第三百八十七話
魔法社会の存在が露見した。
その衝撃は凄まじいものだが、だからといって思考停止したところで意味はない。
アトムたちは『一応、無償で市場に魔法技術を提供していくというポーズを取りつつ、裏ではしっかりと規制することで制御する』という方針のようだ。
秀星の『要するにこれまでもこれからもアトムは政治家なんだな』という返答に、ジュピター・スクールにあるタワーの最上階の公開会議室は爆笑が発生したが、それはおいておくとしよう。
ただ、この選択は多くの国が行っている。
そもそも、魔法という概念が表に出てきたが、だからといってどこまでできるのかまで露見したわけではないのだ。
そう考えれば、重要な部分を制御していけば、おおよそ考えられる予想の範囲内で進めることができる。
これからは、一般の授業の中に魔法が関わってくるだろう。
しかし、日本に関して言えば『メイガスフロント』のような『魔法関連の教育機関』が存在するので、教育データがすでに存在し、それは他の国も似たようなものだ。
露見したことによるパニックは確かにデメリットだが、もちろんメリットがないわけではない。
これまでは規模が制限され、そして規制されてきた魔法社会が世界に広まることで、もっと大幅な研究が出来る。という期待も当然ある。
各国政府の中には、もとから『魔法特務課』といった形で基盤が存在する部分もあり、『魔法を使った犯罪を取り締まってきた経験』があるので、一度落ち着けば問題はない。
成熟した魔法社会の大幅な拡大。
そう聞けば、これからの世界に希望を持つものは当然多いのだ。
どんなところに落ち着くのかは不明だ。
しかしわかっているのは、これからは『魔法社会が裏に広がっている』のではなく、『魔法という概念が普通になる』ということである。
きっとどうにかなる。
人間というのは、納得するのは遅いが慣れるのは速い。




