
「大雑把過ぎんだろ!」
怒りに燃える秀星。
こんなちまちまやっていられない。
「火器厳禁だったな。だったらこれでどうだ!」
タブレットを出現させ、そして光らせる。
魔法陣が出現すると、風の刃が全てを切り裂いていった。
蟻だけではなく、その奥にあった樹も切り倒していく。
「あああああ!父さんが植えた樹がああああ!」
「なら問題ないな!」
「ひどすぎんだろ我が息子!」
悲鳴を上げる父親。
やけくその息子。
次々と切断される蟻と樹。
まあなんとも言えない空気のまま、蟻退治は終了。
「はぁ……ん?あれって母さんが植えた樹だったかな?」
秀星は本州に逃げた。




