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第三百九十九話

 新入生の反応は何種類かに分かれている。

 それに加えて、全ての生徒が上級生と関わっていないわけではなく、ふとした偶然でかかわることだって普通にある。


 秀星をどう思うかは関係なく、既に派閥(本人が認識するかどうかは別として)のようなものがうっすらと出来上っていた。


「……あれ、俺って今回は生徒としての参加じゃないの?」


 秀星はとある紙を渡された。

 そこにかかれているのは、要約すれば『秀星は生徒として参加するのではなく、エネミー役』とのこと。

 どうやら羽計がいっていたようにポイントの引換券のようなものが配られるようなのだが、生徒達だけに配ることで完全に枚数の上限を決めてしまうと面白くないし、そもそも魔戦士の役目はモンスターと戦うことなので、バトルフィールドにはどうやらモンスターが出現するらしい。

 もちろん、安全面を重視して設計されたもの……というより、新入生に取っても倒しやすく、モンスターと戦うために『自分はモンスターに勝てる』という認識を持つためのものなので、それ相応に弱いのだが。

 ちなみに、強いモンスターが出現する場合はその情報が全員に行き渡るようになっている。

 新入生に取っても、そういったモンスターとの戦いはある程度経験する必要があり、しかも今回のこのバトルフィールドは外からの設定がそれなりに楽なので、『完全に管理された安全なフィールド』を実現できる。

 様々な要因があって、『これを利用して、叩きこんでおくべきことはしっかりやっておきたい』と考えているのだ。


「……いやまあ、いろいろ理由があるんだろうなってことは分かるんですけど、何で?」


 今回のイベントを運営する委員会の事務員に秀星は聞いている途中であった。


「決まっています。生徒側で参加したら、どれほど制限を設けても一方的になるでしょう。そうならないために、秀星君には敵側になってもらいます」

「それ……敵側に立ったとしても、遭遇するたびに一方的に俺が勝つのは変わらないと思うんだが……」

「一方的に蹂躙すると言うケースも考えられなくはないですが、魔戦士として戦っていると、そう言うケースは稀ですがないわけではないので」


 いずれにせよ、『イレギュラーを演じてくれ』と言われていることは理解した。


「……モンスターっぽい感じにするって面倒なんだけどなぁ。だって、モンスターに良識はないぞ?」

「今回、エネミーの操作を担当する係が作った資料も当然配布しますので、それを参考にしてください。それから、敵役はあなただけではないので」

「へえ。他にもいるのか。例えば?」

「生徒会長です」

「神器使いが二人も敵側に……生徒達に慈悲がないっすね……」


 秀星はそう思った。

 いずれにせよ、すでに決まったことは事実。

 さらに言えば、別にそれでも構わないと思っているのが秀星だ。


「まあ、それでも楽しむことは普通にできるか……資料っていつ渡されるんですか?」

「前日です」

「遅くないですか?」

「あなたと生徒会長を敵側にする案が可決された後で、戦闘力云々を考慮したバランス調節で会議が難航していまして……」

「自業自得だな」


 秀星は即答した。

 圧倒的な強者を味方ではなく敵とする。

 確かに、いろいろと考えた結果であることは分かる。

 だが、調べてみれば圧倒的過ぎてどうしようもない。というのが現状のようだ。

 しかも、困っているのはそのバランス調整を行っている部署だけであり、他のところは円滑に進んでいるので今更変更は効かない。


「……結構イベント当日が近いのに、なんだかグダグダですね」

「これを経験として活かしたいものです」

「今から言うのも何ですけど、俺は来年もいるんで、気を付けてくださいね」

「皆さん、そのあたりから目を背けているのはほぼ確定なので、私から言っておきましょう」


 秀星の感想は一つ。

 『ダメだこりゃ』である。

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