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第四百五話

 幻術で、転移先に赤い霧が発生しているように指定。

 基本的に開けた場所にしかいないことにする。

 付与魔法で襲ってきている生徒たちを適正強化。

 生徒一人一人に対して、魔法やスキルを今以上に使いこなすためのパンフレットを即席で書いて投げ渡す。


 と言った感じで、ハンデを追加したり生徒たちを強化している秀星。

 まだ遊んでいるというか、飽きてきている節がある。

 最初はちゃんと立っていたのに、いまではゴロッと寝っ転がっているのでほぼ間違いないだろう。


 最も、秀星は転移しかしていない。

 生徒たちを強化したりパンフレットを作成したりしているが、魔法のために手を動かしたり、パンフレットを作るための紙とペンは不必要だ。

 なので、ダラッとしていてなにか特別なことをしているようには全く見えないのだ。


 だが現実として、生徒たちは秀星の連続転移に追いつけない。


(……そう言えば、異世界に行ったときも、一番最初に身に着けたのは転移とか転送とか、そういう魔法だったな)


 転移しながら言うのも何だが暇なので、秀星はいろいろ思い出していた。


(あの頃は右も左もわからなかったし、大人に騙されて奴隷になったりもしたっけ。あのジジイのシゴキはきつかったなぁ。モンスターのいる森に強制的に放り込んで、稼ぎがいい順に待遇を良くして、一番良かったやつは貴族の息子みたいな感じになってたな。俺は最後までそこに行けずに、いつのまにかジジイが死んで開放されたけど)


 辛かったことというのは、体か心を強くするもの。

 秀星の場合は、どちらも中途半端だったが。


(奴隷は多かったなぁ。大体百人くらいか。でも、クソみたいに金を持ってて、馬車がいくつもあったし、奴隷を普段から鍛えてたから護衛いらず……私兵の代わりかよって状態だった)


 異世界グリモアはモンスターが出現する世界。

 当然、護衛は必要だ。

 しかも時間は有限ではないので、『モンスターをすばやく倒せるかどうか』が評価される。

 そこを突き詰めていけば、一つの戦闘時間が短くなるので普段の狩りの結果が上がるし、時間のかかる長距離移動中のモンスターや賊の処理も早く済む。

 ではすばやく倒せないような強いモンスターや賊が出てきたときはどうするのかという話だが、これはジジイ本人がロマン砲台だった。


(結局開放されて、俺の実力は冒険者としては中堅よりも上くらいだったかな。あの時は剣しかしらなくて魔法を使えなかったし。でも、魔法に関われる余裕ができた頃に、転移とか転送ができるようになったんだよな)


 なぜそれらを『得意』とするのかは断定できない。


(……まあいいか。さて、そろそろ場所を移そうか。コイツラの相手は飽きてきた)


 赤い霧は出さず、一瞬で長距離転移。

 秀星は、『都市』からは消えていなくなった。

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