第三百八十九話
学校として成立したうえで必要なものはいろいろあるが、メイガスフロントで実際に使っているような教科書を流用しても意味不明なので、新しくレベルを合わせた教科書が必要になる。
さらに魔法具などの道具だが、こちらも新しく大量に生産しなければならなかった。
とはいえ、日本には『工場型の神器』が存在するので、別に大量生産そのものは難しくない。
素材を集めて作ればいいだけのことだ。
もっとも面倒なのは、どんなものを作るか、と言う設定である。
ほぼ世界中の人間が、魔力と言うものを扱えるようになったが、保有量、及びそれらを扱おうとすることが出来る量や種類を決める『器用さ』はバラバラだ。
しかし、秀星にはセフィアがいて、なおかつ圧倒的な処理速度のコンピュータを有するマシニクルがあるので、文字通りすべてを調べる『全数調査』が可能である。
……無論、調べることが出来るというだけで、それを強制することは不可能なので、魔法社会に関わっていきたいと思っている人間だけを調べることになる。
魔法がかかわるようになっていたとしても、『選択』に自由があるのは変わりない。
平均値、中央値、最頻値のすべてを正確に把握することが出来る。
もちろん、全数調査が可能で実際にそれをするのであれば、考慮すべき数値は最頻値一択だ。
教科書や様々な道具は、最頻値をもとにして調節されたものを使用することになった。
第一世代という、基盤を作るために必要な時期であることを考えれば、これくらいやれば十分、と言うレベルだろう。
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(……一つ問題があるとすれば、俺が授業を受ける理由がないってことか。いやまあ、言うほど問題ではないんだが……)
秀星はそんなことを内心考えていた。
教科書や道具を作る際、秀星が全数調査だとかそういった『意味不明』なことをやったのは日本だけである。
世界中の上層部から『日本ばかり贔屓するな!』と言われたが、そもそも秀星が好きな言葉の中に『依怙贔屓』が含まれているので聞く耳を持たないのは自明の理。
調査にかかわった以上、それをどう考慮するのかも考えなくてはならない。
教科書を作る際、その内容も考えている。
そのため、秀星は教科書の内容をすべて知っているし、かかれているそれがどのような形で利用されるべきなのかまで把握している。
そのため、授業を受ける必要はなかった。
(まあでも、教壇には立つなって言われてるんだよな……)
様々な知識をすでに持っている秀星。
確かに、ものすごく雑なトーク番組であればそれは活かされるのだが、元々秀星は『知識を説明している時、異様に脱線する』のである。
もちろん、普通に授業するにあたって脱線は『不必要』というものではない。
しかし、秀星の場合はそれがケタはずれである。
アトムからは『話題の変更が次々と発生し、話題が戻る時もあれば戻らない時もあって、なおかつしゃべることが大量にあるから、『終わりようがない』って感じだね。女子の会話のようだ』と言われた。
否定できない秀星である。
とまぁ、そんな感じで秀星は椅子に座って授業を聞いている訳だが、教師としてもこの教科書を扱うのは初めてのことである。
もちろん、教師向けの解説動画も作っており、それらが配布されているのだ。ちなみにその動画に秀星は映っているのだが、教師役はアトムで秀星はアシスタントである。理由は先ほど述べた通りだ。
早速始まった授業。
新入生にはオリエンテーションが行われているであろう時間である。
しかし、第一世代となれば、教師としても基礎から解説する義務がある。
……教室の中には、正直、ダルいという空気が流れていた。




