第三百四十四話
なかなか感知能力が高い者はどこにでもいるようで、世界樹にはそれぞれの種族が集まった。
現在集まっているのは四つ。
白 天使族
黒 竜人族
緑 精霊・妖精
赤 不死鳥族
なんともアレな感じなのだが、全員が空を飛べる種族である。
わざわざ人間が運転する飛行機に乗って島まで飛んだエルフたちとは違い、全員が飛んで島まで移動している。
そして全員が飛べるということは、必然的にエルフたちがいる島のことも理解している。
エルフたちの傲慢癖は有名であり、世界樹がそばにいる前提で、彼らの抵抗など無意味にするほどの何かがいた。ということを、全ての種族が理解している。
しかし、竜人族の方を見ると案外普通にやっているので、傲慢でなければほとんど問題ない。と言うことは分かった。
そうなれば大した問題ではない。
第一、エルフのやり方には飽き飽きしているものが多かったのだ。反面教師とはよく言ったものである。
★
「で、俺にその発表会に出てほしいって?」
『そうだ。というより、そうでもしないと止まらないだろ』
「俺にいろいろな視線を全部向けてなんとか自分への被害を抑えておきたい。ということか?」
『そうだね……というより、もういっそのこと、販売まで君が一人でやっても問題ないんじゃないかって思ってるんだけど……』
「出来るよ」
『え?』
「セフィアは一人じゃないからな」
あくまでも端末であるセフィアは何人もいる。
しかも、秀星が持っている『主人印』と『保存箱の最高端末』を連結すれば、様々なことがスムーズに行える。
全ての端末が実質神器なので、普通に人間がやるよりも効率は良いだろう。
『要するに、私は販売におけるルールを決めて、君に言えばいいだけなのか?』
「実質そうだな。だって俺、魔法社会の流通事情のほとんどをあまり知らないし、『常識的な許容範囲内』なんて簡単にぶち抜くからな。最初からそういうことは聞いておいた方がいい」
『……まあ、それもそうか。しかし、何と言うか……反則だね君』
「今更だ。別に発表会だの、そう言った部分はやってもいいぞ」
『ひとまずそれを聞けただけで十分……販売をやらなくていいのはいいね。確実に従業員もどこかから狙われるし、そうなれば一体どんなレベルの魔戦士を選出する必要があるのかさっぱりわからないから』
「最悪の事態を想定して動け、何て言われるけどさ。敵の勢力もわからんのに最悪もクソもないからな。まっ、なんとかなるだろ」
神器十個。しかも真理の理解度が進んでいる秀星は、基本的にパワープレイでも問題はない。
というわけなので、こんなことをやるわけだ。
「ただ……税金とかどうなるんだろうな。土地代なんて一括で買えるし、店舗なんて自分で建てれるし、従業員全部俺のメイドだから人件費要らないし、輸送費ゼロだから、売上が全部利益になってすごいことになるんだけど」
『それは今の私にも決められないね』
自前のものが多い秀星。
それはいいのだが、ほとんどが神器の付属物なので、費用面でかなり削減される。
何かをする場合、確実にコストはかかるはずなのだが、そのコストがほとんど0に近い。
だからアトムは思うのだ。『何だコイツ』と。
『とはいえ、もう始まってしまった話だ。君に面倒な部分を全部押し付けることにしよう』
「ばっちこい。あ、バランス的には問題ないようにしろよ。向こうが武力行使しかできないくらいがちょうどいいからな」
『襲撃してきたら全部返り討ちにできると言っているようなものだが……まあいいか、その方針で行こうか。意外とバトルジャンキーだね君』
「世界中から狙われるということがどういうことなのかちょっと知りたくてね。ま、二割くらい本気で楽しみだよ」
『それを本気とは言わないよ。それじゃあまた』
通話終了。
「さて、頑張ろっか。大体はセフィア達に頑張ってもらうわけだが……まあいいとしますかね」
秀星は久しぶりの黒い笑みを浮かべてそう言った。




