第三百六十四話
「……なんか秀星君。疲れてるね」
世界樹の世話だとか、世界樹商品販売店だとか、まあいろいろやっている秀星だが、一応高校生である。
当然のことながら学校には通っているのだ。
「そうだな。精神的に疲れているところは何度か見ているが、肉体的に疲れているように見えるぞ」
「意外と初めてみるよね」
「何かあったんですか?」
女子と言うものは意外と観察力があるんだなと秀星は思った。
精神的にぐったりしているのは来夏がいるのでよくあること。
別にだらけていてもばれないと思っていたのだが、何か普通にばれた。
「……なんで俺が疲れてるってわかったの?」
「「「「……勘?」」」」
そんな女の究極必殺技を行使するのはフィクションの中だけで十分である。と秀星は思うのだが、何か間違っているところはあるだろうか。
ともかく、分かっていたというのならそれは仕方がない。
風香、羽計、雫、エイミーの四人だ。別に話しても言いだろう。
「本当は全員がそろっている時に話したいんだがな……」
世界樹が増えたこと。
そして……神獣が出現したこと。
言ってしまえばそれだけ。
二度手間といってもそう大したものではないと判断して、秀星は話す。
黙って聞いていた四人だが、全部聞き終わると、難しい表情になった。
「……秀星君でも、基本的には負けてるってこと?」
「技術や手段によって超えられるレベルだけど、基本的には負けてるよ。まあ、こっちも技といえるほど技はつかってないけどな……」
いろいろやったが、膨大な付与を詰め込みまくった攻撃を叩きこんだだけであり、あくまでも通常攻撃の派生である。
「それって……私たちじゃまず無理だね……」
「秀星君でも基本スペックで負けてるとなると、そもそも神器を持ってなかったら太刀打ちできないってことか……」
さらに言えば、一対一に限り、神器であれば何でもいいと言うわけではない。
神器の武器であればいいのだが、エインズワース王国の国王のアースーが所持しているような『脳の機能』を上昇させる神器の場合、攻撃が『プライオリウム』で構成されていないので、何をすればいいのかはわかってもそれを実行することはできない。
もちろん、神器の処理速度であることに変わりはないので、何をすればいいのかは秀星よりも早く分かるだろう。誰かと組むのが鉄則だ。
「なら、神獣が出てきたときのために、神器使いを集めておく必要があるってことだね」
「あとは……『人工神器』だな」
「え?どういうこと?」
「簡単に言えば『神が使う魔力』である『プライオリウム』が混ざっただけの魔法具みたいなもんだよ。一応それでも、神獣には効果がある。戦うたびにボロボロになるから使い捨てになるだろうけどな」
「……それってどれくらいコストがかかるの?」
「俺が試算した理想値の出力を叩きだす場合、製造系神器を持ってるやつが何人も集まればコストは百分の一くらいにはなるかな。元の金額が一個で五千万は下らないけど」
訳の分からない数字だ。
「ま、金は俺が出すにしても、人が集まるかどうかなんだよなぁ……」
一番問題なのは……『そんな前例がない』ということだろう。
とりあえず自分で作るところから始めるしかないが、その『プライオリウム』を作るというのが、秀星でも面倒であり、他のことに手を付けられないゆえのコストの高さだ。
「……ま、苦戦はするけど俺一人でもどうにかなるだろうから、先見の明って奴が世界にあるか試させてもらうことになるんだよなぁ」
秀星は溜息を吐きながらそう言った。
あとで手を洗うにしても、握手すらできない人間と言うのは一定数いるものである。




