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第三百六十五話

 人工神器によって戦力を補充するのも悪くはないが、どこかに『まとまった神器使いたちの集まり』がいなかったかな。と考えた。

 もちろん、世界を見れば数えるくらいはあるだろう。世界でもトップクラスの魔戦士と言うのは大体神器使いだ。

 神器使いは『神々が使う魔力』を使えるに等しいので、他の魔戦士とは圧倒的に格が異なる。

 そう考えれば、トップクラスの連中が神器使いになるのは当然のことだ。


「どこかにいなかったかな。そういう神器使いがたまってる連中……あ、思いだした」


 秀星はスマホをとりだしてタイピングをする。

 何と言うことはない、メールを送っているだけである。


「よし、返事が来るまで寝ようか」


 スマホをポケットに突っ込んで、そのまま寝息を立て始める秀星。

 余裕である。



「……で、神器使いが一定数必要と言うだけで、私を呼んだわけか」


 青い髪を切りそろえたスーツ姿の男性、頤綴(おとがいつづり)

 『自分に取って都合の悪いものがいない世界を作りだす』ということが目的なFTRのトップである。

 その隣には、黒髪を伸ばした幼い印象が薄い秘書、早乙女晶子(さおとめしょうこ)もいる。


「まあいいだろ。だって、たくさんいそうだし」

「確かにたくさんと言っていいほどいるだろうな。しかも洗脳状態で、私が言うことに絶対服従だ。電話をする相手としては間違っていないが、アポも前触れもなしに会うような人間ではないと思うのだがな」

「どうせ会う用意くらいはしてただろ」

「まあな」


 綴は否定しない。

 そもそも、彼は知っていたのだ。


「あの学校で俺とあった時、アンタはいったな。もうFTRに構っていられるほど暇じゃなくなるって、それがこれだろ?」

「その通りだ」

「綴さまは、私が作った『世界樹の素材を使った装備』により、調査を始めました。判明したのは、緑と黒の世界樹の疲弊。そして、世界樹と言う概念があなたと接点を持つことで、世界樹が一箇所に集まるであろうことを予測していました。その結果、神獣に対応する必要が出て来る。その結果があの言葉です」

「うん。今ならわかるよ」


 簡単なことでは神獣は出てこない。

 そして、世界樹が一箇所に、しかもベストコンディションの状態で集まるということは簡単なことではない。

 世界樹が集まることによる神獣の出現。

 確かに、秀星本人としても疲れる相手だ。

 FTRになど構っていられない。


「で、神獣のことだけど……一体どれだけの人間が信用すると思う?」

「それは戦うための戦力として出て来るかと言う話か?一度被害を受けた後でも、秀星一人で対応できるのだからといって、戦力を出し渋るだろうな。どうにもならない時になったら、足元を見て戦力を高額で提供してくるだろう。それが普通だ」

「だよなぁ」

「もちろん、綴様や私は、『神獣の親が出てきた場合、敗北すれば失うのは権力ではなく世界』だということは分かっています。しかし、どうにも納得しないものはいるでしょう」


 これに乗っかって恩を売ろうと考えている人間はいるだろう。

 だが、おそらく九割は使い物にならない。

 だからこそ、綴の言うことを全て聞く神器使いがまとまっているFTRのところに来たのだ。


「……あれから鍛えてるのか?」

「当然だ……ただ、神獣の親が相手となれば、身を守るのが限界だろう」

「俺とアンタの神獣の強さの認識に齟齬がないのであれば、それでもすごいけどな」

「子供相手でもあなたは疲れているでしょう。それくらいは、私たちも予測していましたよ」


 秀星は顔をしかめる。


「……なんでそういう疲れってわかるのかな」

「勘です」

「あーうん。勘弁してください」


 どうするっちゅうねん。

 勘という推理方法に妨害手段ってないんだけど。


「……で、神獣の子供相手なら、何とかなるのか?」

「少なくとも抑え込むのは可能だろう。頑丈さと砲撃の二種類を鍛えているのが現状だからな」

「一体何を目指しているんだか……」

「お前のように飛べる奴は少ないんだ。察しろ」

「あ、はい」


 というわけで。


「いざとなったら本当に頼むよ。はっきり言って今回ばかりはヤバいからな」

「承知した。まあ、お前に恩を売っておくのは悪くないからな」

「それを俺が恩だと思えるほど図々しくないことをしっかり祈っていてくれ。それじゃあまたな」


 最後に余計なことを言って、秀星は席を立った。

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