第四百十四話
「……不良品って言うのはどこにでも売ってるんだな。いや、この場合は『非正規品』と言うべきか?」
「いずれにせよ、使用者の負担を考えない製品ゆえに殺傷力が他よりあるのは確かですね」
とりあえずチンピラをボッコボコにした秀星。
そもそもマスコット・セフィアたちがいろいろなところから見はっているうえに、秀星本人も悪意に敏感だ。
そこら辺のチンピラくらいなら、秀星にかかれば『襲撃を決行することすらできない』のである。
「……しっかし、こんなものが裏で取引されているとはなぁ」
秀星はチンピラたちが持っていた銃を見る。
内部に魔方陣を隠しているのだろう。ちょっと大型の『銃型ガジェット』と言うべき代物だが、元の銃の威力はたいしたことはない。
「使用者に対して安全面がまるで確立されてない魔法陣が刻まれてるみたいだが……」
「科学も魔法も、『制御力』が『安全』につながるということに違いはないのでしょう。その『制御力』を支えるのは基本的に『技術力』であり、『最新技術』を使える場合はこのようなことにはまずなりません」
「……『魔法』にも『不良品』はあるのか」
「そういうことですね」
魔法社会として長いのだが、これはいい換えるならば『魔法をただ使えるだけでは社会的に満足できない』ということだ。
精錬され、きっちり制御されたものが評価される。
「ただし、制御が全くない分、若干パワーがあるわけです」
「『殺傷力』というよりは『余計な破壊』のような気が……」
秀星は銃をいろんな角度から見た後、試しに右手でトリガーをもって、左の掌に発砲してみた。
弾丸は普通に出て来るが、掌から反射して銃の中にはいって暴発する。
「あ……」
秀星は『フッ』っと息を吹きかけて銃を完全修復する。
「な、何なんだお前ら……」
気絶させて縛っておいたチンピラの一人が起きていたようだ。
秀星はチンピラの方を見る。
「……朝森秀星って名前、知らないか?」
「は?ンなもん知るわけ……ん?じ……序列一位?」
「その通りだ。ネットを見れば俺が在籍している学校の名前も掲載されているはずなんだが……」
「……う、嘘だろ?」
「残念ながら嘘じゃない。でまあ、『何なのか』という疑問に対してだが……まあ、お前が知らない世界があるってことだ」
秀星は不良品の魔法拳銃を保存箱の中に放り込む。
といっても、その方法は『黒い渦のようなものに放り込む』ので、実際にそう見える訳だが。
「ま、後はとりあえず警察署まで送って、事情聴取の後で釈放だな」
「厳密には執行猶予付きですね」
「は?」
「だって今回、『未遂』だぞ。しかも、この銃を所有するだけなら罪にならないからな。一応君たちが襲撃を考えていたことを証明する録音データがあるし、このガラクタをどうやって手に入れたのか知る必要があるから警察にいろいろ聞かれるだろうけど」
「が、ガラクタって……」
「俺からすればそんなもんだ。アンタらの裏に誰がいるのか知らんけど、無理してこんなのしか持ってこれないっていうのなら俺だって興味ないし……あ、警察来た」
パトランプが聞こえてきたので、話は終わりだ。
「……あ、そうそう、君たちの裏に誰がいるのか知らんけど、多分『魔法学校としてはセキュリティが甘かった』から選んだんじゃないのか?」
「は?……いや、まあ、なんかそんなことを言っていたような」
「裏がいるっていう自白ありがとう」
「な!?……」
「驚いても無駄。で、なんでセキュリティが甘いか知ってる?」
「わ、分かるわけねえだろ」
「答えは簡単。俺が遊び相手がほしいからだよ。最近暇なんでね」
妙というより、本来ならあり得ない話だ。
『遊び相手がほしいからセキュリティレベル下げておいて』と言って、それが通るのだから。
愕然としているチンピラたちをおいて、秀星は警察に説明するために歩きだした。
面白くなさそうな表情をしているのは、そのまま、面白くなかったのだという内心を表している。




