第三百八十六話
いろいろあったが、総合的には拍子抜けといったところだろう。
もちろん、オリディアのそもそもの目的が世界樹であり地球への侵略ではなかったこと。最初から最後まで本気を出さなかったこと。秀星が偶然、オリディアの気を引く話題を持っていたこと。
様々な偶然が重なったことで、最も面倒な事態にはならなかった。
もちろん、魔法社会の存在が露見し、世界中でパニックが発生している。
……もちろん、世界の二割という少なくはない割合で続いていた世界の証拠が全く表に出ていなかったのかとなればそれは無理な話であり、自らの予測があっていたことにうなずいて満足しているものもいるが、そんなものは少数。
さらに言えば、本当の意味で富裕層のものだけが関わっていたわけではなく、一般市民もかなり関わっている。
これによって伝染するのは、『自らも関わることができていたはずの既得権益の存在』という意識だ。
当然のように糾弾ラッシュが続き、デモが至るところで乱発している。
気持ちはわかる。
魔法という『何でもできそうな魅力的なもの』がすぐそばにあったのだ。
第一『秘匿されている』という状況は人にとっては我慢できないものである。
そして、秘匿されていたものの存在が示唆されるまでならともかく、本当に証拠まで出てくると止まるはずもない。
というより、このネット社会の中で情報がよく規制されていたものである。
秀星が世界樹の主人となり、全ての世界樹を集め、そして収まった神獣騒動。
一区切りついた。と言える雰囲気の中で発生した、『魔法社会の露見』という現実。
誰かが責任を取れるというようなものではない。
だが、誰かが落ち着くところまで導くしかない。
今回、神獣の親を相手にして手懐けた秀星は英雄でもあり、ある意味で露見することとなった原因でもある。
だがしかし、神獣というものに少なからず理解がある者たちにとっては、英雄であることに間違いはない。
だがまだまだ、世界は英雄を寝かせようとは考えていないようだ。
最も……。
「zzz……」
「フフフ。マスターは寝顔が意外とかわいいのね」
「あなたが強すぎて本気を出した疲労で寝ているだけなのですが」
さすがの秀星も、オリディアが戦う気になった時点で、能力を底上げする手段はすべて使っていたようだ。
今日は学校で、普通に授業があるのだが、そんなことは気にせず爆睡している。
確かにしんどい戦いだったことは間違いない。
とはいえ、それを考慮してものんきな男である。




