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第四百十二話

 ごちゃっとしたまま終わったが、少なくとも沖野宮高校に限って言えば、前年度の三学期で秀星がちょっと調教しすぎてしまった結果、生徒達がめちゃくちゃ身の程をわきまえてしまったということもあり、最終的に秀星と宗一郎が空間をぶっ壊すくらい戦うという、総合的には『とりあえずギリギリ視聴率は稼げそうな感じ』で終了した。


 一時間くらい暴れていたうえに、秀星と宗一郎の二人の演武開始時点で既に午後五時を過ぎていたので、学業が終了した学生と定時で帰る社会人とニートは視聴しているはずだ。

 そして速報で情報がまとめられたものをニュースにしているところも多かった。

 まあ、一番早かったのはもちろん、元々魔法社会に関わっていたメディア関係だ。

 これに関しては、秀星がどれくらい頭がおかしいのかが分かっているので、とりあえず『漠然としたぶっ飛んだ言葉』をあらかじめ用意して置けばいいだけの話なのである。具体的に話そうにも、ぶっちゃけよく分からんのでそれくらいでちょうどいい。

 あえてぶっ飛んだ言葉を選ぶくらい、大手のメディア関係のディレクターなら赤子の手をひねるようなものである。


 ただ、日本人は大体、テレビの情報に対して疑いを持たない。

 そして、秀星と宗一郎の演武映像はごまかしが一切ない。

 演出のため切り取って使うことはあっても、合成もCGも一切ない。

 まるで怪獣でも出てきているかのような破壊をまき散らす二人。

 運営委員会が『無人島を使うんじゃなくて空間生成にしておいてよかった』と思うくらいやばい規模だ。

 それに加えて、速報で流れたアナウンサーの容赦のない漠然とした言葉。

 これによって、世界中で『この二人はヤバい』という印象が強まった。


 まあ、秀星も宗一郎も『炎上上等だぜ!』と言わんばかり性格なので特に問題はない。

 ……一部の上層部では『高校生で神器を持っているやつの中で頭がおかしい奴一位と二位』という、この上ない不名誉な二つ名をもっている。

 もちろん、連続殺人をするものも頭がおかしいのだが、二人はそう言う『猟奇的』というわけではなく、たんに頭がおかしいだけなので(だんだん日本語が怪しくなってきている気がしなくもないが)、こう言う設定だ。

 なお、『高校生で』という形容詞が付いているのは、世界中という言葉にすると二位が宗一郎ではないためである。

 ちなみに神器使いに限らず一番頭がおかしいのは『諸星来夏』である。


「さーて!なんだかネットでいろいろ騒がれているみたいだが、その程度で俺は屈しない!というわけでぎゅうううう!」

「いやあああああ!」


 抱きしめる秀星。

 そして悲鳴を上げる奏。

 とてもかわいらしい声で悲鳴を上げる子である。


「……なんだか、メインヒロインやってるよね」

「アハハ……可愛いのは確かなんだけど……」

「いや、男だぞ。奏は」

「可愛いは正義といいますが……男の娘でもそうなのでしょうか」


 思うところがある剣の精鋭の四人。

 ちなみにオタク視点からすれば、『むしろかわいいが正義だからこそ男の娘が成立する』と言う話になるだろう。

 いずれにせよ答えが出ないような気がするが。


 ……十五分後。

 一度は奏を見捨てた的矢がスー……っと現れて彼を回収してはなれていった。

 彼のスキルの性質上、秀星のヤバさは最初から分かっていたことであり、それ以上に、あの映像を見たうえでも全然底が分からなかったので、ちょっと苦手のようである。

 ただ敵対はしないとだけ考えているようだが。そのレベルが他人より数段上だ。


「イベント終わったけど、次は一体何があるんだろうな」

「秀星君ってあまり平穏を望まない感じだよね」

「基本的に退屈は苦手だ……」

「学校は勉強するところだよ!秀星君!」

「俺、新しく作られた魔法学校の教科書作成チームの一人なんだが」


 それを聞いた羽計が教科書を裏からめくっていく。


「確かに名前があるな」

「マジで!?」


 教科書を使う側ではなく作る側だった。


「ついでに言うと参考書も作ったぞ。俺がかかわったものもあるが、俺だけで作ったものもある」

「どこに売ってるの?」

「既に売り切れだ」


 どこかしらの上層部が買いあさったようだ。


「……秀星君すごいね」

「俺がすごいっていうより、アトムの方が常識にとらわれないタイプって感じだと思うが」


 なかなか、高校生の若造に高いポストを与えることができるものは少ないのである。


「まあでも、どうせ何か起こるだろ。新学期だし」


 そういう言い方は良くない。

 ……のだが、正直そう思ってしまうのも事実なのであった。

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