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第三百七十四話

「……なんだこれ」


 秀星が食べる食事は基本的にセフィアが作る。

 どうということはない。『メイドですので』見たいな感じの空気になって以来、ずっとそのままだ。

 外食する時もあるし、別にセフィアが出したもの以外食べないというわけではない。

 単に朝食、昼食、夕食をはじめとして、おやつになると大体セフィアが何かしら用意している。


 いろいろと『調節』も済んで、どうするかと言うタイミング。

 秀星は料理ではなく、その料理を運んでいる物体に対して、そんなことを呟いた。


 簡単に言ってしまえば、『二頭身の人形のようなセフィア』が、机の上でとてとて歩いて皿を運んだりしている。

 大皿を運ぶ時やポットを傾ける時は何人かで協力し合っていたり、何故か指揮棒を持っている個体がいたり、ポテッと転んでいる個体があったりと様々。

 行動原理として『秀星の邪魔をしない』と言う部分は徹底されている。

 ものすごくめちゃくちゃなことを言えば、『整理整頓されたごちゃっとした感じ』が目の前に広がっていた。


「『マスコット・セフィア』です」

「それは見れば分かるんだが……なんでこんな感じに?」

「そういう発作です」


 セフィアの説明でますます訳が分からなくなった秀星。

 発作と言われてもわからないのは当たり前だ。


「……」


 秀星は、ポテッと転んだやつの襟を掴んで持ちあげる。

 目は黒い点、口は『×』の形になっており、マスコットと言うだけあって、頭が大きくて胴体がちっちゃく、手足が短い。

 しかし、感情表現(?)は豊かなようで、持ちあげると『うわ~!』と言いたそうな雰囲気でじたばたしている。

 なお、一つとして同じ形のマスコットが存在しない。

 ……といっても、全員がメイド服っぽい感じであり、変化があるとすれば若干の大きさの違いと顔くらいだが。


「一体いつから作ってたんだこれ……」


 確かに見た目は完全にマスコットである。

 しゃべれないこととか、持ちあげたりするとあたふたしている部分はマスコットキャラクターとして最適だろう。

 それはそれとして……このマスコットは全て『セフィアの端末』でもある。

 当然、適当に魔法で作ったわけではなく、『主人印』が全ての図面を引いて、作成されたわけだ。


「そうですね。大体二か月くらい前でしょうか」

「……」


 秀星は『このマスコット、何億体いるんだろうな……』と思った。

 『セフィアとしての最低限の機能』と言う基準が存在する。

 ただし、このマスコット・セフィアはあくまでも『わちゃわちゃしている時の鑑賞』が目的で作られたものなので、言うほど戦闘力は必要ないはずだ。

 戦闘力が要らない端末に関しては作るのがものすごく速い。


(……まあ、別に悪くはないか)


 セフィアは確かに大量にいるが、出しゃばったりはしない。

 それに、世界樹商品販売店の至るところでうろうろさせておいてもいいだろう。

 そういうタイプの端末だ。


「秀星様。料理が冷めますので……」

「……ああ、いただきます」


 今は飯の時間である。

 秀星は食べ始めるのだった。

 ……マスコットたちがジーッとこちらを見ていることが少し気になったが。まあ、否定したところで無駄な気がするので放置である。

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