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第三百四十七話

「セフィア。楽しい遊びを思いついたぞ」

「何でしょうか?」

「自爆テロってあるだろ?」

「するのですか?」

「誰がするか!してくるって話だよ」

「まあ、このような状況ですし、してくるでしょうね」

「そこでいいことを思いついた」

「ほう……」

「『爆破現象の発生不可』みたいな結界を店全体に張っておくんだ。で、あえて犯人には騒がせて、対応できそうな人が客の中にいてもメイドたちに止めさせる。そして犯人が爆弾のスイッチを入れても爆発せずアホみたいな顔をするところまでを録画して、それをネットに拡散するっていうのはどうだ?」

「……技術の無駄遣いだと思いますが」

「まあ聞くまでもなく一回やったんだけどな」

「どうでしたか?」

「犯人に同情する声が多数寄せられていたよ。逆に俺への非難はすごい。決死の覚悟で飛び込んだ末に黒歴史になったんだから当然だけどな。『犯罪者にも人権はある』ってコメントで書かれてたぞ」


 人は犯罪者というものを嫌悪するものだが、なにか深い理由があるときは少し同情する生き物だ。

 もちろん犯罪行為をすることを容認するというわけではないが、犯罪者だからといって何をしてもいいというわけではないということである。


「ふと思ったのですが……」

「何だ?」

「秀星様は、遊ぶためにこの話を受けたのですか?」

「当たり前だ。俺は『悪乗り同盟』の一員だぞ」


 セフィアは『そういやあったなそんなの』みたいな顔になった。


「しかしなんといいますか……ルールを決めてもなかなか反論する人は多いですね」

「まあ大富豪たちって、子どもたちに至っては『欲しい』っていったら実際に手に入るのが普通みたいな環境で育ってるからな。同じノリで手に入れようとしたらこのザマだからな。今頃ご子息たちは文句言ってるだろうな。下手すれば当日には欲しいものを手に入れることが出来てたのに」

「他人の不幸は蜜の味。とはよく言ったものですね」

「でも普通に来客してルールを守ってる客に関しては誠意を込めて対応してるからな。5段階評価のあれみたら面白いぞ。5と1がめちゃくちゃ伸びてる」

「とはいえ、5の方が多いですね」

「基本的にちゃんと接待してるからな」


 メイドたちは何でもできると言えるほど許容範囲が広い。

 そして、生きているわけではないので常識に囚われない。


「昨日よりは犯罪件数減ったか?」

「減っていますね。富豪たちは、とりあえず傘下のものに金を渡して購入させているようですが……」

「それは別にいいだろ。ルール守ってるし」


 下のものに買わせるのも、秀星の理不尽さからすれば単なる工夫である。

 まあいかなるルールを設けたとしても、もとから金があるやつが強いというのは変わらないのだ。

 それが社会というものである。


「まあ、犯罪に関しては適宜対応でいいだろ。別に警察に突き出すわけじゃないし。ていうか全部未遂だもんな」


 全てに対応するというのは要するにそういうことである。

 すべて未遂で終わるのだ。

 確かに犯罪はいろいろある。

 秀星は法律に詳しくないが、いずれにせよ、未遂なら本来のそれよりも刑罰は少ないだろう。

 秀星からすればどうでもいいことである。


「店舗としてはその対応は少々不味い気もしますが、警察沙汰にならない代わりに黒歴史製造では誰も幸せになれませんね」

「俺は楽しいよ」

「そうですか」


 セフィアも呆れた。


「それにしても、いろいろあるなぁ……そういや、メイドたちだし、客からのナンパとかあるんじゃないか?」

「それに関しては丁寧に叩き潰しています」

「ふーん……ん?丁重にお断りしてるんじゃないの?」

「いえ、丁寧に叩き潰しています」


 一体どういうことなのやら。

 調べないほうが良さそうなので放置することにした。


「うん……まあでも、概ね平和だな」

「そうですね。メイドたちではどうにもできない戦闘力に関しては、別途戦力を用意していますし」


 いろいろあるが、全ては未遂で終わっている。

 ならば、まあ、平和か地獄かと言われれば平和だろう。

 秀星は、とりあえずそう思っておくことにした。

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