第四百十話
一言で表すならば『解放』または『解禁』と言ったところだろうか。
それ相応に遊ぼうと考えている秀星と宗一郎だが、お互いに神器使いであり、実はこのイベント会場のような『広々とした空間』で思いっきり暴れるということは少ないのである。
神器使いのすべてが毎日毎日忙しいというわけではないが、秀星本人も、世界樹商品販売店の運営にはかかわる必要があるので毎日暇ではない。
それに因って予定が合わないことが多々あるのだ。
魔法学校となったため、生徒会長の宗一郎もすることが多くなった。
そのため、同じ学校にいても、こうして遊ぶことはないのである。
もとから『魔戦士は魔戦士ではなくモンスターを倒せ』を言われるくらいなのだからそれも当然だろう。
というわけで、折角の機会なので戦っているわけなのだが。
「おりゃ!」
「フンッ!」
秀星がプレシャスを振りおろして斬撃を飛ばすと、全身甲冑型の神器『戦術改変装甲ハザードプレート』を身に纏い、レーザーブレードを振ってそれを分断する宗一郎。
分断された斬撃は後方に跳んでいって、山と都市を消し飛ばした。
「ふう、それなりに楽しいもんだな」
「まあ、これくらいじゃないと遊びにもならんからな」
秀星の方も『デコヒーレンスの漆黒外套』をすでに着ているので、大概の攻撃は通用しないが、それでも攻撃は仕掛けるし防ぐ。
そういうものだ。
ちなみに、全身を覆っている装甲が破壊されると転移するのは二人とも変わらないが、神器が相手だと攻撃の余波が強すぎて、転移魔法が発動する前に攻撃が届くので普通に死ねる。
なお、秀星が持っている神器は全て下位神の神器だが、宗一郎の神器は上位神のもの。
文明的な外見特徴である宗一郎のハザードプレート。
秀星の方で言えばマシニクルに該当する。
ちなみに、射程距離ならばマシニクルが上だが、実は威力で見るとハザードプレートの方が上である。
上位神と下位神と言う違いはもともとあるが、だからと言って『神器としての質』は秀星が持っている方が上である。
要するにそれは『神々が神器を作るのにも練度がある』ということだ。
閑話休題
とにかく、いろいろと出力がヤバい二人がぶつかるとこうなる。
と言うところを、しっかりと観戦者に見せたいと言うことなのだ。
ちなみにお互いに本気など全く出していない。
「さーて、次はどうすっかな」
プレシャスを振りながらも秀星はそう言う。
「まあ、適当に派手なことをするか。『地味な高等技術』何て見せてもわかる人少ないだろうし」
レーザーブレードでプレシャスを弾きながらそう言う宗一郎。
「賛成」
「決まりだな」
双方距離をとった。
そして、宗一郎は拳銃をとりだして、それを発砲。
大砲のような何かが射出される。
秀星は『オールマジック・タブレット』を出して魔法陣を出現させると、巨大な炎弾を射出する。
大砲の弾丸と炎弾が衝突すると、その余波で足もとにあった森が丸ごと吹き飛んだ。
「♪」
「!」
秀星はタブレットを光らせると、一気に五十個の魔法陣が出現。
そのすべてから様々な属性の槍が射出される。
超高速で飛来するすべてを、宗一郎はレーザーブレードを二本出してすべて叩ききった。
「あ、それくらいはできるのか」
「無論だ」
防ぐ手段はあるし、第一避けるだけでもかなりの実力が必要だろう。
相手にわかりにくいように攻撃するのが普通であることを考えるなら、普通の斬撃に依る通常攻撃に付与を百個くらいは普通に乗せるのだが、そのすべてに隠蔽がかけられるので外からは全然分からない。
そのため、『敵にも客にもわかるように攻撃する』のだ。
模擬戦と言うよりは単なる演武である。
実際その通りであり、もしもこの二人が『戦った』としたら空間が持たないのだが。
「……戦い始めてからどれくらいだ?」
「一時間は経過した。正直……もう更地だな」
下を見ると、地平線まで更地になっている。
二人は『地平線があるということは、この空間は丸みを帯びているということになるのか?』とかどうでもいいことを考えていたが、すぐに思考を戻した。
「そろそろ最後にするか。演武は飽きた」
「同感だ」
秀星はプレシャスとマシニクル。
宗一郎はレーザーブレードと機械拳銃。
それぞれ構えて――
★
「「……やっちまった」」
秀星と宗一郎はそうつぶやいた。
彼らの視線の先にあるのは、盛大にぶっ壊れた『空間生成装置』達である。
攻撃の余波に耐えられなかったのだ。
ちなみにこれ一つで七億円する。
が、四つぶっ壊れた。
「意外と脆かったな」
「空間生成に特化した神器ってないのかな……」
お互いの攻撃が衝突した瞬間、その攻撃の余波が発生。
二人は『なんだかすごくいやな予感』がした。
みると、空間の至るところにひびが入っており、『崩壊が確定』していたので、秀星が宗一郎と一緒に空間の外まで転移してきたのである。
「ま、何はともあれ、イベントは終了だな」
「これがぶっ壊れたら一時中断だろうな」
というわけで、イベントは終了。
結局引換券のポイントが何に使えるのかがモンスター側の生徒には伝えられていないのでいまいちよく分からないのだが、終わったものは終わっている。
というか、審判がそういう判断を下したので覆らないだろう。
……ちなみに、空間生成装置は秀星が直しました。




