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第三百九十七話

 魔法学校の生徒達の義務として、『素材の確保と提出』がある。

 ダンジョンに潜ることで素材を獲得し、それを提出することで、魔法社会の市場と言うものは潤っているからだ。

 ただし、新入生はこの限りではない。

 当然だが、まだ魔法と言う概念に触れたばかりの生徒達に、命の危険があることを任せるのは間違っている。


 そのため、新入生はいろいろと自分にできることが何なのかを見つけていく時期である。

 ちなみに、二年生や三年生に課せられているノルマはそこそこ多い。


 そう言った事情もあるので……。


「ふああ……なんていうか、OESをもってそうな人も何人かいて、それ相応に面白そうだな」


 放課後直後にもなって、まだ校舎内をうろうろしている上級生というのは、基本的に秀星くらいである。


「しかし、身近に一目では特定できないものがあるっていうのはいいことだな」


 OESという、『神々が作った魔力とは違う、自分たち本来の力』の総称。

 一応、そう言うものがあるであろうことは昔から推測していたし、実際に見て納得した。

 秀星にも手に入れることが出来るかどうかとなるとそれはそれで話は別。


「鑑定スキルを使っても、見えていないものがある。か……まあ、そもそも鑑定スキルに対して隠蔽を行うのも珍しいことじゃないな」


 OESに関してまだ分かっていないことはたくさんある。

 しかし、それでもある程度識別することは可能だ。

 OESに対する研究は進めていくべきだが、それでも、別に秀星に取ってOESは既に『特別』でも『特殊』でもない。単なる事実の一つである。

 が、それはあくまでも様々な方法で分類していった結果出来た指標である。


 アトムが何かを危惧したことで、沖野宮高校にはOESを所有したうえで、秀星たちが使う魔法の適性も高いというなんだかアレな生徒が集められている。

 見るだけで膨大な情報を獲得出来る秀星からすれば、十分サンプルがそろっているようなものだ。


「ていうか、さっきから変な視線が……まあ、一年生の階には基本的に上級生が来ないからな」


 どうしようかな。と思いながらも歩く秀星。

 いくらOESがあるといっても、基本的に『人間』であることに変わりはない。

 そのため、OES本体は分からなくとも、他から見える情報から察することはできる。


(ただ、思った以上に俺を警戒してくれてる人が少ないなぁ……ん?)


 醜態をさらした秀星。

 確かにそういう評価になるのも無理はない。

 が、そんな中で、秀星は別の視線を感じた。

 そこに込められた感情は、『理解不能』というもの。

 今まで考えられなかったような、自分の常識をひっくり返すようなスケールのものを見て、思わず思考が止まったような、そんな雰囲気。


(ま、中にはいるよな)


 あの決闘での体術を見て、油断ができないと思ったものはいるだろう。

 だが、それとはもっと別で、大きなもの。

 それを感じとるOESがあったとしても不思議はない。


(こういう楽しい仕込みもできるから、こうやって一人でふらふらするのは楽しいんだよね)


 裏に徹しようとして、異世界ではできなかったことだ。

 秀星は、自分の視線を変えることなく、異質な視線を向けてくる茶髪を逆立てた男子生徒を覚えて、そのまま一年生の階を過ぎていった。

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