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第三百五十三話

「なあセフィア。六十桁ってどう思う?」

「そもそも秀星様はどう思っているのですか?」


 そこそこの速度で緑の世界樹に向かうオープンカー。

 景色を眺めながら進んでいるわけだが、日本の公道の速度制限を守ると日が暮れるので、高速スピードで走っている。

 そのため風がすごくなるので、そこは魔法でシャットダウンした。

 そのオープンカーで、秀星はセフィアと話している。


「うーん……まあ、神器を使えば俺だって異世界に行けるわけだし、外来種っていうのは否定しないさ。だが、一体どれくらいの時間なのかさっぱりわからん。数億年生きてる基樹がミジンコに見える年数だぞ」


 おそらく基樹がくしゃみをしそうなセリフである。


「とはいえ、神々はそれを遥かに凌駕する年数を生きて……いえ、存在しているので、それで驚いても仕方がないのですが……秀星様はそこまで長寿であることをどう思いますか?」

「……時間があって得するのってさ。基本的に、コミュニケーション能力があるやつなんだよな」

「人と触れ合えますからね」

「人と触れ合えるのなら、誰かが好きなものとか、達成したい夢を知ることができる。余興としては十分だろ。ただ、それすらもないっていうのなら、あいつらの目に、この世界はどう映るんだろうなって思う」


 いずれ星は寿命を迎える。

 だが、宇宙は広くとも、全く同じ条件で存在する惑星を見つけることは困難だ。

 自分たちが住む宇宙で発見できないのなら、異なる時空で、自分たちが住める場所を見つけるしかないことになる。

 それにしたって困難なはずだ。

 寿命は長くとも、死んでしまえばもう終わりの種族がほとんどであり、今まで住んでいた星が寿命を迎えたあとも生き残っている種族は珍しい。


 だが、不死鳥族は何度でも試せる。

 生きているのではなく、神器でもなかなか手がつけられないような高次元の概念によって構成された肉体が存在しているだけ。

 死なない以上、試せる。

 そして見つけたのが地球なのだろう。


 スケールの大きい話だが、少なくとも秀星はその可能性を否定しないし、仮に他のルートで生きているとしても、一理あるなら十分。


「秀星様は、そこまで生きたいと思いますか?」

「……死にたいと思ったことはないが、だからといって、そこまで生きたいのかって言われるとなぁ……どれだけ何かをたぎらせても、何も削っている感じがしないっていうのは、なんだかもどかしいだろ」

「そういう理由ですか」


 どんなものにも終わりがある。

 それは一つの真実だ。

 終わりがない存在を否定するわけではないが、少なくとも、何かが終わるということは尊いものだと思う。


「まあ、頭が痛くなる話は終わりにするか。次は緑の世界樹に行くけど……やっぱりゆるふわ系なのかね?」

「私もそう思います」

「不死鳥族はボーッとしてるし、妖精たちはゆるふわか……脳みそがちゃんと動いてなさそうなのばっかり来てるような……」

「まったりするには丁度いいでしょう」

「そうだな……今度は何歳なんだろう」

「流石に長寿というわけではないのでは?精霊たちの長で二千歳くらいでしょう」

「……短く感じるの気のせい?」

「いえ、不死鳥族のせいですね」


 そもそも、二千歳に対して『長寿ではない』というセフィアがおかしいのだが、二人共それには突っ込まなかった。

 そんな二人を乗せて、オープンカーはそこそこの速度(時速二百五十キロメートル)で進んでいく。

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