第三百五十一話
「いやー……来なくなったな。襲撃者」
「物理的な部分はどうにかなると思っても、情報に関しては一度知られてしまっては何もできませんからね」
「しかも襲撃が一回も成功してないし、証拠付きで送ってるからな。世界中への発信はいつでもできるわけだし」
「さすがに恐怖に駆られますよ。胃薬を一緒に送って正解でしたね」
かなり止まった。
というより、秀星がだらだらしていたら遊び相手くらいにはなるレベルのところが来なくなった。
結果的に、立体映像をおいておき、あとはメイドたちに家を守らせておけば問題がなくなった。
楽しくない遊びに秀星は付き合わない。
迎撃でも戦闘でもなく、遊びである。
迎撃や戦闘と言うことになれば、それは『真面目にやる』ということだ。
本当に真面目にやったら世界が面白くなくなるので、秀星はあくまでも遊ぶのである。
「で、今から行くのは不死鳥族がいるところだったな」
「赤の世界樹に適合し、そして空を飛ぶことが出来る種族の中では最高峰ですね」
「人数って多いのかな」
「少ないでしょうね。基本的に死なないので、本能的な部分での生殖回数は少ないです」
「なーるほど。見た目が幼女でも実は五万歳とかありえるって訳か」
「その通りです」
「その通りかい……」
そこまで話した時、赤の世界樹が見えた。
「他と同じくすごく大きくなったようで何よりだ」
「エリクサーブラッドがあるので、ベストコンディションになるのは当然として……あまりその状態に変化はないようですね」
「みたいだな。世界に存在する種族に比例するとか、そう言う感じじゃないんだなって思ったよ」
基本的に様々な生物に取って、体温と言うのは高すぎると生命活動を維持できない。
そのあたりが抑え気味になるので、不死鳥族のような体の構造の種族は珍しい。
数が少なくなるのはそういう理由だが、だからといって世界樹が小さくなることはないようだ。
「……世界樹からの恩恵っていろいろあるけどさ。絶対に使いきれないよな」
「使いきれない量になっているのが世界樹と言う存在ですから」
「そういやそうだったな」
さて、不死鳥族が住んでいる場所に来た。
普通に木造建築が並んでいる。
ただ木造建築と言っても、木材の色が赤なのだが。
と考えていたら、遠くから燃えている鳥が飛んでくる。
秀星の近くまで来ると、一瞬で人の形態になった。
赤い髪をショートカットにしたボーっとしている雰囲気の少女だ。
身長もそう高くはない。
何歳かはわからないが、人間に換算するとそう高くはないだろう。
化身たちで言うと、雰囲気は赤より黒が近い。
「……お兄ちゃんたち、誰?」
「俺は朝森秀星だ」
「そのメイドを務めております。セフィアと申します」
自己紹介すると、少女はセフィアの胸をジーッと見た後、自分の胸をペタペタと触る。
……正直、あまりない。
その後、秀星の方を見る。
「何をしに来たの?」
「(今の件はスルーした方がいいんだろうか?)……新しい世界樹をこの島に配置して、新しい文明種が来たからな。簡単に言えば見学だよ」
「わかった。特に何もないけど、見ていきたいのなら見て行っていいと思う……多分」
自信ないんかい。
「それと、私はこんな感じだけど、中には好戦的な人がいるから、そうなったら遊んであげるといい」
「……それは炎属性だからか?」
「というより、一定数いるバカの話」
辛辣である。
そんな感じで不死鳥族の里に入る秀星。
人気が全然感じられないのだが……何人いるのだろうか。
そんなことを考えながら、秀星は歩を進めるのだった。




