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第四百八話

 午後になると秀星と宗一郎の移動範囲の制限がなくなる。

 まあそれはいいとして、この二人に関してはもとから本気も全力も出すようなタイプではない。

 ……実際に出してしまったらどうなるのか。と言う質問に関しては、秀星の場合は『全員を退場させるのに十秒要らない』であり、宗一郎の場合は『さすがに十秒とまではいかんが、まあ十五分くらいか?』とのことである。


 いずれにせよ、神器を持つ二人にとってはサーチ・アンド・デストロイなど造作もないことである。

 というわけで、委員会の教師たちは『本気なんて出すなよ。いいな。絶対に出すなよ!』という空気だった。

 もちろん、普段から手を抜きまくっている秀星や宗一郎からすれば、『本気になる』というのはそれ相応に労力がいる。

 防衛本能すら刺激されない状況では、そう言った気分にはならない。


「雑にやっても勝てるっていうのはつまらないもんだなぁ……」


 まだ戦闘に神器を引っ張りだしていない秀星。

 最も、アルテマセンスやエリクサーブラッドのような常時発動型の神器は引っ張りだすもクソもないのだが、プレシャスやマシニクルやタブレットのような、明らかに戦闘力を補助する剣や銃などはとりだしていない。

 宗一郎は神器である甲冑をとりだしているそうなのだが、それでも、心境はほとんど秀星と変わらないだろう。


「OESがあるっていう生徒達もそりゃいるけど、さすがに手探りでしかわからないものだし、中には戦闘に使うためには相当回りくどいことをする必要があったりもするから、まあ初日はこんな感じだと思うんだけどねぇ……それを差し引いてもかなり暇だな」


 先ほどから新入生としか戦っていない秀星。

 そもそも、上級生たちは秀星を相手にするのが嫌なのである。

 どうせ負けるのは分かっているのだから、雑にやっている秀星の視覚を利用してコソコソするしかないのだ。


「……ただ、新入生がどの派閥に属しているのかがさっぱりわからんな」


 ある程度まとまった人数で新入生が攻めてくるときがあるのだが、さすがにそれだけで裏まで見るというのは材料が少ない。

 そもそも、秀星は事前情報抜きで楽しみたいと考えるタイプなので、情報収集を全然しないのだ。

 その結果がこれなのだが、まあ、今言っても仕方のないことである。


「多分これ、かなりグダグダのまま終わるぞ。だってここまでがそうなんだもん」


 それ相応に時間が経過した今回のイベント。

 熱い展開がほとんどない。

 これはすさまじくつまらないだろうな。と秀星は思った。

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