第三百七十九話
ピリピリしていたが、実際にそれを解放するとなれば、一体どんな始まりになるだろうか。
地上で派手に、地下で静かに、天空で華やかに。
いろいろあるだろう。
どれほど理不尽なことをしてくるのだろうか。
考えられないほど呆れたことをしてくるのだろうか。
答えはもっとも単純だった。
(自宅に奇襲かよ)
と、秀星が考えた時。
すでに、秀星の自宅は爆破されていた。
もちろん、ありとあらゆる魔法の発動を封じ、そしてその上で無力化の付与もついており、圧倒的な質量で叩き潰すかのような一撃である。
もちろん、警戒している秀星には効いていないわけだが。
「どこにいるんだか……」
自宅の上に転移した秀星だが、どこにいるのかわからない。
隠蔽を使っているのは当然のこととして、本当にどこから狙っているのかわからない。
「分かっているのは、俺しか狙えないってことなんだけどな……」
神獣の子供たちの死体をしっかり見て、既に魔力のパターンの解析は終了している。
そのデータを使って、神器の力をフル活用し、『秀星と神獣の間』にルールを作った。
簡単に言えば『俺とお前の一対一でやろうぜ』を強制するものである。
まず真っ先に秀星の方を狙ってきたのはそれが理由。
それはそれでいいのだが、本当にどこにいるのかが分からなかった。
そもそも、魔法が発動した地点にいるわけではない。
発見は困難である。
「……!」
先ほどと同じ爆破攻撃。
回避すると、槍の射出。レーザー。多数の短剣が襲い掛かって来るが、それをプレシャスで叩き落としながら魔力パターンを探る。
発動地点で存在した魔方陣を確かめたところで意味はない。
(……地味だな)
秀星はそう思う。
実際地味だ。秀星が考えている本質的な部分もそうだが、外見的にもである。
ありとあらゆるカメラに、お互いがやっている特別な付与が写らない。
結果的に、単純な槍とかレーザーとか、短剣とか、そう言ったものが飛んできて、それを剣で叩き落としているだけなのだ。
あまり見栄えは良くない。
最も、それを一瞬でも考えてしまうと、敵にすべてを読まれるといっても過言ではない。
単純に魔法を使うとしても、剣を振りおろすとしても、いくつもの高度な付与をかけて、そしてそれを隠した状態である。
神器すら持っていない人間なら、もうすでに死んでいるだろう。
「出て来いって言っても無駄だしな……」
秀星が嫌いな攻撃を探しだそうとしているのか、多種多様な攻撃で攻めてくる。
もちろん、魔法にかけられている隠蔽にもパターンはあるので、同じような攻撃に見えて全然違う攻撃の場合もある。
まず視覚的な情報ではなく、ずらっと並んだ『付与情報のリスト』を見て判断するような脳が必要だ。正直、常人の脳では不可能。
(前哨戦は一先ず肩慣らしってところか)
相手に与える情報は少ない方がいい。
解析されてしまったら、そこから深いところまで一気に探られる。
そのため、一方的に攻撃されている秀星が不利と言うわけではない。
実際、攻撃手段が多数と言うことは、判断材料も同時に多数だ。
(……ん?ちょっと驚いているみたいだな)
攻撃からそんなことを感じた。
どうやら、『お互いに余裕を持って』肩慣らしをしていることが初めてのようである。
(さて、次は何をしてくるんだか)
次とか考えている間にも攻撃そのものはされている訳だが、そういう問題ではない。
もっと広い意味での『次』である。
攻撃対象は、秀星に絞るしかない。
それが、秀星が作ったルールだ。
押し付けたものだが、このルールの作成は万全である。
『プライオリウムであるゆえ』の弱点を使っているので、突破するにしても時間がかかるだろう。
それまでに決着を付けたいものである。
タイムリミットはもちろん不明だ。




