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第三百九十三話

 さて、どうにかして強制退室させることで決闘を終わらせた秀星だが、何と言うか大変だった。


 何故泣くのかわからないのだ。

 秀星にもある程度感情を読み取れるのだが、どうやら『悔しい』と言うものが原因ではないようにも見えたのである。

 だが、悔しいではないとなれば、逆になんなのか。と言うことになる。


 もちろん、泣くときに悔しいが原因ではないとなれば、それはとても悲しいか、それともとてもうれしいと考えた時である。

 いずれにせよ、抑えきれない何かが本人の中で発生したのだ。


 さらに言えば、奏は涙は止まっても全然秀星に対して何かを話そうとはしない。

 口を固く閉じて、秀星がどんなに優しく聞いても全て無駄であった。

 変なところで強情である。

 なんだかんだと恨まれている可能性は十分にあるので秀星としても強く出られないのがつらい。


 そして秀星がとった最終手段。

 それは、とりあえず剣の精鋭の仲間に押し付けてしまおう。ということである。

 それぞれタイプが違う可愛いお姉さん(人生をやり直している雫を除けばいうほどお姉さんではないが)に囲まれて、その上で秀星がフェードアウトすれば何かしゃべりだすだろうと考えたのである。

 『女を使う』と言われても反論できないが、秀星に取って、なんだか勝てない相手なのだ。


 ……で、雫、風香、羽計、エイミーの四人に預けて退散した秀星。

 もちろん隠れて聞いている(秀星としての主張は『見守っている』)わけだが、いろいろなことを棚に上げるのはいつものこと。

 話を聞いていた。

 ただ、今の奏にとってあまり精神的な相性が良くない女が一人いた。


 雫である。

 そもそも預ける時になんだかヤバい予感がしなかったわけではないのだが(要するに確信犯)、それでもしっかり抱きしめることが出来る女が必要と考えて雫を残したわけだ。


 で、秀星の予想通り、なんだか必要以上のスキンシップをとっているようにも見える。

 というより、撫でたり抱きしめたいと考えているのは雫だけではないようだ。

 小さな肩幅に小柄な体躯。

 なんだかとてもかわいい妹ができたような感じがするのである(何度も言うが奏は男、制服も男性用のもの)。

 ちなみに、これが抱きしめた秀星が一番分かるのだが、なんだか奏、とても抱きしめやすい体の大きさをしているのである。

 しかも、赤ちゃんみたいなめちゃくちゃいいにおいがする。


 さて、この時点お気づきの方も多いだろうが、こうなってくると一体何が起こるのか。

 答えはいたって単純なことだ。


『話が壊滅的に進まない』

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