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第三百四十六話

『いつでも遊びに来てください』


 まあ当然、そんなバカにしたような返信をされてイラッとこないようなやつがそもそも脅迫文など送ってくるはずもない。

 もちろん、その脅迫文は秀星からすれば三下と言っていいものから送られてきていた。

 まあ、メールが流出すれば足を取られるのでそうするのは当然。

 ものすごく遠回しにデカイ組織が脅迫文を送ってきたりもするのだが、秀星からすれば『脅迫文を送ってきたところ』くらいしか印象はないので文面は変わらない。


 まあそんなこともあるのだが、店自体は普通に開店。

 広いスペースに世界樹から取れたものを並べて、最高会議に言われた通りの値段で販売する。

 接客も商品補充もメイドたちが行う。

 感知能力から逃げられるとは思えないが、防犯としてカメラも配置している。

 もちろんマシニクルが出したものだ。


 ちなみに商品の販売においては、アトムたち最高会議のメンバーに対しても秀星は妥協しない。

 まあ、彼らも調節が忙しすぎて研究どころではないのだが。

 もちろん、剣の精鋭メンバーも同様。特に千春は秀星に頼み込んできたのだが、秀星は首を横に振るだけ。

 裏取引には応じないのだ。

 ……ちなみに、千春は店に行って実物を買って、それを使って研究したそうだが、あまりにも素材として高性能すぎて、今は資料を漁るくらいしかできないようだ。

 とりあえず、金さえあれば手に入るが身の丈に合うかどうかとなるとまだ無理がある。というレベルである。


 多くのものがそのような状態である。

 なお、数に制限を設けているが、何も極端に少ないというわけではない。

 しっかりと数は用意されている。


 そして、売られて得た利益はほぼすべて秀星の懐に入る。

 人件費も場所代も商品販売の原価も、全部足してもローコストだからだ。

 なので、商品自体も、低ランクの場合はそこまで高い設定にはしていない。

 『こんなに安いなんてあり得ない。偽物だな!』と言ってくる客もいたが、セフィアたちがその程度で動じるはずもなく、『では高い商品を買ってください』というだけである。

 そうなると、客は自分の所属している組織を言って脅迫してくるわけだが、通用しない。


 とりあえず全体的な指示として、秀星からは『お客様には誠意を、脅迫には哀れみを、とりあえずこれで運営してくれ。販売店での責任者とかなったことないからよくわからん』と言われているので、お客様にはスマイルでしっかり対応するが、クレーマー、脅迫者、襲撃者に関しては容赦しない。というものだ。

 彼女たちからすれば、あまり下ることのない秀星からの命令。遂行しない理由はない。

 ほとんどのことは最高端末がやるわけで、ぶっちゃけ暇なのだ。


 そして……。


「初日の集計が終了しました」

「おぉ。売上は?」

「言っても意味がないのでスルーします。なお、クレーム対応はおおよそ三十万件。襲撃の退治数は二万件。盗難防止は二十万件。対応できなかった不祥事はないので、損失はゼロです」

「世界の民度が低いのか、セフィアがすごいのか……まあ両方ということにしておくか」


 メイドの数は多いので実質パワープレイである。

 しかも、神器の端末であり、神器同士の相乗効果もあってものすごく強い。

 他の誰にもできないことが、神器ならできる。というのがよくわかる結果である。


「ちなみに完売です」

「あーうん。売上言っても意味がないって言った理由がよーくわかった」


 販売数を決めたのは、最終的には秀星だ。

 その売上の合計金額を求めるなど造作もないことであり、気にしたとしても無意味である。


「ちなみにクレームで一番多かったのは?」

「一人に対する販売制限です」

「だろうな」


 金があってもどうにもならない。

 権力があればどうにかなると今回思っていた連中も、初日がこの結果だ。向こうとしては散々だろう。


「まあ、襲撃が無意味ってわかるまでに時間がかかるだろ」

「私は営業に集中していたのですが、秀星様の方は……」

「たくさんの人が遊びに来たよ。全員ワンパンで沈めてやった」


 父親に似た息子である。


「ていうか今も俺のこと狙ってるよな」

「狙われていますね。スナイパーのようです」

「そういや、スナイパーは今日も結構来てたな。スコープ越しに目線を合わせながら本人に電話かけるの結構楽しいぞ」

「悪趣味ですね」

「ハッハッハ!気づかれるところまではみんな予想するけど、まさか電話をかけてくるとは思わないからな。絶望したような顔をしたあとでスマホを地面に叩きつけるんだ。その後は無線機にも同じことするんだよ。そして無線機もぶっ壊すわけだな。これがもう楽しいのなんのって」


 命を狙われていることは間違いないのだが、そもそもスナイパーライフル程度では、眼球を貫くことすらできない。

 戦いになどならないのだ。

 だから、『遊び』というのである。


「世界有数クラスとか来ないかな。せめてじゃれ合うくらいはしたいよ」

「散々呪いをかけまくった基樹様のほうが強かったですからね」

「だな。明日はどうなるかなぁ……」


 盛大に狙われてみるのも案外楽しいものだ。

 そんな狂気的な発想で明日に思いを馳せる秀星であった。

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